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あらかた重要な話も終わったので、ファラトゥールはアトラス国王への要望書を書く仕事が増えた為、退席する事にした。

もうこれ以上は、お互い顔も合わせたくないだろうからと、ファラトゥールは家令にセレムの滞在中の世話を任せた。


「では、わたくしはこれで失礼させていただきます。久しぶりの帰省です。ごゆっくりお過ごしください」


そう言い残し、ファラトゥールの専属侍女であるライラと共に部屋を出ていった。

彼女が刺していた、簪の涼し気な音を残して。


彼女の後姿を見届けドアが閉まると、セレムは疲れた様に大きな息を吐きソファーに沈んだ。


ファラトゥールとは結婚式のあの初夜以来、一度も会っていない。

正直、容姿は覚えてはいたがあそこまで美しいとは、今日初めて気づいた。

あの時はただ、この結婚について自分の言い分を聞いて納得してもらう事だけを考えていて、余裕がなかったから。


見事にやり返されたがな・・・・


今思い出しても恥ずかしい事をしたと、顔が熱くなる。

あの出来事を挽回するわけでもなく砦に逃げこみ、そして今回の事。

自業自得だとはいえ、益々嫌われたな・・・と、一人落ち込む。

だが、考えてみれば、関わり合いを持たない事は自分が望んだ事であって、余計な出来事は起きてしまったが、落ち込む必要はないのではと思うのだが。


愛人を囲っていると言われ、何故あそこでムキになって、言い返したのか・・・・

誤解され嫌われたままでいいではないか。その方が好都合のはずだ。

そうすれば、俺に関わることは無い。俺の望んだとおりに。なのに・・・・


なのに、石でも飲み込んだかのように胃のあたりが重く感じる。

自分で自分の行動が理解できずに悶々と考え込んでいると、家令のジェイドが声を掛けてきた。

「ご主人様、お部屋に戻って休まれますか?」

「あ・・あぁ、そうだな。・・・・なぁ、ジェイド」

「はい、何でしょう」

「彼女・・・殿下は、今回の事で嫌な思いをしていたんだろうな・・・・」

「えぇ、そうですね。報告書に書いていた通りですが、三番目と四番目のご令嬢にはかなりご立腹でした」


報告書と共に家令からの手紙も入っていたが、今後令嬢達は砦に直接向かわせる旨と、ファラトゥールには未だ王位継承権を持っている事が記されていたのだ。

ファラトゥールは王位継承の件を書けばよかったと後悔していたが、家令がしっかりと記載してくれていた。かなり優秀である。

だからこそセレムは、アトラス国王へと報告に走ったのだ。いずれ離縁予定なのだという事も踏まえて。


「ファラ様は素晴らしくご立派に、ご令嬢達を捌いておりました」

「・・・ファラ様?ジェイドは殿下をそう呼んでいるのか?」

「はい。わたくしだけではありません。この屋敷で働く使用人全員がそう呼んでおります」

元王女とはいえいいのか?と言う疑問が顔に出ていたのか、ジェイドはニッコリ笑う。

「ご主人様が砦に戻られたあの日、使用人を集めファラ様が宣言されたのです」


『私の事は奥様でもなくファラトゥールでもなく、ファラと呼んでください!』


公爵家へと嫁いだとはいえ、王女殿下である。だがその一言で、粗相をしないかと緊張気味だった使用人達はあっけに取られ、そして、一気に肩の力が抜けていった。

だが、王女は王女。きっと今に傲慢になってくるのではと、警戒もしていた事は確かだ。

実際、彼女と接していると、王女だからと使用人達を見下すわけでもなく、いつも労いの言葉をかけてくれて、あっという間に警戒心は解けていく。

そして今現在は、ファラトゥールを構いたくて構いたくて、毎日手を変え品を変えセイリオス国から同行した専属侍女のライラと共に、世話を焼く日々なのだ。


「この度は遺憾な出来事ではありましたが、あまり着飾る事を好まないファラ様を着飾らせることができたと、使用人一同やる気に満ちておりました」

「・・・・随分と皆に慕われているのだな・・・」

「それは勿論。ファラ様のお人柄が素晴らしいからです。貴賤を問わず誰であろうと、皆に優しくお声を掛けてくださるのですから」


ジェイドの言葉にセレムは眉を寄せた。

まるで、何故こんな素晴らしい女性を拒絶するのか・・・と責め立てられているようで。


スーパー家令の名前がやっと出てきました!

ジェイドさん 48歳 ファラトゥールはかなり真剣に引き抜きを考えてます! 

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