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ファラトゥールが公爵家に嫁いで、ひと月近くが経った。


ガルーラ国内の情報収集も怖い位順調で、式神ファイブ(ファラトゥール命名)達がもたらす情報は、すさまじく多くそして有益なものばかりだった。

「たった一日でこれだけ集めて来るなんて・・・・流石は私の分身たち!」

式神を自由に扱えるようになったファラトゥールは、日中も式神ファラトゥールを公爵邸におき、自分は地下工房へと転移してせっせと仕事をこなしていた。

仕事といっても、刻々と送られてくるその情報を、前世の知識を生かし貴族ごとにフォルダを作り整理していく、なんとも地味で面倒なものなのだが。

勿論、公爵邸の式神ファラトゥールとは不測の事態に備え意識を繋げている。


不測の事態とは、―――セレムの女問題である。別に彼がタラシと言うわけではない。

数日前も、セレムのハトコだかという令嬢が乗り込んできた。

ハトコ令嬢は本当に血縁関係ではあるらしいが、セレムとはほぼ接点がない令嬢達が、脳内妄想と叶わぬ想いをここぞとばかりに妻となったファラトゥールにぶつけに来るのだ。

この一月ほどで殴り込みをかけてきた令嬢は、一応片手では足りているが、一月で片手はファラトゥール的には多い気がする。

家令からは、結婚する前にも似たような事があり、怒ったセレムから絶縁状を叩きつけられた家が数件あるのだとか。

過去の話を聞き一人では納まらないだろうと言う家令の助言に従い、また一件ごとに報告するのも面倒で、数件ためてからセレムに報告する事にした。


何だかんだと、自分勝手に好き放題囀っていた令嬢達。

己の立場が如何程のものなのか。公爵家に嫁いできたとはいえ、ファラトゥールはセイリオス国の王女だ。

なのに、何故か見下すような言動や態度。なによりセレムの為とか言いながらも、全ては自分自身の為で自分の事しか考えていなかった。

それらに怒りを通り越し、ほとほと呆れ返ったファラトゥールは、砦にいるセレムに苦情という名の一次報告書を、昨日送ってやったのだ。

余りの態度の悪さに「この国の公爵家の縁者は、王家や公爵夫人よりも偉いんですのね」と言う嫌みと共に。

確かに嫁いだから現王女ではない。だが、自分は公爵夫人である。正妻である。嫡妻である。


こういうのって、冷静に思い返してみた時に怒りが甦ってくるのよね。

兎に角、性格最悪だったり自意識過剰な令嬢達だったり。この家の縁者は皆性格悪いのかしら。当主であるアレも馬鹿だし。

当主夫人ったら、ナンバーツーじゃん。恥ずかしげもなく良く悪口が言えたって思うわ。

私だったら、速攻で家ごと処分かな?公爵夫人とは言え、実はまだ王位継承権は保持してるしね。

つまりは王家に対しての不敬よね。極刑はいき過ぎかもしれないけど、それなりの処罰は要求できるわね。

報告書に「実は私、王位継承権持ってます」って書けばよかった!!


情報を精査しながら一人ぷりぷりしていると、公爵邸の式神ファラトゥールから連絡が入ってきた。

『ファラ様、レインフォード公爵がファラ様に面会を求めているようです』

「面会?なんで?」

『苦情の件での事のようです』

「あぁ。今もあのバカ令嬢達の事思い出して、かなりムカついてたのよね。処分に関してかしら?それとも私に苦情を言いに来たのかしら?」

『家令の話ですと、令嬢達の家に対する処分の件のようです』

「それって私が聞く必要があるのかしら?なんか又、ムカつきそう」

『心中お察ししますが、公爵夫人として売られた喧嘩です。面倒だからと公爵に丸投げしたのですから、一応、報告は聞いた方が宜しいかと』

「本来であれば私が関わる事案じゃないのよね。だって、自分に関わるなって言ってたじゃない?令嬢達の件は、全部アレ(・・)個人の問題じゃん」

『確かにそうですが、明らかにファラ様狙いでしたけど・・・』

「本人に言えないからって私に来てさ。元凶であるアレ(・・)と顔を合わせるのもムカつくけど・・・ここでイライラするよりは、直接ぶつけたほうがいいかも。で、何時来るの?」

『小一時間後に』

「わかった。すぐ戻るから準備をお願い」

『承知しました』


通信が切れ、はぁ・・・と大きな溜息を吐くファラトゥール。

昨日の今日での反応。思ったより早い対応に正直、驚いた。一応、彼女等に対しどのような処罰を課すのか、気になるのも確か。

家令からは恐らく絶縁状を突きつけるのではと言っていたが、セレムに直接言ったわけではなく夫人に対しての嫌がらせだ。

だが、その夫人は王位継承権持ちの元王女。乗り込んできた令嬢達よりも格上だ。絶縁状だけでは足りない。


もしかしたら自分に被害が無いから、処分が甘くなる可能性はあるわね・・・・

そうなったら、文句の一つも言わないと収まらないわ。


沸々と新たに生まれる怒りと共に、公爵邸の自室へと転移したのだった。


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