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アシアスの側で生活するようになり、宮廷医に診てもらうようになると次第に健康になっていったルイナだったが、また徐々に病弱な体に戻っていった。

それと比例してアシアスも体調を崩す事が多くなってきていた。

アシアスは自分に毒が盛られている事がわかり、すぐにルイナの身辺も調査したが何も出てこない。そして毒も検出されなかった。


ルイナは自分の体の事は自分がよくわかっている。毒を盛られている事も。だが犯人は未だわからず、解毒剤もない。

どんどん痩せて顔色も悪くなっていく兄であるアシアス。

自分は元々虚弱体質だったのだから、どうなってもかまわない。だが、王太子である兄は違う。弱っていく兄に、ルイナはいつも心を痛めていた。

だが、そんなルイナの心配もよそに、今目の前に現れたアシアスはどこか違っていた。

確かに変わらず痩せてはいるが、何かが違う。

そう、今までアシアスはいつも疲れたように覇気がなかったのだ。


「ルイナ、彼女は大魔法使いのファーラ様だ。驚いただろ?突然現れて」

と、子供のような無邪気な笑顔を見せ、そして例えるなら生命力に溢れていると言うか、本来あるべき輝きに溢れていた。


あぁ・・・、お兄様はもう、大丈夫なのだ・・・・


漠然とそう思ったルイナは、安堵の所為か涙を流しファーラを見つめた。


「ファーラ様、このような格好で申し訳ありません。わたくし、ガルーラ国第一王女ルイナと申します」

そして、床に入っていながらも出来るだけ深く頭を下げた。

「兄を・・・兄を救っていただき、ありがとうございます」


まだ、何も言っていないのに泣きながらお礼を言うルイナを、不思議そうな顔で見つめるファラトゥール。

この兄妹は一体何なのだろうか・・・と。

無条件で自分を大魔法使いファーラと認め、アシアスを助けたと疑いもしない。


真面目というか、お人よしというか、素直というか・・・・なんだかなぁ・・・・


ファラトゥールは呆れながらも、会って間もない二人をなんだか放っておけなくて、諦めたように笑う。


「私はファーラ。これからよろしくね」


そう言いながら手を伸ばし握手をし、そのまま治癒魔法をかけたのだった。




劇的に体調が回復したルイナは、感動のあまりまたも涙を流していたが、今は落ち着きサンドイッチをおいしそうに頬張っている。

ソファーにはアシアスとルイナが座り、その向かいに一人ファラトゥールが座った。

そしてしきりに「美味しい、美味しい」と言いながら食べるルイナを、まるで母の様な気持ちでお茶を飲みながら眺めていた。


そう言えば私って、前世は結婚して子供どころか孫までいたのよね。どうりでこの二人に母性本能をくすぐられると思ったわ。

所謂、手のかかる子ほど可愛いってやつ?


先程、地下工房でたらふくホットサンドを食べたはずなのにまだ足りなかったのか、ルイナと一緒にサンドイッチを食べるアシアス。

そんな二人を、今度は母親の様な眼差しで見守ってしまうファラトゥール。


なんだか賑やかだった前世と前々世を思い出し、自然と微笑みを浮かべるのだった。



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