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余りに懐かしいそれに目を見開き、いつの間にかそのペンダントはファラトゥールの手の中に納まっていた。

懐かしくも大切なソレを手に、ギリッと歯を鳴らし、まるで視線で人が殺せるのではと言う位の殺気を放った。

「お前は、墓荒らしでもしたのか?」

これは二つ存在し夫婦が亡くなった後、一つはファーラが持ち、一つは墓に掛けていた。それはある意味結界の中に再度結界をかけたような状態。

決して彼等の眠りを誰にも邪魔されない為の。


だがこれが他人の手に渡っているという事は、墓の結界を破ったという事。

ファーラが持つペンダントは、この部屋の引き出しにある事はこの地下に立った際、異変が無いか探索魔法をかけた時に確認している。

だからこそ、侵入者にも気づいたのだ。

だが、彼が身に着けていたペンダントの存在には気づけなかった。それは、持ち主の気になじむように設定しているからで、見直さなくてはな・・・と反省する。


ただならぬファラトゥールの剣幕にアシアスは、慌てて言い訳をした。

「墓荒らしだなんて!そのペンダントは猟で捕まえた獣の腹から出て来たんだ!」

結界は時には自然に生きる獣には効かない時がある。

彼等は人のように悪意を持たないから。常に生きる為に狩をし、なわばりを守る。

空から森を確認した時は、二人の墓には異変は感じられなかった。だが、結界が弱まっているなとは感じていた。

恐らくは墓標に掛けていたペンダントが、獣により奪われた所為だったのかもしれない。


墓自体が荒らされたのでなければいいのよ。でも、結界をものともせず動き回る獣がいるという事は、多少は魔力を持っていたのかもしれない。

彼がこの地下にこれたのもこのペンダントのおかげだったのか・・・

やっぱり五百年経てば、結界にも何らかの不具合が出てしまうのかも。


「で、お前は此処で何をしていた」

結界に関しては後ほど確認するとして、まずは目の前の問題を処理する事にした。

「あの、その問いに答える前にここから出してもらえないだろうか・・・」

立っているだけでいっぱいいっぱいの、結界の狭さ。

だがファラトゥールはそれを無視し、トンと杖で床を叩く。

またも結界が狭まり、アシアスは焦ったように「避難!避難してたんだ!!」と叫んだ。





結界から解放されたアシアスはソファーに座りながら、安堵したように息を吐いた。

そして探る様に目の前の魔法使いを見た。


アシアスはこのガルーラ国の王太子。御年二十三歳である。

アシアスの下には三歳年下の妹がいる。二人とも独身だ。

この国は他国と違い、非常に貧しい。

国内の貴族ですら、平民と大して変わらない生活を送って者も多い。

何より問題なのは、食料。この土地は呪いにでもかけられているのではと思うほど、枯れ果てていた。

アシアスは、長期的に見て土壌改良をした方が将来的に明るいと考え、父である国王に進言し続けていた。

だが強欲で傲慢な国王は、時間をかける必要はないと突っぱね、戦の準備をし始めたのだが、それぞれの国には一本道。撃退されて当然だ。

最近では山脈側から攻めようと計画を立てているようだが、中々先には進まない。

アシアスは、そのような事に人とお金をかけるのであれば、もっと民の為に、未来の民の為に使うべきだとずっと訴えてきたのだ。


父上の機嫌を取る事で、甘い汁を吸い続ける側近達。大して美味くもない甘い汁だが、吸わないよりはいいんだろうな。

現実を何も見ていない国王達。このままでは未来も何もないこの国。

いっそのこと、他国に支配された方が、民は幸せになるのではないだろうか・・・


自分にできる事をやってきたつもりだった。だが、どんなに頑張っても、進言しても、進むどころか後退している気がする。

一体自分は何をしているのか・・・と、何度もくじけそうになる。

それでも、貧しさに苦しむ民の状況に目を背ける事も出来ず、無力感と罪悪感の狭間に精神的に参ってきていた時に、ペンダントを見つけたのだ。



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