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ファラトゥールはフードを目深にかぶり、机の前に立ち杖でトンと床を叩いた。

するとファラトゥールから少し離れたところに金色の魔方陣が浮かび上がった。それと同時に、ソファーで寝ていた男が浮き上がり、スススッと魔法陣の上まで運ばれてくる。

そして一気に、重力に従うよう結構な高さから落とされた。


身体が床にぶつかるドンッという鈍い音と共に、ギャッともグワッとも聞こえる変な悲鳴を上げて男は飛び起きた。

突然の出来事に痛む身体をさすりながら、呆然と周りを確認する。そして目の前に黒のローブを纏い、目深くフードを被った誰かがいる事に気付いた。


「だっ、誰だ!?」


男は顔を顰めながら咄嗟に後退るが、見えない壁に阻まれるようにそこから先には行けない。

そこではじめて男は金色に光る円の中にいる事を把握した。そしてこれが、ただの円ではない事も。


「それは私のセリフだ。お前は誰だ。何故私の工房に入る事ができる」


男は相手が女だという事にも驚いたが、自分が捕らわれている陣にもそれ以上に驚き、身体の痛みなど忘れたかのように床にへばり付き陣の中の紋様に釘付けになる。


「え?これって魔方陣だよね?これ、君が書いたの?君って魔法使い?私の工房って事は、もしかして大魔法使いファーラだったりする?まさかね」


早口でまくし立てる男に、ファラトゥールはドン引きしながらも、嬉々として魔方陣を撫で捲っている男をじっと見つめた。


年はセレムと同じくらいだろうか。紫がかった濃紺の髪に、青みがかったバイオレットダイアモンドの様な、澄んだ瞳をしていた。

容姿もとても整っており、今は子供のようにキラキラと目を見開いているが、平時は凛々しい目元なのだろう事は易く想像できる。

鼻筋もすっとしていて、中々の美形だ。

だが、頬が少し痩けていて服の上からでもわかるくらいは細身。あまり健康的ではなさそうなのが分かる。


慢性の食料不足の所為ね・・・・

それでも着ている物はいいわね・・・高位貴族かしら?


全く話が進まない事にイラついたファラトゥールは、またも杖で床を叩く。

途端に男が捉えられている魔方陣が狭まり、座っている状態では収まらないほどとなり、男は慌てて立ち上がった。


「もう一度聞く。お前は誰だ」


さぁっと音がしそうなほど室内温度が下がり、それ以上に底冷えしそうなほどの冷たい声で問われる。

流石の男も命の危険を感じたのか、姿勢を正し狭い魔方陣の中でも最大限の礼をした。


「大変失礼しました。私はこのガルーラ国王太子アシアス・ガルーラと申します」


王太子?だと?なんでここに入れるわけ?!

「何故ここに居る」

内心、目の前の男が王太子だという事にも動揺を隠せないのに、そんな人が何故ここに入る事が出来ているのかも不思議でならない。

もしかしたら、この場にかけている結界に異常が生じてしまったのか。ただならぬ殺気がファラトゥールから漏れ始めた。


それに焦ったのは王太子のアシアス。慌てて首にかけているペンダントを服の中から出して掲げた。

「これです!偶然見つけたこのペンダントを付けたら、地下に続く扉を見つけたんです!」


彼が見せたそれは、かつて使用人夫婦に渡していた結界を無効にする魔道具だった。


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