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第28話 自己ベストと対決

 佐藤さんから毎日メールが来る。そのメールは俺の様子を確認するものではなく、今日こんなことあったんだよ、という一方的な報告メールだ。

 中学の部活動は大半の3年生は引退したらしいが、佐藤さんの陸上部は秋まで大会があるらしく、夏休みも練習に行っているみたいで、メールには100メートル何秒だったと書かれていることが多い。

 俺は自分が誰とも連絡をしていなかった約1ヶ月間に着たメールは読まずに全部消去した。きっと大半が佐藤さんからで、新井さんからも着ていたのだろうが、その全部がどうしても読めなかった。

 だけど、佐藤さんと田川さんの2人が俺の家に来た時からのメールは全部読んでいる。だが誰にも返信はしていない。いつだったか新井さんから怒りの電話がきた。


「なんで返事よこさないのさ!」


 電話に出るといきなりだった。


「ゴメン…………でも俺ってメール返してたっけ?」

「え…………ああああ、そうかも…………春山からメール着たことなかったわ…………あははははは。でもさ~それもどうかと思うよ。今の中学生で携帯持ってないのって殆どいないでしょ。でもいつからだろう………直接電話かけるんじゃなくてメールのやり取りに変わったのって。あんたぐらいだよ、メール送ったって知らんぷりすんの。それやったらハブられるから、みんな速攻で返信してるって。まぁ春山らしいけど……」


 そうなんだ、知らなかった。でもいいや、メールって打つのが面倒だし、用があったら喋ればいい。

 だが返信をしない俺に佐藤さんから毎日メールが来る。そしていつのまにか佐藤さんからのメールを待っている俺がいた。そして気になった。100メートルの記録が前より悪いのが。いつだったか忘れたけど13秒切ったって言っていたはずなのに、一度も切れていない。どうしちゃったんだろう?


 電話で新井さんと喋った日に、その新井さんが家に来た。色々と持って。


「ほらこれ、あんたが学校に置きっぱにしてた木刀と教科書。しっかしさ~あの日の教科書が置いてあるのは分かるけど、机の中に全部の教科書あるってどういうこと? あんたって家で勉強しないの?」

「テスト前はするって」

「え…………普段は?」

「やったことない」

「えええええええ………それであの点数取ってたの? ………ムカつく。 ほら、これ! あんたがいない間のノート! ………必要なかった?」

「いや、サンキュー! マジ困ってたんだよな」

「そっか、よかった~~。感謝しなさいよ、私に!」

「感謝のチューでもするか」

「………あんたさ~………それって私に心配かけさせまいとしてんの? やめなよ」

「そっか………そうだな…………」

「…………お線香あげさせて」


 玄関から直接和室に案内すると、新井さんは骨壺の前に座り、蝋燭に火をつけながらーー俺に背を向けたまま、


「聞かせてくれないかな………お母さん亡くなったのは分かるんだけど、何があんたをそこまで追い詰めたの? 1ヶ月以上も」


 母さんが死んだのは分かってる。みんなお悔やみ言う、それに葬式だって……でも何て言って良いのか分からないけど、とにかく現実味がないっていうのか………母さんの死顔見たんだけど、それって全然母さんじゃなくって、ずっと見ていたんだけどやっぱり分からなくて。顔ぐちゃぐちゃで誰だか全然分からなかった。姉ちゃんそれ見て倒れたらしくて俺が病院着いた時イスで横になってた。そんなんだったから姉ちゃんには聞けてないんだけど、あれが母さんだって思ったのかな? 通夜の前に焼いて皆んなで骨拾った。けど俺、自分が何やってるのか分かんないまま拾ってて、あれが母さんだったのかな? 親戚の叔父さんや叔母さん、皆んな泣いてて、俺にいろんなこと言ってるんだけど、聞こえるのに何言ってんだか全然分からなくて。今日俺が学校行く時に母さんがなんて言ってたのかってずっと考えてて、どうしても思い出せなくて。死ぬってどういうことなんだろう? 死んだら言った言葉もどっか行っちゃうのかな? 俺も死んだりするのか? でもあれって母さんだったのか? 母さん死んだんなら死体ってどこにあるのよ? 死ぬって急に居なくなるってことなのか? そんなのが俺の中でずっと渦巻いてて、今もあるんだけど、前よりはそれに意識持ってかれないようになった。俺壊れたのかな?


「それ………誰かに言った?」

「どうだったろう………誰かに言ったのかな? 姉ちゃんには言ってないような気がする」

「春山………あんた泣いた?」

「色んな人にそれ聞かれたけど覚えてないんだよな。アヤの婆ちゃに視てもらった時、忘れてた色んなものが見えてきて、俺、自分が叫んだのは覚えてる。あの時泣いたのかな? でもテレビの砂嵐みたいなのは消えた」

「そっか……………ねぇ、ちょっと時間ある。せっかく来たのに湿っぽい話ばっかじゃ余計気ぃ滅入るから、なんか喋ろうよ」


 居間に案内すると、掃除機が出しっぱなしだった。


「………春山が掃除機かけてんの?」


 俺と父さんと姉ちゃんの3人の中で今一番暇なのは俺だ。だから掃除と洗濯、茶碗洗い、ご飯の用意は俺がやってる。実際にやってみると大して苦じゃなかった。掃除を除いては。掃除は嫌いではないけど、どれだけ掃除機掛けても床が劇的に変わる訳じゃないから、掃除をした! って達成感がなくて、好きになれない。


「なにそれ? ちょっとウケるかも…………でもご飯の用意ってできるの?」

「ああ、パソコン買った。インターネットに繋いだからメッチャ便利。どんな料理だってレシピあるからその通りにやればいいだけじゃん。俺にステーキ焼かせたらスゲーぞ。レストラン真っ青。今度食わせてやる」

「へ~~そうなんだ、うん、楽しみにしてる」

「でもよ~なんだか飯が不味いんだよな。あ~米な。これって今に始まった訳じゃなくって、母さんが炊いた米もあんまり美味くなくって、武者小路の婆ちゃんとこで食った米は美味いのになんでなんだ?」

「あ~~それって土鍋じゃない? っでガスか薪使ってると思うな。炊飯器って電気だから不味いって言う人いるけど、私はあんまり気にしたことないな」


 ドナベって何よ? そこから分からん。さっそくネットで検索すると出てきた。これ欲しい。でもどこに売ってんだ?


「この街じゃ売ってないんじゃない? だって土鍋なんて買う人いないと思うし……デパートとならあるかも。でもさ~~ずっと春山がやるの? お姉さんだって今はいるけど帰っちゃうんでしょう。そしたらおじさんと2人になるけど、おじさんって朝早くて夜帰って来るの遅いって前に言ってたよね。朱海のところに下宿させてもらえば?」


 それはちょっと、と言い掛けてしまった。


「春山さ~~朱海となんかあったんでしょ? 私、朱海と従姉妹だよ。ちょっと前に会ったんだけど、アレ? って思ったんだよね。なんか変わった。まぁいいけど………でも朱海のとこなら下宿させてくれると思うから考えとけば?」




「明後日、四十九日だからね。それ終わったら私帰るから」


 仕事を終えて帰って来た姉ちゃんが俺が作った夕飯を食いながらそう言った。


「あんたどうする? 転校して私と暮らす? それともこの家に残って父さんと暮らす? 料理上手くなってビックリだけど………高校どこ行くか考えたの? この街の高校行くのは私は反対だからね。 ……………え? そっか~~今の中学校は変えたくないんだ。なら下宿しちゃえば? なんだかさ~~弟が父さんのために毎日毎日炊事洗濯やってんのって嫌なんだよね。妙に世帯くさいって言うか。お通夜やった篠原さんのとこならあんた一人くらい受け入れてくれないかな。長男坊って確か本州の大学行ったはずだし…‥聞いてみようか? ………………え? いいって? ふ~~ん………転校はどうしても嫌なの? そっか………そうかもね、友達もいるだろうし、先生もいい先生みたいだし、ああ、あんたの先生……近藤先生だっけ? 来たよ、ウチに。 あんた二階でズーーーっと天井睨んでる時期で面倒だからあんた呼ばなかった。私言ったんだよね、あんたを転校させて私と一緒に暮らすかもしれませんって。そう言ったら先生凄く驚いたみたいで、それってもう決まったことですか? 春山君もそれを希望してるんですか? って言うから、ずっと天井睨んでてまともに話できてないけど、姉の私はそう考えてるって言ったの。そしたら先生………私の前に手ぇついて、頭床に擦り付けるくらい下げるからビックリしちゃった。春山君は私がどうしても送り出したい、中学校生活を最後まで私に見届けさせて下さい、って年下の私に…………あんたあの先生となんかあった? ……………あははははは……冗談だって。でも美人じゃん。独身なんでしょ? 彼氏いるのかな? あははは……私はあの先生好きだな。女の先生が中3受け持ったら大変なはずだよ。親達が文句言ってきて。でもなんて言うのかな~~………戦ってるね、あの先生。うん、私も応援したくなったもん」


 先生が俺を………どうして先生がそんな事を言ったのか分からないが、温かい何かが俺の中に広がった。


 次の日、姉ちゃんを送り出して掃除を終えた俺は土鍋を買いに出た。あの街にあるデパートに。

 駅に行く途中、向こうにカラオケ屋が見えた。そっか、ここにあったのか。大して興味が無かったから目に入っていなかったらしい。そのカラオケ屋の前を通ると、隣の建物との細い路地から声が聞こえた。見ると結構な人数の男女がなにやら揉めているようだ。何やってんだ? 高校生?


「中坊の分際で調子乗り過ぎなんだよ! 舐めてんじゃねぇぞボケ!」


 中坊? ってことはウチの生徒か?

 壁にくっついて立っている5~6人が恐らく中学生だ。女の子も2人いた。そいつらの前を肩を怒らせうろついてるのが3人。高校生か?


「お前ら何年よ?…………ぁぁあああ! 聞こえねえ! ………3年? なら来年ウチの高校来る奴いるよな。俺ら2年だから来年もいるんだわ。お前ら無事に高校生活送れると思うなよ。ほら、名前言えや、名前。そこの女! とぼけてんじゃねぇぞ! おめえらもだ! こら、逃げんじゃねえ! ボケ!」


 逃げようとした女の子が服を掴まれ、そして頭を引っ叩かれた。その子は怯えてしゃがみ込んでしまった。泣き顔が見えた。ダメだ、いきなり腹立った。


「テメーなに見てんだ! ぁぁああああ!」


 俺に言ってるらしいがどうでもいい。その向こう奴だ、女叩きやがったの。


「なんなんだテメーわよーー! 引っ込んで………」


 まだぐちゃぐちゃ言ってるから蹴り飛ばしてやった。


「なっ………」

「お前、今女叩いたろ。なんで叩くのよ? 女叩いて面白いのか? なぁ、教えてくれよ。叩く理由を教えてくれって」


 そう言いながら脇腹に回し蹴りをぶち込み、下がった頭に拳を上から叩き込んだ。そして倒れたそいつの髪の毛を掴んで地面に何度も何度も顔を打ちつけながら俺はまだ言っていた。叩いた理由を教えろ、と。


「春山君もうやめて………死んじゃうよ」


 なんだろう、凄くイラついて我を忘れてしまいそうだった。女の子が叩かれたのを見たからなのか? いや、それだけじゃないのを俺は分かっていた。叩かれた女の子の泣き顔。それは怯えた子供のようだった。その顔が、あの日うちに来て泣いた佐藤さんの顔とダブった。


 倒れている2人の周りに、そこにいた全員が立ち尽くしていた。俺はなにやってんだ。関係ないことに首突っ込んで。まるでバカだ。見ると知った顔があった。さっき俺を止めた女子と男子の2人は知っていた。きっと同級生だ。だけどその同級生達は俺から目を逸らしていた。俺は嫌われてるらしい。


「あの噂って………マジだったのか……」


 もう一人の高校生が逃げ腰でそう呟いている。


「噂って何よ?」


 こんな奴の独り言なんて放っておけばいいのに、俺は突っかかっていた。イラついてる自分をどうする事も出来ない。さっきまでは普通だったのに。


「いや………俺は………その………3年の神取さん達………隠してるけど……春山って中3にやられたって噂………」

「そんなもん本人に聞けばいいだろう。それとも俺が直接聞いてやろうか? お前、俺にやられたのかって。呼べよ、ここに、その神取ってヤツ」

「いや…………いいです」

「遠慮するな。いいから呼べ! そいつに聞きたいことあるし……女叩く理由」

「え………」


 ここにいる同級生の中にもしかしたら佐藤拓磨もいるのかもしれない。

 どうした訳か急にそう思った。そして俺は直ぐにその場を離れてしまった。まるで逃げ出すように。


 汽車に乗ってからも俺はどうしようもない気持ちで、気が付くと拳を固く握りしめていた。この気持ちどうしたらいいんだ? 自分でも理由が分からない怒りが俺を占めている。腹が立つ、なんでこんなに腹が立つんだ。誰に? 誰に俺は怒りを覚えてるんだ? 俺か? 俺は自分に対して腹を立ててるのか?


 デパートに着くとようやっと気分が変わり、幼かった頃のことが思い出された。お盆とクリスマスにはこのデパートに連れて来てもらって、俺はずっとオモチャ売り場に張り付いていた。プラレールが好きで、買ってもらった時など嬉しくて1日中走らせていた。


 オモチャ売り場に立体的に組まれたプラレール。そこを連結された列車が走っていた。俺は5~6人の子供に混じってずっと見てた。




 あれ、俺泣いてるの?




 頬に涙が伝っているのに気づき、手で慌てて拭った。俺ってどうしちゃったんだ? なんで意味もなく涙が溢れてくる? 変になった? デパートの人に土鍋の売り場を尋ね、買うと直ぐにデパートを出た。その間も気が気でなかった。しょっちゅう自分の頬を触り、濡れていないことを確認していた。


 駅の待合室でボーーっとしていると貼られているポスターに目が止まった。中学陸上競技大会のポスター。そういえば佐藤さんのメールにも大会が近いって書いてあったが、月日や場所は書かれてはいなかった。ポスターを見ると、この街の陸上競技場で実施日は明後日だ。そうか四十九日の次の日か。



 四十九日。坊さんが家に来てお経をあげた。そして骨が墓に入れられ、そこでもお経をあげ、家に仏壇が届けられて魂入れというのを坊さんにやってもらった。死んだ母さんはどうなっちゃったんだろう? 俺はなんとなくだけど、四十九日というのをやれば、俺の意識も少しは変わるのかと思っていたが、これで終わりなの? といった空しさみたいなものだけが残った。


「この仏壇、コンパクトで可愛いね」


 姉ちゃんが俺にそう言った。仏壇が可愛いって全然分かんなくて俺はその仏壇を黙って見ていた。



 四十九日の次の日、俺は陸上競技場にいた。

 佐藤さんからのメールには大会にエントリーしたと書いてあったが、どの大会なのかは書かれていなかった。陸上は大会が何度も行われ、北海道大会に繋がるものもあれば、そうではないものもあると、前に佐藤さんが言っていた。でも彼女のメールからは自分の記録を随分と気にしているのが窺えたから、それほど先の大会ではないのだろう。

 だが、どうして俺は佐藤さんが出る陸上を見に来たのか自分でもよく解らなかった。でも気になったのは確かだ。俺はそういうところがある。気になったのなら行った方がいい。気になるのに行かなかったらけっこう引きずってしまうのだ。どうして俺は行かなかったのだろうって。だから来た。佐藤さんがこの大会に出ていると決まっている訳でもないのに。


 競技場の周りには中学校毎のテントが張られていた。それを目にした俺はそこを避けた。知り合いに見られたくない。

 100メートルは直線でコーナーの無いレース。だから大会本部の目の前を走るのだろう。俺は大会本部から離れ、誰もいない場所に来た。

 大会本部前の直線コースではハードル競技が行われているのが見えた。そう言えば、女子の100メートルが何時ごろから始まるのか、俺はそれも知らないのに気づいた。もしかするともう終わった?

 競技についてのアナウンスが聞こえ、女子100メートルは次らしい。そして予選は8組で、各組上位2名ずつが決勝に進むという説明がなされた。佐藤さんは何組なんだろう? そして何レーンを走るんだろう? 前に彼女は外側のレーンの方が好きだと言っていた。スタートで両側に人がいるとどうしても意識を集中することができないからだと。佐藤さんらしい。

 なにげなくハードルを見ていると、レースが始まる前にスタート地点で出場者がアナウンスされていた。出身中学校名と名前を。呼ばれた選手は一歩前に出て片手を挙げ、深く頭を下げている。こういうセレモニーがあるんだ。でも気の小さい奴ならこのセレモニーで舞い上がってしまうような気がした。


 女子100メートルの1組目がスタート地点に並んだ。佐藤さんの名前は呼ばれなかった。

 レースはあっと言う間に終わった。それは想像以上だった。これはキツイ。スタートダッシュ、頭を下げたまま地面を蹴り続け、そして最高速度までもっていって、最後にもうひと伸び。それら全部が僅か10数秒で終わる。当たり前だと言えば当たり前なのだが、直に見ると衝撃を覚えた。この10数秒に全力を出し切れるよう毎日毎日練習するのか?! スタートダッシュで失敗したらもう取り返せない。残酷な競技のように思えた。これに出るのか? あの臆病な佐藤さんが。


 2組目でも佐藤さんは呼ばれなかった。

 そのレースを見てると凄いスタートを切った女子がいた。あいつスゲーな。グングン加速して行って、ぶっちぎりでゴールした。12秒65。ゴール地点に設置されている大型のデジタル時計がその数字を示していた。2位のタイムは示されていないから分からないが、きっと13秒の中あたりだろう。


 3組目の3レーンで佐藤静香がアナウンスされた。ドキっとした。やっぱり出るんだ。

 佐藤さんは前に一歩進み出て、そして手を上げた。だが上げた腕が縮こまっているように見えた。落ち着け佐藤静香! 余計なことを考えるな!


 スタートはいいぞ、出遅れてない。よし行け、蹴れ、もっと蹴れ! あ…頭を上げるのが早い。脚に力入ってんのか? スピードに乗り切れてない。

 トップの奴から1秒は離されたがギリギリ2位でゴールした。明らかにその組の出場者に恵まれた結果だ。おそらくは13秒の後半だろう。前に13秒を切ったと言っていたはずなのに、なにやってんだ、あのバカ!

 俺は走り出していた。そして大会本部のそばまで行くと、下を向いて歩いている後ろ姿の女子に目が止まった。あれだ、あれは佐藤静香だ。




「さとうしずかああああああああああああああああああ!!」




 競技場にはアナウンスが流れていたし、俺から佐藤さんまではけっこう距離があった。それでも誰かに呼ばれたと気づいたのか、キョロキョロしている。




「さとうしずかああああああああああああああああああ!!」




 もう一度叫ぶと、こっちを向いた。




「こっちに来い!!」




 佐藤さんは直ぐに走り出した。俺に向かって。だが走り方がおかしい。


 なんだその走りわ? お嬢さん走りになってる。あ……けつまずきやがった。


 なんとか転ばずには済んだが、近づいて来る佐藤さんはビービー泣いていた。こいつこれで決勝なんか走れるのか?

 俺のそばに寄ってきて見せたその顔は、涙でグチャグチャで鼻水まで出てる。まるで子供だ。


「もう泣くな……まだ終わってないんだから」


 俺は持っていたハンカチで涙を拭い、そして鼻水も拭ってあげたが、その間もずっとしゃくりあげていた。


「どうすればいい! 俺になにをして欲しい! 全部やってやる! だから言え!」


「………ぎゅっ……ぎゅ……ぎゅっと……して……」


 抱きしめてくれと言っているのか? それを言うとコクンと頷いた。


「わかった。……でもここじゃマズイから向こうに……」


 佐藤さんの手を掴んで向こうの物陰に連れて行こうとするが、どうした訳か動かない。


「………ここで……ぎゅーーって……」


 大勢の選手や関係者が行き交う中、俺は佐藤静香を抱きしめた。


「お前は速い。あの時のことを思い出せ。映画を観に行った帰りの公園での出来事だ。チンピラ3人をキリキリ舞させたろ。誰もお前に追いつけなかった。あの時に比べらこんな大会へっちゃらだ。誰もお前を取って食ったりはしない。怖がるな、俺がついてる」


 耳元でそう囁きながら抱きしめた。


「どう?……少しは落ち着いた?」

「うん、思い出した、公園のこと。あの時と同じにして」

「………同じって……なにを?」

「走る前にキスしてくれた」

「はい?」

「いいから、して!」


 なんだそれ? あの時だって佐藤さんの身体グニャグニャになって走れそうになかったんだぞ。……でも、さっきのレースを忘れさせるにはいいかも。ええええ? そうかな? そんなことやって走れるか? おかしなことにならんか? ……もうなんだっていい。やってやる。キスでもなんでもしてやる。佐藤さんがそれで走れるっていうならやってやる。

 俺は佐藤さんの手を引いて物陰に連れて行くと、今度は素直について来た。

 ここなら誰にも見られない…はず。俺が辺りを窺い、そして佐藤さんを見ると、赤い顔して俺を見上げていた。キスでシャンとなるのか? 本当に?


 俺は佐藤さんを再び抱きしめ、そしてキスをした。

 佐藤さんの身体から力が抜けたのが解った。口で息をしている、キスをしながら。

 離れて佐藤さんの顔を見た。ダメだろ、これは。目がトロンとしちゃってる。


「決勝って何時から?」

「……? ………なに?」

「決勝だって、決勝。出るんだろ、決勝」

「え~っと…………男子の予選………終わったら……」


 まじかよ。時間ないじゃん。こうなったら大国照子方式だ。どうなったって知らないぞ。

 俺はボーーっと突っ立てる佐藤静香の股間をガッチリと掴んだ。


「ひっ……」


 腰を引いて口を開き、目を見開いた。


「……つっ………つかんだ……」

「目ぇ覚めたか?」

「……春山君に……つかまれた……私の……」


 真っ赤な顔の割には怒ってはいない。


「目ぇ覚めたのかって聞いてんだって。覚めてないなら今度はパンツ脱がすぞ」

「いいよ脱がしても。やっちゃっていいよ。どーーせ春山君になんて出来っこないんだから……ふふふ……うん、目ぇ覚めた」


 大国照子方式は成功だったらしい。でもなんだか憎たらしい。クソ~~


「いいか、よーーーく思い出せ。スタートの時っていつもナニ考えて、どこ見てた?」

「え……どうだったろう……私……ゴールは見ないの。……そうだ、最初の一歩目をあそこについてって考えてスタートして、そして二歩目、三歩目って、5歩ぐらいまで地面見ながら歩数数えてた」

「今日は?」

「……覚えてない」

「それとスタート地点に手を付く前、足を少し開いて2~3回ジャンプするのって佐藤さんのルーチンじゃないのか? 今日それやったか?」

「そう! それって私のルーチン。絶対にいっつもやるんだけど……今日はどうだったろう? ……それも覚えてない」

「舞い上がり過ぎた」

「………うん」

「いいか、特別なことをやろうとするな。そんなの出来るはずないんだから。いつもの事を、いつもの通りにやれ。それと……」

「それとなに?」

「……うん……足音を聞け。お前の後ろには絶対に俺がいる。聞こえるのはお前の後ろを走る俺の足音だ。だからそれを聞け。そしてぶっちぎれ、その足音を。最後にゴールで振り返れ。もたもた走ってくる俺を」

「……いてくれるの? 一緒にいてくれるの? ………わかった。うん、わかった!」



 女子100メートルの決勝が始まった。もう誰に見られたっていい。俺はゴール地点に近いギャラリー席から見ることにした。

 佐藤静香の名前がアナウンスされた。1レーンだ。アイツの好きなレーンだ。いいぞ、ついてる。佐藤さんが一歩前に出て手を上げ、そして深々と頭を下げた。うん、今度は縮こまってはいない。ん? なにやってんだ? ギャラリーの方を向いてキョロキョロしてる。俺を探してるのか? バカが……レースに集中しろ! だめだ、他の選手が紹介されてるのにキョロキョロを止めようとしない。俺は恥ずかしかったが手を振った。見えるか? ここにいるぞ、お前を見てるの分るか? すると大きく何度もジャンプを始めた。どうやら、見えたよ、という合図のようだが、もう止めれ。お前だけがちょっとヘンだ。




 よし手をついた。ケツが上がった。うん、いいぞ、高く上がってる。長い…スタートまでのこの間が長い。よし行った! いい反応だ。右手も大きく前に出てた。いけ! いけ! 足の裏で地面をしっかり掴め! うん、いいぞ。まだ頭を上げるなよ~我慢しろ、我慢だ我慢。蹴れ! もっと蹴って太もも上げろ! いいぞ~~スピードに乗って来た。


「しずかあああああああああああああああ! 腕を振れえええええええええええええ! もっとだ! もっと腕をふれえええええええええええええええええええええ! 来い! 来い! しずかあああああああああああああ! こーーーーーーーーい!」


 俺は立ち上がって大声をあげていた。


「どっちだ? どっちが勝った? 静香か? 4レーンの奴か?」 


 1レーンの静香と4レーンの奴がほぼ同時にゴールした。タイムは12秒32。

 アナウンスが流れた。優勝は4レーンの近藤という名前がコールされた。そっか佐藤さんは2位か。それでもいい。凄いタイムだ。きっと自己ベストだ。


 疲れた。自分が走るより力が入り、疲れた。なに? 佐藤さんがこっちに走って来た。おい、監督や他のチームメイトはいいのか?


「義仁! 見た? 見たよね! 2位だったけど今までで最高に走れた。まだ正確なタイムわかんないけど絶対に自己意ベストだと思う。それに声聞えてた。義仁の声、走ってる時聞こえた。いっぱいの声の中で義仁の声が聞こえたの……え? ……泣いてるの?」

「ぇ……」


 自分の頬に触れると濡れていた。まただ、また勝手に涙が出ていた。


「私、みんなとバスだし、他の人の競技終わってないから……でも行く、今日、義仁の家に行くから、いい?」





「お線香あげさせて……あ……仏壇……かわいい」


 佐藤さんが俺の家に来たのは夜の6時を過ぎていた。和室に案内するなり仏壇がかわいいと言う。仏壇がどうして可愛いのかサッパリだったが、昨日姉ちゃんも同じことを言っていて、何も感じない俺がおかしいのか?


「義仁の部屋見せて欲しい。いいでしょ? 私まだ一度も見せてもらったことないんだよ」


 部屋に案内しながら俺は考えていた。今、俺は佐藤静香と付き合っているんだろうか? なんだかよく解らなくなった。今日キスしちゃって、へんなとこガッチリ掴んじゃったし。でもやっぱり言わない訳にはいかない。


「へ~~本いっぱいあるんだね。あ……ギター。弾けるの?」


 俺は中1の頃からギターを始めていた。バスケに夢中でギターは大して上手くなってないから、中学になってからも家に遊びに来たことのある高橋君以外は知らないと思う。


「ベットに座っていい?」

「俺……佐藤さんに言わなきゃならないこと……ある。聞いて欲しい」


 なにから話したらいいのか考えたけど、夢の話から始めた。大人の佐藤さんが出てきた夢の他に大人の河西さんとの夢。次に幼馴染のノブエちゃんとお医者さんごっこをやっていたこと。河西さんはそれは自分だと言い張っていたこと。屋上から落ちて死んだのは宮古愛なのだが、夢などに現れる落ちた女は神取美香らしいということ。そんな俺を心配した篠原朱美が俺を先代爺ちゃんに会わせたこと。そして金山要という数学オタクを篠原さんの家に呼び、俺と篠原さん、権藤彩音、大国照子にパラレルワールドの講義をしてもらい、そして時間が遅くなってしまい全員で泊まり、風呂に入った俺を3人娘が覗きにきたこと。権藤彩音の家にも泊まり、気がつくと裸の権藤さんと寝ていて俺も裸だったこと。

 俺は喋っている内に、どうしてこんなに沢山の出来事があったのだろと驚き、そして隠すつもりじゃなかったのだが佐藤静香には何も言わなかった自分を改めて知った。俺は不誠実だ。そして最後に俺は言った。篠原朱海とセックスをしたと。



「うん、知ってた。神取さんの話は今初めて聞いたけど、他は全部ウミちゃんに聞いて知ってた。私ね………ウミちゃんと対決しちゃった……………あの日……真奈美と二人でここに来た後。そんなつもりで行ったんじゃなかったんだけど………ウミちゃんの家に行ったの。私、ウミちゃん見て直ぐに分かった。春山君としたって」



 佐藤さんは篠原朱海に言われたことを何度も何度も思い返していて、暗記するくらいに覚えているという。




『ウミちゃん…………雰囲気変わった…………それ…………春山君とだ』


 会っていきなりだったそうで、篠原さんはさすがに驚き、そして動揺したらしく、自分の部屋に案内する間、一言も喋らなかったという。


『ビックリした………すごいね、私そんなに変わったかな。………うん、いいわ。近いうちにあなた呼び出すつもりだったから。そうよ、私、春山君とセックスをした。あなたには彼に抱かれたって言うつもりだったけど…………私が彼を抱いたの。理由は2つあるわ。一つは自分に正直になるって決めたってことね。ずっと彼が好きだった。でもその気持ちから目を背けてた。もうそういうのやめることにしたの。だがら彼をあなたから奪うことにした。それともう一つの理由も説明した方がいいわね。彼は凄く強い人。だけどデリケートで繊細。アンバランスなの。それはあなただって分かってるはずよね。前に彼の意識が戻らなかった時のこと、あなたも覚えてるわよね。あの時の彼、意識に膜が掛かってしまってなかなか目覚めなかった。でも今度は目覚めたままで意識に膜が掛かっているみたいで前よりもずっと深刻。だから彼と一つになって彼の内側を覗くことにしたの。そのやり方知ってるのは照子だけじゃないのよ、私も知ってた。だけどやったことはなかった。バージンだったんだから。でもやってみて分かったの。彼の心と頭が一致していないってことが。お母さんの死を受け入れきれてないのが一番の原因なんだけど、そこにお父さんやお祖父さんへのどうしようもない嫌悪が自分をも恥じることに繋がっていて、そういったものが複雑に絡み合っているのが見えた。掛かっていた膜から彼の意識を強引に引っ張り出そうかとも考えたんだけど………できなかった。彼が壊れてしまうんじゃないかって怖くてできなかった。でも彼は自力で出て来た。アヤちゃんが殺される夢を見て。でもアヤちゃんのお婆さんの見立てでは、まだ彼の頭と心は一致していないみたい。だから複雑に絡み合ったものは絡み合ったまんまで彼は今も目覚めてるの。彼の心に蔓延っていた霧みたいなものはアヤちゃんのお婆さんが取り除いてくれたらしいけど、絡み合ったモノは一つ一つ丁寧にほぐす必要があるらしいから、あの時強引に引っ張り出さなくて正解だったみたい。ここまで詳しくあなたに説明したのはね、照子があなたのことを今でも大切に思っているから、その照子に免じて説明しているの。ところで覚えてる? あなたが2年生の神取君に付き纏われてた時のこと。私のところに相談に来たわよね。でもね、私は春山君が好きだったのよ。だけど分かっていた、彼があなたのことを好きで、そしてあなたを助けるってことを。そう、相手が神取一族であっても彼は臆さずあなたを助ける。あなたも彼が好きだった。だから私は引いたの。そして春山君に助けを求めなさいってあなたに言った。なのにあなたは動かなかった。勇気を出して一歩踏み出すことをしなかった。そして今回もそう。あなたはお父さんに言われて出掛けたのよね。でもそうしたのは誰でもないのよ、あなたなの。デユエットもあなたが積極的に歌ったのではなく、誘われ、そして断れなかったのよね。でも歌ったのはあなた。確かにあなたの従兄弟って卑劣な男。それを考えると気の毒ね。でもね、異性の従兄弟がいる人なんて大勢いるわ。だけど身体を触ってくる従兄弟って普通なの? それが腕を組んだだけだとしても。みんなの前でこれ見よがしにやったんだから、コイツは自分の女なんだって言いたかったのでしょ。でもね、それをされても逃げなかったのはあなたなの。あなた、いったいいつまで自分の意思を相手に伝える事も出来ない意気地なしなの? 私は神取君の時はあなたに譲った。だけどもう譲ったりはしない。春山君は私が貰う。だからセックスをした。…………でもあなたのこと………ちょっと見直した。今私が喋っている間、必死に涙堪えて、そして私から目を逸らさなかった。もし泣いたり、一度でも目を逸らしたら言うつもりなかったけど教えてあげる。私、ひとつだけ春山君にウソついた。私が春山君を抱いて、そしてその後は彼の方から何度も私を求めてきたって匂わせたけど、それはウソ。セックスは私が彼を抱いた一度だけ。でもね、彼が私の中に放ったのは事実よ。あ~大丈夫だから、妊娠なんかしないわ。私初めてだったけど、それくらいのことは出来るから。あっ、そうだ、ついでにもう一つだけ言っておくね。アヤちゃん、あなたに泣いて食って掛かったみたいね。アヤちゃんも全部分かっているのよ。あなたが従兄弟と喜んでくっついて歌ってた訳じゃないってことくらい。アヤちゃんも私とおんなじ。あなたの勇気の無さに怒ったの。そんな調子なら身体弄られても断れないんじゃないかって怒ったの。アヤちゃんだって春山君のことが好きなのは知ってるよね? でもアヤちゃん優しいから私みたいな事はしない』





「それからウミちゃんがお茶を点ててくれたの。二人でお茶を飲みながら、夢の話とか全部教えてくれた、そして言ったの」





『あなた………私の話し聞いてどう思った? 知らなかったことが殆どだったでしょ。もしかしたら彼が隠してたって思ったんじゃない? くっついてデユエット歌った自分の方が全然マシじゃないのって思ったんじゃない? もしそうなら…………私はあなたのこと絶対に許さない! 今直ぐ帰りなさい! そして二度と私の前に現れないで!』


『バカにしないで! 私………春山義仁の彼女は私なの! 今は………ちょっとギクシャクしてるけど……ウミちゃんに言われなくたって分かってる! あの人は……誰のせいにもしないの。全部自分で背負いこんじゃって愚痴も言わないし、人の噂話しだって絶対にしない。さっき聞いた金山君が言ってた未来からの干渉なのかもしれないけど………私全部分かるの……彼のこと。彼があなた達3人と泊まったことだって、アヤちゃんと裸で寝てたことだって、私みたいに臆病だからそうなったんじゃないし、それを誰かに自分から喋ったりはしない人なの! 私が春山義仁の彼女なの! まるで古女房みたいに全部わかっちゃう彼女なの! 彼は……彼は……私と付き合ってる間に……自分から進んで誰かと寝るなんて絶対出来ない人だってことが分かるの!』


『………そうだね……彼は人を裏切る事が出来ない。そういう人間だね。うん………ごめんね失礼なこと言っちゃって。…………アヤちゃんのお婆ちゃんも驚いてた。なんでも飲み込んでしまってるって。見えたらしいの、彼が幼稚園に初めて行った日の様子が。ずっとお母さんと一緒にいたから生れて初めてお母さんと離れることになって、怖くて、寂しかったのに、泣くの我慢してたみたい。言ってしまえば少しは楽になるのにね………そうだ、おいしい羊羹あるの。食べていくでしょ?』





「二人でお茶飲みながら羊羹食べて、帰ってきちゃった。へへへ……。でもね……もし義仁がまた膜に覆われたらね、私……それで助けられるんなら義仁が誰かとしてもいい。かまわない。あっ……でもウミちゃんはダメかな。宣戦布告されちゃったし。アヤちゃんも義仁のこと好きだからNGね。そうだ! テルちゃん。テルちゃんとして助けられればいいんだ!」


「……ええええ?」


「でもほんとに分かるんだよ、義仁のこと。不思議なんだけど。別の世界からの干渉ってあるのかな? 前に見た夢…あの世界の私の記憶なの? でもね、私、思っちゃったんだ。ここにいる私だって別の世界の私に干渉できるんだよね? だったら全部干渉しようって決めたの。別の世界が何百、何千あっても、今ここにいる私が……義仁と一緒にいる私がぜーーーーーんぶの世界に干渉して、どの世界の私も義仁とくっついてる世界にするの。わかった? なら脱いで!」


「………え?」


「脱いで裸になるの。見られちゃったんでしょ、アヤちゃんにもテルちゃんにも、それにウミちゃんにだって。なのにどーーーして私だけ見てないの! それっておっかしいよね! 私に見せないつもり?」

「いや……見せないとか……そんなの急に言われても……」

「早く! つべこべ言わない!」


 佐藤静香の剣幕に押され、俺は脱いだ。かなり恥ずかしいぞ。


「手で隠さない! ………あああ……ほんと綺麗だ……夢で見たのよりずっと綺麗な身体してる」


 そう言った佐藤静香は自分も脱いでいった。


「私……初めてなのに……やりかた分かる」


 佐藤静香に押し倒された。そして一つになった。



 俺の心に何かが入ってきた。これって……なに? なにが入ってきた? それは温かい何かだった。 

 佐藤静香……そうか、お前が入ってきたのか……俺の心に。あったかいな……

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