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第25話 別世界からの干渉と河西早苗という女

 3年A組の河西さんは飛んできたんだと僕も思う、そう言った金山要君。

 篠原さんの先代爺さんも似たような事を言っていて、それを聞いていた俺や篠原さんでさえ金山君の発言には衝撃を覚え、矢継ぎ早に質問を浴びせた。


「飛んで来たって……未来からか?」

「さっき、過去に降り立った人が一人でも現れたら凄い衝撃があって時間軸が枝分かれするって言ってたよね……なら……今私たちがいるこの世界って……」

「でも未来ってなによ? 俺と佐藤さんが見た夢が未来なのか? たっだらそれって既に決まってるのか? ならさっき言ってた運命論と同じなんじゃ……でも飛んできた河西さんがいるこの世界は……もう別の未来に向かってるってことか?」

「ハルにだけに見える屋上から落ちた女は? 朱海の爺さんは向こうの世界じゃ別の女が死んだんだろうって言ってるようだけど…」

「ちょっと……ちょっと待って……そんなに慌てないで……」


 金山君は皆に手のひらを向け、俺たちが落ち着くのを待った。確かに彼の説明はまだ途中だった。


「タイムトラベルとか並行世界については……全てが仮説の域を出てはいません。検証されていないって事です。ですが、ここにいる皆さん…というか、特に春山君が現代の科学では説明のつかないなにかに遭遇してしまった、ってことですよね。その遭遇したモノをどのように解釈するかは、それぞれです。僕は並行世界、パラレルワールドだと解釈しました。こんな話を聞いた事ありませんか? プロボクシングの元世界ヘビー級統一王者のモハメドアリ。引退後はパーキンソン病を患っていたのですが1990年の湾岸戦争の際にバクダートに行きイラク大統領と直接対話をしてアメリカ人の人質解放に成功してます。ただ、その後1996年のアトランタオリンピックの開会式で聖火台に彼が点火した姿が全世界にライブで放送されたのですが、それをテレビで観ていた人の中に、ウソだ、アリは既に死んだはずだ。あれは誰だ? と驚愕した人が一定数いたといいます。真実は解りません。パーキンソン病であったことは間違いありませんから、きっと死んだんだろう、と勝手に思い込んでいた人が大勢いたとしても不思議ではありません。でも彼はアメリカのヒーロであり、プロボクサー引退後も熱心なファンが何万人…いや何十万人もいて、そういったファンの中にすら、アリは既に死んだと認識していた人が大勢いたようです。パラレルワールドの世界は互いに絶縁状態なのか? もし仮にですよ、絶縁状態であるなら、別の世界があったとしてもそれは考える必要もなく、存在しないも同然だと思いませんか? パラレルワールドの相互干渉が起こりえると主張している科学者もいます。向こうの世界の出来事が、こちらの世界に滑り込んでくるという事です。モハメドアリが死んだという世界があって、その事実がこちらの世界の人々の記憶に干渉した…滑り込んできたとも解釈できます。春山君が見たモノは夢で見たモノが多いのですが、その夢は通常の夢とは明らかに違うのですよね?」


 俺が見た夢。それは大人の佐藤さんとの強烈な行為、それとやはり大人の河西さんとの行為、後は屋上から落ちて来た女だ。どの夢も上手く言葉では言い表せられないが、いつもの夢と全然違った。夢はあまり覚えている方ではないが、それでも中には覚えている夢もあり、そういった覚えている夢は急に場面が変わったり、とにかくストーリーになっていないのだ。だが例の夢はまるで現実と変わらない展開でリアルさがある。それに落ちて来た女の姿は最近では見なくなったが、一時期は目が覚めている時にすら現れた。


「僕はこう思います。この世界では3年C組の宮古愛さんが屋上から落下し、即死だった。でも別の世界では違う女子が落下し、即死ではなかった。そのどちらも春山君が窓から覗き込んで見てしまった。むこうの世界の春山君は……言い難いんですが……精神的に相当にまいっていると思います。グチャグチャだったんでしょ? その女子の頭。そして未来を夢で見たという件ですが、さっきも言ったように時間と言うものがハッキリと解ってはいませんが光速で移動する宇宙船に乗れば行けます。行けるというのは存在するってことです。でもその未来が確定されているのかといえば否です。何年後の未来なのか解りませんが、そこに今の春山君が辿り着くまでに多くの選択があるからです。時間軸が枝分かれして世界が二つになてしまう原因には、誰かが時空を超えた衝撃と言いましたが、おそらくはそれだけではないと思います。もっと違う何かでも時間軸は分かれていくのだと思います。でもその夢は佐藤さんも見ているんですよね? ……だとすると今のこの世界から繋がる未来の一つなんだと思います。仮に10年後の未来だとします。今から10年経過する間にこの時間軸が一本道ではなく、いくつもに分かれているはずです。ですので、ある世界では夢の通りになるけど、別の世界の春山君は違った選択をしている可能性があります」


 そう言えば佐藤さんが言っていたことを思い出した。あれは同じ夢を見る前だ。確かデジャブのようだけど、調べてみるとそれはデジャブではないと。何年も俺と付き合っていて、色んな所に行って、色んなことをした……なぜだかそう感じると言っていた。


「え…そうなんですか? 僕はてっきり春山君が特殊な何かを持っていて、傍にいる佐藤さんがそんな春山君の影響を受けたのだと思っていたのですが……違うのかな? 今春山君が特殊な何かをもっていると言いましたが、理由は解りませんが別の世界からの干渉を受けやすいのだと思います。パラレルワールドは並行世界とも言いますが、決して並行に存在などしていないでしょうし、この世界の近くにある世界もあれば、遠くにある世界もあるはずです。その違いは、近い過去で枝分かれした世界なのか、遠くの過去で枝分かれした世界なのかの違いのような気がします。春山君は近い過去っていうか、もしかしたらつい最近枝分かれした世界があって、その世界から多くの干渉を受けていて、それが転落死した女子なんじゃないかな。それにさっきも言いましたが未来も一つの時空ですので、現在僕たちが存在している世界を基準とすれば別の世界です。春山君は2つの未来から干渉を受けていて、その一つは佐藤さんとの未来、もう一つは河西さんとの未来なんだと……」


 金山君はそこまで言って言葉を切った。説明に自分の想像が随分と入ってしまっているために皆の反応を窺っているのだろう。だが俺を含め、3人娘の誰もが暫くは口を開こうとはしなかった。

 最初に口を開いたのはアヤーー権藤彩音だった。


「うん……アタシはK町だから中学で初めて佐藤静香と春山君見てすぐに気づいた。必ず繋がるって。佐藤静香も未来から干渉を受けててもおかしくない。ただ……河西早苗……本名はきっと東海林詩江……アイツと春山君も縁みたいの感じた」

「へ~~そうなんだ。彩音がそう感じたんならハルとなんかあるんだろうな。アタシは河西って女…東海林だっけ? どっちだっていいけど、直接会ったことないけど……3年A組の前通ったらイヤ~な感じしたな。静香は可愛いゾ。泣かせるヤツはぶっ飛ばす。それに静香はハルのことズッと見てた。小学の時からだ。ハルは鈍いから気づいてないようだったけどな」

「春山義仁君と佐藤静香さんについては私も同じ意見です。佐藤静香さんが2年生の神取君に付きまとわれてた時に相談されて、春山義仁君に言いなさいって答えたの。春山義仁君は何があっても佐藤静香さんを助けるのは解ってましたから。でもそれは未来からの干渉なのかな? 両方なのでは? 今のこの世界だって別の世界に干渉する訳ですよね? それと春山義仁君に一つ聞きたいの。あなた、これからの人生でいろんな選択があるでしょうし、どのような未来が待っているかは誰にも決められない。でも……河西早苗さんと暮らす未来って……あると思う?」

「それは無い! 絶対に無い! 有り得ねぇ! ダメ! 死んでもムリ! 仮にだよ……アヤやテル、それにウミと暮らす選択枝があったとしてもアイツは無い!」

「それにウミって何? なんで私だけそれにって付くのさ……はら立つ……別にいいけど……でもそれはなんで? どうしてそこまで否定できるの?」


 河西早苗は気味が悪いのだ。そう感じたのは転校初日からだ。上手く言葉には出来ないが異様な何かを感じたからそう思ったのだろう。それに学校の近くで女の人が殺された事件があった時、構内放送があって教室に留まり、誰もが怯えた表情を隠せなかったのに、アイツは確かに笑った。あの時のアイツの笑みは忘れない。それに何と言ってもお医者さんごっこの件だ。その遊びを俺とやったと迫って来た時のアイツは鬼気迫るものがあった。何が何でも俺に「やった」と言わせたかったのだろうが、たかが幼い時分にやったお遊びだ。そこまでムキになる理由が解らないし、狂気すら感じた。それに実際に俺とお医者さんごっこをやったノブエちゃんだって、その話を俺に持ち出された時は、恥ずかしくて凄く困った様子だったし、中学生の女子なら誰だってそうなると思うのにアイツは全然違った。それこそ今ここで続きをやったっていい、って言い出すんじゃないかって勢いで、恥じらいなんてものは微塵もないどころか、俺は犯されるかとすら思った。


「はい? 犯される? 春山義仁君が河西早苗さんに? でもね、男の人が女の人に犯されるって……春山義仁君の身体がそうならなければ成立しないでしょ、セックスなんだから」

「ハルは直ぐ立つからイケるぞ」

「あのな~~」


 まただ、また権藤さんが顔を赤くして斜め上を見てる。


「あのさ~アヤネ君、勝手に変な想像して顔赤くするの止めてくれる?」

「ふ~~ん……春山義仁君ってそうなんだ~。ね~アヤちゃん、触られたんでしょ? スカートの中に手ぇ入れられて。その時の春山義仁君のどうだった?」

「あああああああああああああ! 二人の秘密って言ったろ! なんでウニが知ってんだ?」

「へ~~やるじゃんハル。っでその後は? 彩音のパンツも脱がしたのか?」

「いっ、いや……言うつもり無かったんだけど……ウミの股間触っちまって……ちっ、違う…ウミの股間が俺の手に触ってきて……テル! 脱がす訳ないだろ! 廊下でだぞ! アヤのパンツ脱がしてどーーすんだよ!」

「ギャハハハハ! 朱海の股間が触ってきたって! 澄ました顔してヤルね~~」

「そっ、そんなの……するはずないでしょ!」

「ウニのも触ったんだ……やっぱわざとだったんだ」

「彩音君、あのね~……」


 女三人寄れば「姦しい」といって、やかましい事の例えらしいが、ほんとそうだわ。金山君は呆然と三人娘の様子を見ているが、俺もとてもじゃないけど口を挟めなくなった。

 暫く経って気を取り直した篠原さんが、先ず咳払いをして、


「ゴホン……私としたことが……ちょっと……はしたない真似をしてしまいました。話を戻しますが、とにかく春山義仁君が河西早苗さんと暮らす未来は無いということは解りました。だとすると……河西早苗さんとの夢は、今この世界から繋がる未来では無いということですよね? そうとう遠い過去に枝分かれした世界……もしかすると何百年も前に枝分かれした世界から繋がる未来。すると……こう考えることは出来ませんか? 理由は解りませんが春山義仁君は別の世界からの干渉を受けやすい人間で、本人の意図するしないに関わらず、いろんな世界の記憶を夢に見てしまう。それが未来の出来事であっても一つの記憶として夢に見る。そしてその夢と同じ夢を見た人がいる場合は今この世界から繋がる未来の一つである可能性が高く、そうではなく春山義仁君だけが見た夢であればこの世界から繋がる未来ではない可能性が高い。いや……これは私の単なる思い付きですが…ちょっと無理がありますね。そもそも佐藤静香さんもデジャブみたいな感じで曖昧ではあるものの、夢とは違った形で干渉されているみたいですから。それに赤の会の紅蓮大寿が言っていた事と似たような話をウチの爺様も言ってます。この街は別の世界と繋がってしまったと。私あのあと爺様に聞いたんです。いつ頃繋がったのかを。するとアノ事件があった頃からだと……学校の傍で女性が殺された事件が起きるちょっと前からだと言ってました。それって河西早苗さんが転校してきた時期と一致します。春山義仁君がおかしな夢を見るようになったのは……その後ですよね? ………佐藤静香さんと付き合い始めたのも。でもあなたが彼女に思いを寄せていたのは? ………ですよね、ずっと前からですよね。それと彼女があたなに思いを寄せていたのも大国照子さんの話だと結構前からですよね? ……ですからあなた方二人の今は、決して別の世界からの干渉でこうなっている訳ではなく、今この世界にいる二人が惹かれ合った結果でしょう。仮に干渉があったとしてもそれは今のこの世界が別の世界に干渉したのだうろと私は思います。金山要君はどう思います?」

「うん、その可能性は高いと思う。特に春山君が夢を見るようになった時期と理由、そして佐藤さんとの夢、それと河西さんとの夢、その解釈は当たってるんじゃないかな。そうか……あの事件があった頃か……春山君、夢とは別に何かおかしなこと……なにか感じませんでしたか?」


 そう言えばずっと頭の隅に引っかかっていることが2つあった。

 一つは教室の後ろにあるサスマタだ。あの時、校内放送で校長先生が「サスマタを持て」って言ったが、誰もその存在っていうか名前すら知らないようで、俺も知らなかったような気がする。それなのに俺は誰よりも早くサスマタが教室の後ろの壁の高い位置にあるのを指で示していた。

 もう一つは近藤先生に車で送って行ってもらった時だ。高橋君、村田さん、佐藤さん、そして俺の順番で回ってもらったのだが、何故か道に迷い凄く時間が掛かった。そしてそれを下屋敷刑事は不審に思っている。


「え? サスマタ………あれ? どうだったろう?」

「………そうだ……おかしい……」

「うん、へんだ」

「なんで今まで忘れてたんだ?」


 そこにいる全員がそうだった。どのクラスも校内放送でサスマタと聞いて、誰もが意味が解らずポカ~ンとしていたのに、暫くすると「アレだよアレ」と思い出したみたいに教室の後ろにある物に気が付いたそうだ。それもおかしいのだが、その事実を今の今までスルーしていた自分に驚いていた。


「絶対におかしい。これってどういうことだろう? ………もしかしたらアノ時……世界が変わった? 別の世界の干渉を受けた?」

「干渉って……記憶の干渉じゃなくて?」

「うん、物的な干渉もあるのかもしれない……けど……こう考えることも出来る。今僕たちのいる世界ではどのクラスのもサスマタはあった。だけどサスマタが無い世界からの干渉を受けて皆の記憶からサスマタの存在が抜け落ちてしまった。そう言えばあの時の構内放送……喋っていた校長先生もサスマタって言葉がなかなか出てこなかったの覚えてる。あれだ、あれ…とか言って」

「だとすると……記憶って…なに? 凄く怖い気がする。春山君、もう一つの話……近藤先生に送ってもらって道に迷った件、もっと詳しく話して」


 先生に送ってもらった4人。中学校から北に向かって遠い順に回った。最初は高橋君、次に村上さん、そして佐藤さん、最後が俺。確か夕方の5時ちょっと過ぎには学校を出たのだが、最後の俺の家に着いたのは8時を過ぎていてト-タルで3時間も掛かったことになる。近藤先生は転勤してきたばかりでこの街の道などあまり知らないし、車にはカーナビも付いていなかったから、最初は高橋君が助手席で道案内をして、次は村上さんがという具合に俺達4人がカーナビの代わりとなったのだが、道に迷ってしまった。どこで迷ったのかは、高橋君の家に向かう途中のような気もするし、村上さんの家に向かう途中だった気もして、あまりハッキリと覚えていない。


「ええええ? どうして覚えてないの?」

「なんでなのかな~~? 俺……実はあの時……後部座席で佐藤さんの隣に座って……先生の車って後部座席メッチャ狭くて……ピッタリくっついちゃって……そんで先生の運転荒くて……カーブの度に佐藤さんの色んなとこ触っちゃって……」

「春山君、どこ触った? アタシとおんなじとこ?」

「ハル、立ったんだろ!」

「すけべ! 変態! ………要は佐藤静香さんの身体に夢中になってて他のことは覚えていないと…そういう事ね。……なら佐藤静香さんもダメね。憧れの春山義仁君とくっついて座り、おまけに色んなとこ触られて他の事なんてな~んにも覚えてなさそう。村上さんって村上千佳さんの事よね? 今度彼女に聞いてみましょう。すごく大事なことのような気がする。ところで金山要君、河西早苗さんは飛んできたと思うって言ってましたよね? もうちょっと詳しく教えて欲しいの。想像でもかまわないから……」

「……河西さんは……どうゆう方法なのかは全く分かりませんが、或る未来を覗いてきたのは間違いないでしょうし、春山君の幼馴染である石橋伸江さんが5歳で死んでいる世界から飛んできた……いや…何度も飛んだのかもしれない……その目的は……彼女にとって都合の良い世界……そんな世界で生きるため」



 アイツにとって都合の良い世界? どういう意味だ? どんな世界なんだ?



「わからない? 春山君…ちょっと鈍すぎ。あなたと一緒に暮らす世界でしょ」

「ちょ、ちょっと……それは飛躍しすぎだろ……どうして……」

「河西早苗はあなたと幼馴染の東海林詩江です。そして彼女は死んではいない。そういう世界にいた。恐らくは、あなたと石橋伸江さんのお医者さんごっこを見たか、もしくは聞かされ、そして彼女もやったのでしょう。あなたとお医者さんごっこを。そこであなたと約束をした。お嫁さんにしてもらうと」

「そっ、そんなバカな……5歳か6歳だぞ。だって……実際にお医者さんごっこをしたノブエちゃんだってお嫁さんになるって俺と約束したらしいけど、今となってみれば笑い話みたいに喋ってるし……」

「乙女心をまるで解っていないようね。石橋伸江さんだって、仮に春山義仁君から付き合って欲しい、と言われたらOKの返事をするんじゃないの? 又は、春山義仁君が佐藤静香さんと付き合っていなければ、石橋伸江さんの方からあなたに告白した可能性はあると思いますよ、あなたモテるし…触り魔ってこと除けばね。それに……確かにあなたが言うように、幼い頃にした約束を真に受けて時空を飛ぶなんて有り得ない、とします。だけどそれって常識ではという大前提での話ですよね。河西早苗という人間に常識は通用しないとすると…どうです? 彼女が人格障害……簡単に言うと壊れていたら?」


 河西早苗ってどういう女なんだ? 俺だってそんなに喋ったことがない。でもお医者さんごっこの時も電話の時も、俺はコイツ狂ってると思った。でもそんなバカな話があるか。そうだ、権藤さんはあの時、体育館でアイツと喋ってた。


「アヤ……最初の事件があった日、全校生徒が体育館に集められたろ。あの時河西早苗となにか喋ってたよな?」

「うん、見えたんだ。アイツが人を殺してるのが。だから、お前なん人殺ったんだ? この学校に何しに来た? って聞いた。でもアイツはダンマリだった」


 なんだそれ? もっと早く言ってくれよな。権藤彩音が見たんならきっとそうなんだろうし、それはテルもウミも同じように思ったらしく何も言わなかったが、金山君は仰け反っていた。


「金山要君の話や春山義仁君の話を聞いて、私はこう思うの。河西早苗が飛んだのは1回じゃない。何度も飛んでる。それは何度やり直しても春山義仁君との仲が上手くいかなかったから。でも見たんだと思う。別の世界の未来では一緒に暮らしているのを。別の世界で上手くいったところで、今ここにいる自分が満足できるはずがないし、それどころか余計に願望が強くなる。それと河西早苗が元々いた世界で5歳の時に殺されたのは石橋伸江。それとはまた別の世界では石橋伸江と東海林詩江の二人ともが殺されていて、そこに飛んだ時に河西早苗という戸籍に背乗りをしたんだと思う。何度も何度も飛んでやり直した河西早苗にとって、石橋伸江が生き延びている世界はこの世界が初めてだった」

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