第17話 初めてのチューと呼び出し
紅蓮大寿による記者会見が続いている。だが紅蓮大寿は口を閉ざしテレビカメラを睨んでいるだけだ。まるでもう言う事は無いとでも言うように。
それでも記者たちは質問をしていた。
「悪魔の使いとか邪悪な奴らというのは、具体的に誰の事を言っているのですか?」
「別の世界というのは、いったいなんのことなのでしょうか?」
「この世界の切れ目というのを、もっと具体的に教えてください」
そんな質問が次々と寄せられるが、当の紅蓮大寿は自分を映しているカメラから片時も目を逸らさず、真一文字に結ばれた唇はピクリとも動かない。凄い精神力だな。これだけ質問されたら普通の人間なら何らかの反応がありそうなものだが、こいつときたら、まるで静止画像のように顔の何一つが動かない。
「今後の赤の会の活動を教えて頂きたいのですが」
ようやっと目玉が動いた。その質問者に向かってギロリと動いた紅蓮大寿の目。それはテレビ越しで観ている者ですら怯んでしまうような動きだった。
「我ら赤の会は……北海道に向かう。そして……直ちにこの世界の裂け目を探し出し、塞がなければならない。それと同時に、その裂け目から既に入り込んだ邪悪な……悪魔の使いを、ことごとく葬り去らなければならない。それが神より託された我ら赤の会の使命だ」
北海道って言ってるけど俺が住む佐舞久留町のことだよな? さっきそう言ったよな? なんなんだコイツ? 邪悪な悪魔の使いってなによ? コイツの面構えが邪悪っぽいのは気のせいか? え…? 家のチャイム? それともテレビ?
誰かがウチのチャイムを鳴らしてるようだ。玄関に行くと、もう既にドアを開けて中に入っていた。ジーパンにセーターを着た女の人だ。
「テレビ観てたら、なんだか怖くなって……来ちゃった」
普段着で直ぐには分からなかったが佐藤さんだった。
うわ…どうしよう。心の準備が……
「迷惑だった?」
「いや……ぜっ全然」
「入っていい?」
「え? ……あ……うん…いいよ、入って」
さっきは佐藤さんを家に連れてこようかって考えたのに、いざそうなってみると、めっちゃ緊張する。落ち着け、落ち着くんだ俺、自然に振る舞え。……自然ってどうだっけ? 毎日迎えに行って一緒に歩いてるだろ。その時と同じだ。ダメだ、ドキドキしてきた。私服だからか? 確かに佐藤さんのジーパン姿見るの初めてだし、ピッタリしたローライズでエロい……なに考えてんだ俺わ。ヘンなとこに視線向けたらダメだ、バレる。とにかく部屋に案内しなきゃ……自分の部屋に案内するのか? それとも居間か? どうしよう……テレビがあった方がいいな。その方がきっと話題に困らない…はず。でも…やっぱ自分の部屋だよな、きっと。
俺の家は、玄関に入ると3つのドアーー居間に繋がるドアと食卓兼キッチンに繋がるドアと和室に繋がるドアに囲まれたホールになっていて、そのホールには2階への階段もある。2階は俺の部屋と今は空き部屋だが姉ちゃんの部屋がある。
一旦は居間に案内しようかと思ったが、やっぱり2階に行こうと階段を4~5段あがったのだが、
ベットがある部屋にいきなり連れてくっていうのは魂胆があるって思われそう……
ダッ、ダダダダダ…と階段を踏み外した。
「キャッ………え…ええええ? ……だっ大丈夫?」
脛を打って声が出ない。くぅぅぅぅ……痛ぇぇ…
結局は居間に案内した。ビッコを引きながら無言で。
「お父さんが保護者説明会で中学校行って……わたし弟いるんだけど…」
「うん知ってる」
「え…弟のこと知ってた? そっか……そうだよね、小学校で同じクラスだったもんね。小学校も保護者説明会で、お母さんさんと一緒に弟も行っちゃったから、私一人でテレビ観てたら……急に赤の会に変わって……この街のこと……なんだか凄く怖くなっちゃって……」
あ~、あの紅蓮大寿の顔は怖いわ。悪魔みたいだ。
「春山君……ねぇ……隣に座って。私……すごく怖がりなの」
3人掛けのソファーに浅く腰を掛けていた佐藤さんからちょっと離れった位置に座ると、にじり寄ってきた。
「別の世界って、春山君わかる? この世界の裂け目とか……それって前に近藤先生が言ってたパラレルワールドのこと? 理論物理学だったっけ? パラレルワールドって…あるんだよね?」
佐藤さんの顔は青ざめていた。テレビでは未だ紅蓮大寿の顔が映っていて、記者の声が音声で流れてはいるが、当の紅蓮大寿は再び口を開くことをせず、ひたすらカメラから視線を外さない。それはテレビを見ている者が、自分を睨みつけている、と思ってしまうような異様な放送が続いている。
佐藤さんはそんな紅蓮大寿の顔を直視したくないのか、隣に座る俺の方に顔を向けてはいるが、どうしても気になるのだろう、チラチラとテレビに視線を向けたりを繰り返していた。
「テレビ消そうか?」
「う~うん、消さないで。だって、またこの街のこと何か言うかもしれないし……それに…春山君に聞きたいことあるんだけど……なんか音があったほうが話しやすいっていうか……」
そう言った佐藤さんは下を向いてポツポツと話し始めた。
「私って臆病で意気地なしで……そんな自分が嫌いなの。あの3人……テルちゃんとアヤちゃん…あっ…アヤちゃんって言ったら怒られるんだった。権藤彩音さんネ。それとウミちゃん。ウミちゃんって篠原朱海さんのことなんだけど、その3人って凄く強いんだけど、とっても優しくて……私…あの3人みたいになれたらいいな~って思ってるんだけど、やっぱり意気地なしの臆病で……。私ね、小学生の頃から春山君のこと好きだったの。でも……なんていうのかな~~……異性として意識し始めたのは、きっと中学に入ってからだと思う。1年生の時にバスケの新人戦レギュラーだったでしょ。試合見にいったんだよ……でも春山君しか目に入らなくて……ああ私ってこの人のこととっても好きなんだって分かった。でもバスケやってる時の春山君って……なんか怖いくらい凄くって、普段もあんまり喋ってるの見たことないし、それにモテるから……私みたいな意気地なしなんて嫌いかな~~って………。2年生の後半になって神取浩から付け回されてた時にね、ウミちゃん……私の家ってウミちゃんとこのお寺の檀家なの。だから小っちゃい頃から両親とお寺に行く事あって、いつのまにかウミちゃんと遊んでて、小学校に上がる前から友達だったの。そのウミちゃんがね、神取浩のこと春山君に相談しなさい、って。春山君の事が好きなんでしょ、彼もあなたが好きよ。彼は絶対にあなたを助けてくれるからって。それでもダメだったら私がなんとかする、って言ってくれたんだけど、春山君に話し掛けれなかった。私のことなんか……きっと嫌いだと………春山君、私のこと……ほんとに好き? グランドで好きって言われたんだけど…それに……けっこう私のこと見てるの気づいてたから、きっと私のこと好きなんだって思ってたりもしたんだけど……でもやっぱり全然自信なくて…」
「俺、佐藤さんが好きだよ」
こっちを見てる佐藤さんの顔がすぐ傍にあって、まだ何かを言いかけていた。
「私……春山君を……ぇ…」
俺がなにをしようとしているのか分かったみたいで、目を閉じた。これがきっと初めてのキス。
いい匂いがした。ちょっとポッテリとした佐藤さんの唇がとても柔らかくていつまでもそうしていたかった。腕を胸の前で縮こませた佐藤さんの身体全部を抱きしめていた。だけどソファーの上でズルズルズルって二人で倒れ込んでしまい、次にどうしたらいいのか分からなかった俺は、下になった佐藤さんからゆっくりと離れた。恥ずかしそうなんだけど、だけど嬉しそうに顔を輝かせている佐藤さんが、凄く綺麗で、とても可愛いかった。そんな彼女は恥ずかしさを胡麻化すためか、色んな、とりとめの無い話を始めた。
「私ね、小学3年生の時、すごく意地悪な5年生の男子が近所にいて、しょっちゅう虐められてた。その時って春山君とは違うクラスだったんだけど、同じクラスにテルちゃんがいたの。もの凄く怒ってくれて、その5年生ばやっつけちゃて……あの頃からテルちゃん凄く大きかったし、強かった。それからテルちゃんと仲良しになったの。すごく優しくて、いっつも私のこと気にかけてくれてた」
そう言えば俺も小学1~2年生の頃、近所にいたな、年上のワルガキが。俺も虐められてたのかな? 覚えてるのは、そのワルガキの口の中に姉ちゃんが石ころいっぱい詰め込んじゃって、そいつがワンワン泣きながら家に逃げ帰った事だけど、あれって弟を虐めた仕返しだったのかな?
「中学1年生の時に、私のこと3年生の男子、名前知らないんだけど不良の男子が、俺と付き合えって言ってきて、絶対嫌で断ったのに、何度も何度も来て……そしたらアヤちゃんが…権藤彩音さんがね……その3年生の不良のところに行って、ビンタして……アソコ蹴り上げて、佐藤静香の前に二度と現れるなって。アヤちゃんってみんな不気味がってるけど、優しくて、かわいいし、とってもいい子なんだよ」
なんだか西遊記みたい。三蔵法師が佐藤さん。ソンゴクウとサゴジョウとハッカイに守られてって話だよな。それが大国照子と権藤彩音。もう一人は……俺か。篠原朱海はなんだろ?
「でもさ~佐藤さんって、やっぱりモテるんだ」
「そっ、そんなことないもん! 私のこと好きなの春山君だけだもん! あ……えへへへへ」
テレビはいつのまにか紅蓮大寿の記者会見を終えていた。そして警察の記者会見に戻ることもなく、いつものワイドナショーを流していたが、そのワイドショーでは2つの記者会見について「なんなんでしょうね~?」とMCが言っていただけだった。通常の事件であればマスコミは知る権利とやらを振りかざして報道する事が多いのに、妙に消極的だった。
「そろそろ保護者会も終わると思うから、私帰るね」
佐藤さんを自転車の後ろに乗せて家まで送って行った。俺の背にピッタリくっついて乗る佐藤さん。ヤバイ、そんなにくっついたら背中に意識が……オッパイが……。
午前9時から始まった保護者会は異常に時間が掛かり、終わったのは午後の4時を回っていた。だったら佐藤さんを引き留めれば良かった。もうちょっとイチャイチャしたかった。
保護者会の結論は、学校は通常通り行うって事のようだ。というのも警察の見解が驚くほど早くに示されたからだ。
主婦殺害に使用した大型ナイフが橋の下で見つかった遺体の傍にあり、ナイフの柄の部分に指紋がベッタリとついていて、その指紋が遺体の指紋と一致。そしてナイフについた血痕と殺された主婦の血液が同一であることなどから、「橋の下に放置された遺体が主婦殺害の犯人である」と警察からの正式な見解が示され、併せて、その犯人を殺害したのは中学校で首を吊った猪俣吉郎であるとの発表。そして猪俣吉郎は自殺であると断定した警察。結局は赤の会の教祖 紅蓮大寿の会見を黙殺した格好だ。
いつまでも学校を臨時休校にする訳にはいかないと考えた多くの父兄は、この警察の発表に安堵した。だが、猪俣吉郎の死因が自殺を装った殺人だと言い切った紅蓮大寿の言葉がどうしても引っかかるのだろう。自警団が組織される事になったらしい。
朝、家を出る前に父さんに呼び止められた。
「お前、女の子の送り迎えやってんだろ。これ持ってけ」
投げてよこされたのは一口の木刀。
「ビワの木刀だ。どんだけ打ち合っても折れたりしないぞ」
「これ……誰の?」
「お前の爺さん……俺の親父だけど剣道やってたらしくてな。まぁ形見みたいなもんだけど、お前にやるわ」
ずいぶんと使いこなした木刀で、見るからに荒々しい。そんな木刀を裸で持ち歩くのも物騒な感じがする。部屋に戻って押入れを探すと、
「あったあった竹刀袋。でも入るかな。木刀って反ってるし」
小学校の修学旅行で寄るような土産物屋で売ってる木刀と違って、剣道の練習用に使う木刀は日本刀と同じく反りがあるが、今貰った木刀は反りが小さく、なんとか竹刀袋に収まった。
家を出て歩いて行くと驚いた。交差点付近に乗用車が止まっていて、その乗用車から降りて来たのだろう男が3人立っているのだが、そのいずれもが木刀やら竹刀を手にしていた。こいつらなんだ? もしかしたら自警団?! そしてそれは一か所ではなかった。街が異様な雰囲気に包まれていた。
学校に着くと今日も河西さんの姿はなく、もう随分と続けて休んでいる。
昼休み、給食を食べていると大国照子が来た。
「ハル、こいつがアタシとハルに用だとさ」
見ると、顔は知ってるような気がするが名前の知らない女子が立っていた。
「3年C組の栄前田椿よ。今日からウチの学校に風紀委員って組織ができたの。私がその風紀委員の委員長よ。覚えておいてね。春山君、あなた有名よね。風紀を乱すようなことやらないでね。とくにセックス」
なんだコイツ? いきなりセックスって。よくわからんけどどうでもいいや。でも大国照子と俺に用ってなによ? まさかセックスって……俺と大国照子??? そんな噂でもあんのか?
「テル! お前がしょっちゅう触るから……」
「ん?」
腕を組んだまま不思議そうな顔で俺を見ているが、違うのか?
「春山君、なに勘違いしてるのか知らないけど最後まで聞いてね。迷惑だからすぐに解決してきてちょうだい。大国さんと2人で」
「解決ってナニを?」
「5~6人の高校生が来てるの。頭金髪に染めたりして見るからに不良の人たちが、春山君と大国さんを呼んで来いって。きっと神取一族の誰かに頼まれたんでしょうね。あなたと大国さん、この前、2年生の神取君と揉めたんでしょ?」
用件は分かったけど、風紀委員ってなによ? 俺と大国照子の二人が行けば間違いなく乱闘になるだろうけど、それはいいんだ。とにかくセックスにまつわるものだけをダブー視する委員会なのか?
「いっておくけど風紀委員って生徒会とは全く関係ない別組織だから。暴力事件やいじめなんかは生徒会で対処するはずなんだけど、生徒会長が神取美香だからね~。とにかく風紀委員としては、二度とあんな不良がウチの学校に来ないように、とっとと解決してちょうだいってこと。顧問は鍋島緑子先生だから、異存があるんなら鍋島先生に言って」
どうだっていいや。
大国照子と2人で教室を出て行こうとすると、佐藤さんが心配そうに見ていた。
「村上さんと田川さん、絶対に佐藤さんが来ないように……頼むな」
「うん、わかった」
「二人で丈夫なの? 相手って高校生なんでしょ。それも5~6人って」
「いやこっちは3人だ」
大国照子がそう言ったけど後一人って誰?
「照子と春山君、さっさと行くぞ」
見ると、教室の入り口から顔を出す権藤さんだ。三人って……マジかよ。
「ハル、その木刀……えらい年季入っててスゲーな。ちょっと触らせろ。おお、これってビワだろ」
大国照子はこれから高校生とおそらく乱闘になるってことを、これっぽっちも気にしていないようで、俺が持ってきた木刀を手に取り、しげしげと眺めたり擦ったりしながら歩いている。
「照子、まさか朱海には言ってないよな」
「ああ、勿論だ」
篠原さんに言ったところでどうにもならないと思うけど、二人の言い方が何となく釈然としない。聞くと、
「朱海は加減を知らない」
「加減? 意味がよく解らんけど……」
「いきなり弓絞りはじめる」
「弓?」
「朱海の弓の腕前、全国有数だ」
「いや……だからって…使う矢って……本物?」
「偽物なんて無いだろ」
やべ~~だろ。そう言えば昨日佐藤さんが言ってたな。2年生の時に篠原さんから、春山君に相談しなさい、彼は必ずあなたを助けてくれます。それでもダメな時は私がなんとかしますから、って言われたって。何とかしますって……矢を射るってことか~?? 死んじゃうだろ。
校門を出て少し行くと公園があり、そこに学ラン姿の数人が見えた。
「あれだな、俺たちを呼び出した高校生ってのは」
全員が木刀らしき棒を持っていた。
「ハル、あいつらの腕前わかるか?」
「ああ分かる。どいつも素人が棒っ切れ持って粋がってるだけだな」
「やっぱりな。放つ気もショボイし」
1人だけとびきりに小っこいのがいて、よく見るとグランピーだ。
「あの金色頭、アイツが神取の兄貴。たしか高3」
「グランピーに兄貴なんていたんだ」
「春山君、知らなすぎだ」
「しっかしアレを兄貴に言うか? そうとうに恥ずかしいくて普通は言えないぞ。ある意味スゲーな。尊敬するわ……そう思わん…あ!」
大国照子にガッツリ握られた。
権藤さんもビックリしたらしく、俺と、俺の股間を握ってる大国照子を唖然と見てた。
「ハル、いいね~~、全然縮こまってないどころか…固い!」
「だからそれ…やめれって」
「固い……って……なに?」
目をまん丸にした権藤さんの視線が俺の下半身に移動して、みるみる顔が真っ赤になった。
「な……なに勝手に真っ赤になってんだよ! ふざけんなよ! ふっ、普通だからな、普通。立ってなんかないから……」
「クソガキの中坊が! ウチの弟と同じ目に合わしてやっからな! そこの女! お前だ、お前! 回してやっから楽しみまってろや!」
まただ、また権藤さんが赤い顔して斜め上を見てる。
「テル! なんか言えよ、権藤さんに」
「なんかって……ハルの形とかか?」
「春山君、照子のことテルって呼ぶんだ。ふ~ん、そうなんだ」
「形って………いいよ、もう何も言わんくて。え…? 権藤さんナニ?」
「アタシはさん付けなんだ」
「テメーーら舐めてんのか! っざけんなよ! ぶっ殺す!」
アイツラなんか怒鳴ってるけど、ちょっと待ってろって。
「さん付けって……今それ言う? ならなんて呼んだらいい?」
「………アヤ」
「テメーら何をごちゃごちゃやってんだ! びびってんのか! ぁぁああああ!」
びびってるだ? カチーンときた。けど今はこっちが優先。
「アヤ、ヘンな誤解すんなよな。テルが勝手に触ってくるんだって。だからって普通だからな普通。普通って分かるよな?」
「彩音も触ってみろ、ハルはすごいぞ。全然縮こまってないから」
「だっ、だからやめろ、そういうの」
余計に真っ赤になった権藤さんが目を泳がせながらーー
「アタシが先鋒、春山君が次鋒、大将は照子……それで行く」
相変わらず両手をポケットに突っ込んだままで権藤さんが歩いて行った。大丈夫なのか、こういうの得意分野じゃないだろ。身体も小っこいし。相手は木刀持った高校生が6人とグランピーか。乱戦はマズイな、やっぱり俺が最初に行った方が……
「彩音はすばしっこいから大丈夫。次はハルだ。どうやる? 何人イケる?」
「一人づつ一撃で倒すしかないから突か小手だな。でも素人に突かましたらモロ急所に入っちまうだろうから小手狙うしかないか。っで4人ってとこか」
「小手?」
「日本刀で小手決まったらそれで勝負ありだ。片腕無くなるんだからな。木刀でも有段者の小手は一撃で腕折るぞ」
「ふ~ん、そっか。なら金髪野郎はアタシに取っておけ」
「なんだオメーーわ! 向こうの2人に代わってに土下座でもしに来たってか! 今更遅ぇんだって! ぜってーーぶっ殺す!」
木刀を持った奴が怒鳴りながら権藤さんの身体を舐めまわすように見ている。アイツにとってのタイプなのか? 確かにちょっと見はカワイイかも……ところで次鋒ってのはいつ出てったらいいんだ? そう思いながら見ていると、権藤さんがスキップのように1~2歩跳ねたと思ったら、次の瞬間には木刀を持った奴が頭から地面に突っ伏した。あれは痛いなんてもんじゃない。ものすごい蹴りが股間に捩じ込まれて相手が跳ねたのが解った。これは病院送りだな。
そして蹴った権藤さんはこっちに向かって走って来た。
「次鋒行け!」
ここで次鋒かよ。まぁいいや、とにかく一人は戦闘不能だ。ん? 笑い声? 笑い声が聞こえる。え? 俺? 俺は木刀を片手に笑いながら走っていた。




