扉の先には
つめたい、つめたいのだ。
そこにはあるべき温もりも、脈打つ心臓もないのだ。
それが…
研究所のような謎の建物に偶然できてしまった、幼女だからこそギリギリ通れるような穴を、邪魔になった大型のレーザー銃と、その隣が似合わない時代劇にでできそうな刀を引き摺ながら体を捩じ込むように進んでいく。
穴は例の謎のポッドから右方向に存在していて、新鮮な空気を澱んだ研究所もどきに吹き込ませていた。
何故ここが研究所っぽくないのか。
そんなことをポッドのあった次の部屋、壁がやけにメカメカしい部屋を進みながら考える。
壁がコンクリだからだろうか…
研究所の壁は白い綺麗な謎の板のイメージがある。
だが、それならここ、壁が近未来チックなここは、いかにもマッドなサイエンティストが人造人間を作っていそうな感じである。
だが、何かが違う…どこかはわからないが大きく何かがイメージと異なるのだ…
謎の正体を突き止めるより先に、部屋の終わりに着く。
またあの穴を通るのは少し、いやかなり面倒だ
などと考えていると、古びた、それも壁に亀裂が入るほどの施設とは思えないほどスムーズに壁の一部が開き、白銀の世界とその先に待ち構える、実質的に研究所もどきを傷物にした原因、クソでかネズミとでも言うべき現地民約20名が熱烈な歓迎をしてくださりやがった。
こちらを見るや否や、1番近く、半分角待ちのようなところにいた現地民2号が飛びかかってくる。
残念ながら銃も刀も引き摺っていたせいで前のようにオーバーな火力で消し飛ばすこともできない。
自分は、おそらくめちゃくちゃ可愛いロリになったというのに、自分の顔すら拝めず死ぬのか…
そんな男子高校生らしい思考をする頭とは違い、体は無意識的に相手に殴りかかっていた。
いわばようじょパンチとでもいうべきこれは、癒しの効果はあれど、攻撃にしては少し、いやかなり可愛すぎる。死期をほんの少しずらす程度の効果しか得られないだろう。
しかしそんな予測は、2号の顔面、意外と可愛らしいそれが醜く陥没することで裏切られる。
意外にも、この幼女の体は元の男子高校生の時はおろか、一般的成人男性すら比較にならないほどパワフルなようだ。
2号が他界したことで作られた時間を、無意識的に刀を拾うことに費やす。
このマッスルなら持った感じ2kgぐらいのこれを容易に扱えるだろう。
この予想は先ほどの予想とは違って当たった。
5秒ほど2号に遅れてきた現地民3号、4号がバッサリと切り捨てられる。
転生物のお決まりのギフトだろうか?刀をなんとなくで扱えている。そういえば起きてすぐに銃を撃った時もなんとなくでできていたのでこれもギフトであろう。
それにしてもこのクソでか現地民はなんなんだろうか。
ゲームなどではよく見るでかいネズミだが、妙にリアルなのは個々の顔に特徴的があるからだろうか。
最初の現地民は右耳に傷があったし、2号はまつ毛が長かった。3号と4号はよくわからなかったが、扉を開けた時距離的には4番目にいた5号は顔に白い斑が入っていたし、6号は逆に黒い斑が…
5号がいない。
目の間の前に迫っているのは黒斑の6号だ。
とりあえず6号を切り裂き、5号を探そうとして、後ろから押し倒された。
残念ながらどこかのエースパイロットと違い、この幼女には後ろに目はないし、そもそも背中側を切ることはできない。どこかのゴム人間でもないからだ。
足音でなんとなく7号と8号も迫っていることを悟る。残念ながら最初の予想の、死期がずれるだけ、という部分は当たってしまったようだ。
2回連続で予想を当てたので、多分3回目も当たる。
そしてその3回目の予想はこうだ、
「俺、死んだな」
そう、かろうじて向いた右、研究所もどきの壁がが、2号かはたまたこの体かから出た血かそれに類似した何かが凍ってできた鏡に映った、白髪で色白、薄い青っぽい瞳をした性癖ドストライクだが、意外にも無表情なそれを見ながら、呟くと、顔を見れた達成感と共に無情にも俺の異世界生活は幕を閉じた。