幼女による通気性確保
吸い込まれて取り込まれ、たどり着いた先はまた”そこ”で。
だけど何か…何か…何かが違って…
足りない…何か…何か足りない…
異世界転生
なんと夢があり、なんと都合のいい。
今までの人生何もかもが上手くいかず、運に見放されてきた俺にとって。
よく青い鳥がこう囀っていた。
「異世界転生したらチート能力でチヤホヤされるぜ!」
とか
「異世界転生すれば勝ち組になれるぜ!」
とか。
いつもはあの掃除しても掃除しても汚れるガスコンロと同じくらいの嫌になるほど見慣れた空想上の理想の産物が、どうやら自分の前に湧いて出てきたらしい。
こうしてはいられない。
早く外に出てギルドでクエストを受けて、金を稼いで、家庭を築かなければ!!!
そうして希望の第一歩を踏み出そうとして
盛大に足元にある謎のでかい棒に躓き転んだ。
そして膝を擦りむいた。
赤い血が滴り落ちるがそこまで痛くない。
問題なのは目の前にいるやたらでかいネズミ。
さっき周囲を確認した時、このでかい棒なら寝ぼけていて見つからなかったりしても合点がいくが、こんなカピバラよりデカそうなネズミ、見逃すはずがない。どこから湧いて出たのだろうか…
理由はわからないがそのネズミはこちらを一目見た瞬間齧歯類の名に恥じないどころか、他の齧歯類がドン引きするほど鋭く、長い牙を出して襲いかかってきた。
驚いた俺はなぜかやけに手慣れた手つきでその謎の棒をネズミに向け、最大火力でぶっ放した。
ネズミどころか、この、謎の施設の壁ごとぶち抜いてしまった。
壁の向こうから風が吹いてきてる。
…おおよそ幼女?から放たれていい火力でない。
これは何か…それこそニュースで見た最新鋭の船に乗っているレーザー兵器。それも戦艦級の物の威力だ。
…しかしあんなクソでかいネズミが普通に出るのだから、
この世界ではこれが普通なのだろうか…
それならこの手の武器を持って外に行くべきだろうが、どうやらこの大型の光線銃とでもいうべきものは、1発使い切りなのか、トリガーを引いても弾?というか光が出なくなってしまった。幸い同じものが後三本ほど奇跡的に無事だった謎のポッドの裏にかけてあったので、そのうちの一つと先ほど撃ったやつを入れ替えておく。他にも時代劇に出てきそうな刀が4振りあったので2振り借りて行く。返す気はないけど。こうして幼女には過ぎたる1撃必殺で周囲を巻き込む光線銃と、おおよそ幼女では振るというより振り回される刀を持って、無惨にも開けられた穴を通って外に出てみることにした。