コレクション7
1章開始。
やっぱり影人君はこうでないといけないのです。
某所 大通り
誰にも気付かれず、ブツブツと不穏な独り言を呟く者がいた。魔術で、何処かの誰かと会話をしているのだ。
『陣は張ってあるな』
「はい」
『よし。では、お前に命令を下す』
誰にも気付かれなくなる魔術陣を張っている彼女は、どんな会話をしても、どんな奇行をしても、誰にも気付かれない。
『彼を殺せ。手段は問わない』
「御意」
そう言った彼女の脳裏に浮かんだのは、ある少年。知らず識らずのうちに、【コレクションの守り人】になってしまった、影納影人だった。
皆見学園 高等部 1−F教室内
影人と美琴の喧嘩から、数日後。
キーンコーンカーンコーンと、少し間の抜けたチャイムが教室内に鳴り響く。それと同時に、巨体が教室内に入ってきた。影人達の担任、西村剛だ。ちなみに、能力は《最強肉体》―――最強の肉体強化系能力―――である。
「出欠を取る」
そう言って、西村は生徒の名前を呼び始めた。
この点呼、遅刻、欠席した者は容赦なく点数を引かれ、返事をしなかった者には鉄拳制裁が待っているのだが、それを影人は聞いていなかった。
『《――――に金借りりゃいいだろ》《ははは、そうだな。どうせ返さねぇしな》《それは違う。死ぬまで借りるんだ》《どっちにしろ一緒だろ》《《《ギャハハハ》》》』
聞いていたのは、悪趣味な会話だ。今朝見つけたカツアゲの気配に、《遠聴貝》を使って盗聴をしているのだ。
(最悪だな。ぜってぇボコす)
そう決意する影人に、西村――またの名を鉄人――の拳骨が直撃した。
「お前は遅刻者か?」
ひく〜い鉄人の声が、聞こえる。ものすごく怖い。それを聞いて、影人は答えた。
「いいえ」
ものすごく声が震えている。鉄人が怖いのだ。
「返事が出来ないのか?」
「いいえ」
「なら返事をしろ」
「はい」
「よろしい。次は拳骨だ」
((もうしてる))
全員の心が一つになった。
「さて、HRだ」
鉄人は教卓の前に立って、そう言葉を切り出した。あまりにもいつもの話し始めなので、全員が聞く気をもっていない。しかし、聞く気がない事がバレると鉄人に殴られてしまうので、全員が聞いているフリをしているのだ。
「全員もう聞き飽きただろうが、お前らは、数名を除き問題児だ。だから、この私が担任になっている。馬鹿な事をやらかした者は、鉄拳制裁だ。それが嫌ならば馬鹿な事をやらかすなよ?私だって、殴るのは面倒だからな」
それにしては喜々として俺を殴るよな、そう影人は思うが、口には出さない。口に出してしまったら、鉄人に拳骨をお見舞いされてしまうからだ。
「では、これでHRを終わる。起立」
―――――礼。着席。
今日も1日、退屈な授業が始まった。
某所 皆見学園 体育館裏
放課後、影人はある場所から体育館裏を見張っていた。その場所とは、体育館の屋根の上。ほぼ誰か見つからない、影人お気に入りの場所だ。そこから見張るのは、体育館裏。そこには、3人のガラの悪い(恐らく)上級生に詰め寄られる、気弱そうな同級生だった。
『なぁ、いつもみたいに、金、貸してくれよ』
そう言われ、見た目通りに気弱な彼は、財布を取り出した。その直後、
ダンッ。
彼の眼の前に少年が降ってきた。
「あれ?カツアゲ?」
その少年、影人は、舐めたような態度でそう言って録画した動画を見せた。
「これは見逃せない」
そう言った直後、影人に火と水、そして雷が襲いかかった。が、そんな大雑把な攻撃など影人に通じる訳もなく……………、
「お前ら……ホント、チンピラみたいだな」
全てを避けた影人に、チンピラ3人組は殴られる。
『『『〜〜〜〜〜〜〜〜っ』』』
チンピラ3人組が悶絶している間に、影人は少年に声をかけた。
「何されてた?場合によっちゃ、こいつら全員ボコんないといけなくなる。まぁ、お前がこいつらをボコんないでって言うなら別だが……………」
影人がそう言うと、少年は淀んだ瞳で言った。
「こいつらがどうなろうと、僕の知った事じゃないです……………。むしろ、消えて欲しい」
そうとうに辛いめにあったのだろう。そう確信するには容易い言葉だった。
「そうか。………お前が自殺する前に見つけられて、本当に良かったよ」
それから、影人は少し言葉を選んで言う。
「こいつらが自主退学するのと、お前を見ただけで逃げ出すのと、今まで貸した金が利子付きで帰ってくるの、どれがいい?」
すると、少年は少し考えて、
「お金でお願いします。助けてくれて、ありがとう御座いました」
その声が震えていた事に、影人は気付かなかった事にした。その代わり、チンピラ達がその怒りを受ける。
「お前らいったい、コイツから幾ら奪い取った?」
底冷えするような声だった。たった1言に、影人の怒りが全て込められていた。その後は、拷問としか形容出来ない有様だった。
ただ一つ言える事は、その後、彼らはチンピラではなく、品行方正な生徒になったという事だ――――。
読まれてるきがしn((……………。