コレクション5
別作品の投稿に集中するので、月1ぐらいにペース落ちるかもです
某所 《遺跡》があった場所
「親父が、死んだ………」
影人は、ただ、座っていた。頭が、親の死を拒絶しているのだ。
「ああ、帰らなきゃ。もう一個、《影納コレクション》を持って帰ろう。親父も、喜んでくれるよな」
親が死んだ事を拒絶するその姿は、とても、とてつもなく、痛々しかった。
ふらり、と影人は立ち上がりふともものホルスターから《影納の地図》を取り出す。そして、いもしない親のために《影納コレクション》をさがしに行った。
皆見学園 高等部 1−F教室内
四人の生徒が話している。その内容は、
「影人、遅くない?」
影人の事だ。いつもならば登校しているはずの時間に、彼はいなかった。当たり前だ。家が燃えたのに学校にくる人は、あまりいないだろう。
「火事があったんですよ。深琴ちゃん、ニュース見てないんですか?」
白井深琴の言葉に答えたのは、思行並だ。その言葉に、深琴は驚きの声を上げる。
「ええッ!!うそっ!?」
「深琴さん。僕でも知ってるんだけど………」
なんで知らないの?そこまで言おうとして、口を閉じたのは、失物探だ。彼は、よくボコボコにされる。理由は、彼の言葉に腹を立たせる女性がいるからだ。そして、それはよく深琴になる。これはマズイとわかったようだが、もう遅い。深琴がバチバチと(物理的に)音をたて始める。
「煽り?」
電撃をくらってはいけないと探が土下座する。
「申し訳ありませんでした!!」
ここは許してやってくれ、と最後の一人、赤井翼がとりなした事によって、探が電撃をくらう事は回避された。
「探、お前は、少し考えて喋れ」
翼がそう言うと、探もそれが欠点だとわかっているのか、シュンとうなだれた。
「そうねぇ、影人の見舞いに行かない?」
暗くなった雰囲気を無くすように、深琴がそう言う。もちろん、(さぼって)の枕詞がつく。それを察した問題児三人は、ささっと荷物をまとめ始めた。
某所 《遺跡》の前
「親父、喜ぶかな〜」
影人は、《遺跡》に《影納の地図》を翳そうとした。が、誰かに腕を掴まれる。
「何やってるの?影人」
声のした方を見ると、そこには友人四人が立っていた。
「なんでもねぇよ………」
ゆっくりと腕を降ろし、覇気も生気も感じられない声で影人は答える。すると、探が自分の顔と影人の顔を近づけてきた。思わず影人はのけぞろうとするが、探がガッチリとホールドして逃がさない。そして、一言だけを言った。
「影人君。君、嘘つきの目をしてるよ?」
影人は、常人では考えられないぐらいに力が強い。そもそも彼は、身体能力、知能、《能力》の最低一つが異常なほどに発達する一族の産まれだ。その力を抑え込む事ができる探も、もはやちょっとした特異体質である。
「ついてねぇよ」
「嘘を【発見】しました。貴方は嘘つきです」
探が、《発見》――ありとあらゆる物を発見する《能力》――に引っかかた、という事を匂わせる。
「だったらどうたって言うんだよ!!」
そう叫んで、影人は探の手を振り払う。腕を振り払われた探は、驚いた顔で影人を見た。いつもの影人なら、そんな事をしないからだ。
「そんなの俺の勝手だろ!!だから、ほっといてくれよ!!」
そのまま、影人は《遺跡》に入ろうとする。しかし、翼がそれを拒んだ。
「影人、大丈夫か?」
「ほっといてくれって言ってるだろ!!」
影人は翼を押しのけようと一歩踏み出す。しかし、彼はナニカに引っ張られて後ろに飛んだ。深琴の《電流操作》――電流を増幅、抑制、生成、操作する《能力》――によるものだ。
「本当に、大丈夫?元春さんの葬式もしてないでしょ?」
並が止める間もなく、深琴はその言葉を言った。並と影人が青ざめる。
「死んで、ない」
「何言ってるの?「深琴ちゃん!!」ニュースにもなったのに―――」
ストン、と影人から表情が抜け落ちた。それを見て、やっと、深琴も自分がした事の重大さに気付く。
「な、なんて事を………。影人さんは、今―――」
並のその言葉を合図にするかのように、影人が深琴の手を振り払った。
「巫山戯んな!!冗談にしても笑えねぇぞ!?」
そのまま影人は、深琴足を払って転ばせる。深琴は一瞬驚いた顔をしたが、磁力を操って態勢を立て直した。
「訂正、しろ」
「深琴ちゃん!止めてください!!」
――これ以上は影人さんが壊れてしまうかもしれません。
しかし並は、そんな言葉を飲み込んだ。深琴が、悲しそうな顔をしていたからだ。
「影人。壊れたら、私がもらってあげる」
並から、『ずるいです』という視線を受けながら、深琴は構える。
「ごめんね、探、翼………並ちゃん」
影人は、その言葉さえ聞こえていないのか、うわごとのように訂正しろ、訂正しろ、と繰り返している。とても、恐ろしい。
「これぐらいじゃ、影人君は壊れないよ」
「存分にやれ」
その言葉が合図にでもなったかのように、影人は動き出した。