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コレクション4

おくれました?

 影人の頭の中に、元春の声が響く。


『ああ、やっと繋がった』


「親父!?」


 どうしたんだ、と言葉を紡ごうとするが、元春の声に遮られる。


『家に帰るな!!死んでしまう。頼む。帰って来るな!!』


 それと共に、白いローブを着た何者かが家を襲っているヴィジョンが送られてきた。これに影人は驚愕する。元春の《能力》は、全力で集中してやっと声を届けることができる程度のものだ。なのに、映像を送ってきた。こんなことをできる《影納コレクション》は、家には1つしか無い。


「止めろ!!今すぐ、それを使うのを止めろ!!」


 それは、《制限解除(アウトリミッター)》。ありとあらゆるものの制限を外す《影納コレクション》だ。しかし、強い効果には代償がつきものだ、とでも言うように、これにはとんでもない副作用がある。肉体の制限を外せば、体が壊れ、使用制限を外せば物が壊れ、《能力》の制限を外せば寿命を縮め、脳の制限を外せば、神経が焼き切れていく。まるで、燃え尽きるかのように。


『どっちにしろ死ぬ。なら、お前を守るためにこの命を使うさ。影人。こいつらは、強い。だから、絶対に復讐なんて考えるな』


 それを聞いて、影人は悟った。元春は、死ぬ気だ、と。


『命を粗末にするなよ。………愛してるぞ、影人―――』


 それが、影人が最後に聞いた、寿命を削り、脳の神経を焼き、体を壊してまでして息子を守ろうとした男の声だった。




 学生特区 古びた平屋の前


 ブチブチと音を立てて、元春は白ローブ達の魔術を打ち破る。普通であれば、こんな事はできない。しかし、元春は《制限解除(アウトリミッター)》を持って、腕力のみで拘束魔術を打ち破ったのだ。


『なっ!?』


 リーダー格らしき白ローブが声を上げる。その瞬間には、2人の白ローブが倒れていた。


『くっ。殺せ!! 奴を殺せ!!』


 彼が恐怖でそう叫んだ瞬間には、3人。いずれも、頭に致命的な傷を負っている。

 数人が元春から離れようとした時には、1人。しかし、1人の犠牲により、元春の射程距離から人が消える。元春に、大量の魔術が降り注いだ。


「シッ」


 それを見た元春は、短く息を吐いて、魔術へと突っ込む。そして、白ローブは絶望の光景を見た。全ての魔術は避けられ、元春が彼らの密集地帯に入り込んだのだ。


 そして、蹂躪劇が始まった。


 リーダーが、声を張り上げて指示を出すも、元春の猛攻に対応できずどんどん被害が増えていく。


 ドッ。


 そんな音がして、白ローブ達が吹き飛んだ。そこから元春が現れる。彼は何事も無かったかのように、手に持った白ローブを投げ捨てた。人間鈍器によってかなりの数の白ローブが戦闘不能になったようだ。

 ゆら、ゆら、と幽鬼のように元春が足を踏み出す。《制限解除(アウトリミッター)》によって寿命は縮み、肉体はとっくに悲鳴をあげている。それでも、彼の気迫は、それだけで死ぬのではないかそう思わせるものだった。


『『うわああああああああああ!!』』


 濃密に感じる死の予感に多くの白ローブが魔術を乱射し始める。まるで、追い詰められて機関銃を乱射し始める死にキャラのように。彼らのたどった道は、その行動に相応しく、蹂躪や、殺戮といった言葉が似合う最後だった。もう、白ローブは半分も残っていない。

 そもそも、虎を素手で倒せるひと(影納景)と――能力なしとはいえ――互角に戦える人間に、彼らが勝てる訳がないのだ。


「殺す。全員、殺す」


『ひ………』


 誰、という訳でもなく、そんな声が盛れる。


 元春が一歩進む。


 それだけで、全員が一歩下がった。


 さらに元春が一歩進む。


 それだけで、全員が死を覚悟した。

 あと一歩進めば、彼らは恐怖のあまりショック死したかもしれない。しかし、元春は、もう二度と動かなかった。


『………し、死んでる……?』


 誰かのその言葉で、彼らは統制のとれた動きを取り戻した。


『急げ!長く居すぎた!!』


 その声で白ローブ達が仲間の死体、そして、元春の死体を片付け始めた。

 仲間の死体は、痕跡を消して、異空間のようなナニカに放り込んでいく。―――機械のように仕事をこなしているが、悲しそうな顔をしている。

 ボロボロになった元春の死体は、体を修復し、家の中に運び込んでいく。


 数十秒後、影納家は炎上した。


 白ローブの襲撃から、僅か5分の出来事だった。




 某所 『遺跡』のあった場所の近く


  空が、赤く染まった。


「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 影人は走り出そうとし、意識を刈り取られた。



 その日、ありえない(出火原因が解らない)火事が起きた、と、学生特区でニュースが報じられた。しかしそれも、新たなニュースに埋もれ、消えていく―――。

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