コレクション2
投稿方法が変わっててびっくりしました。無事投稿できた良かった………。
そう言って、影人は自分の影から大量の苦無と手裏剣を取り出した。これが、影人の《能力》――《影収納》――だ。しかし、この《能力》は一見便利に見えてかなり不便な《能力》である。《能力》の6段階評価で、最低ランクになる程度には。10立方センチメートル以下の物しか影に収納できない、という、大きすぎる欠点があるから。
二人の間に緊張感が漂う。その中で、先に動いたのは影人だった。小手調べとばかりに、手に持った手裏剣と苦無を様々な軌道を織り交ぜて投げる。もちろん、《ガーゴイル》は当たり前のようにそれら全てを避け、弾き、そのまま突っ込んできた。
ガキン。
また、爪と剣がぶつかる。
「05(ぜろご)!!」
影人がそう叫ぶと、剣がナイフに変化した。
影人が持っているこの剣、もう解っているだろうが、実は、剣ではないのだ。この武器―――いや、道具は、《万能道具》という《影納コレクション》だ。
《万能道具》。その効果は変形と、不壊。望むままに変形し、決して壊れない。ただ、それだけの道具が、影人の相棒だ。
ガキン。ガキン。ガキン。
爪と剣がぶつかる音が室内に響く。ガッギンと、ひときわ大きい音が響き、2人が弾かれて離れた。
『フハハ。強いではないか。小僧』
「そりゃどうも。母さんに武器の扱いは死ぬほど鍛えられたからな。ちょっとはできるという自信がある」
『そうか。小僧の母上は何処に?』
「死んだよ―――」
『そうか………。すまぬ』
少しの会話をし、2人は、また激突した。
ガキンガキン。
爪を弾いて斬りつける。
ガキンゴン。
攻撃を防御し殴りつける。
ギャリっゴッ。
拳を受け流し蹴りつける。
ゴッガキッ。
蹴られながら尻尾で殴りつける。
ぐるんガッギン。
体を倒して尻尾を避け、その勢いのまま蹴りつける。
『がっ―――。っ!?』
鉄板入りの靴で顔面を蹴られた《ガーゴイル》は、思わず声にならない声をあげる。動きが一瞬止まった《ガーゴイル》に、影人は追撃を入れようとする。が。
バサッ。
石像質の重そうな見た目に反し、《ガーゴイル》は飛び立った。そう。飛んだのだ。手の届かない場所に。
「え?飛べんの?うそー」
攻撃を空振りし、影人はそう言った。顔がとても渋くなっている。
『飛べる』
それだけ言って、《ガーゴイル》は羽根を縮め、開いた。ぼっ、と音がして、《ガーゴイル》の羽根が飛び出す。
「んなっ」
大量の羽根に、影人が驚きの声をあげる。しかし驚きつつも、しっかりと羽根をたたき落としていく。
「02(ぜろに)」
全ての羽根を叩き落とし、影人は《万能道具》を変形させる。その形は、弓。背中には、矢筒。その矢を手に取り、《ガーゴイル》に向けて放つ。
(変形が終わる前に降りてこい)
無くならない矢を射続けていると、千日手に焦れたのか、《ガーゴイル》が降りてくる。影人の頭に。もちろん、降りられたら死ぬ。しかし、これを読んでいた影人は冷静に《万能道具》を変形させた。
「16(いちろく)」
その形は、大剣。ただただ攻撃力を突き詰めた剣だ。その剣を振りかぶって、《ガーゴイル》に斬りつける。が、そんな事は《ガーゴイル》も読んでいる。急旋回でそれを避け、尻尾で影人を殴りつけた。が。
「解除!!」
影人は大剣を元の形に戻し、振りかぶった勢いのままそれを避けた。
『ぬう』
おまけとばかりに苦無と手裏剣をプレゼントして。
「13(いちさん)」
影人は起き上がって、《万能道具》を変形させる。その形は、槍斧。斬る、突く、2つの攻撃ができる武器だ。そのまま、影人は《ガーゴイル》に走り寄る。そして、《ガーゴイル》に斬りつけた。流石にこれを防ぐ訳にはいかないのか、《ガーゴイル》が一歩後退した。が。
ぐるり。
一回転して、また槍斧が《ガーゴイル》に襲いかかる。
『なっ』
予想外だったのか、《ガーゴイル》が驚きの声をあげる。
ぐるり、ぐるり。
柄。刃。槍。周りながら、様々な攻撃を繰り出していく。
(いける。勝てる)
影人がそう思った瞬間、槍斧が弾き上げられた。完全に死に体になった影人の胴に拳が叩き込まれた。ゴブっと音がして、影人の口から血が垂れる。胃が壊れたようだ。さらに追撃をくらって、影人は吹き飛ぶ。
「ぐっ、がっ。―――っ」
ごろごろと転がり、壁にぶつかって止まった。
「い゛っ!?」
呻く暇もなく、《ガーゴイル》の追撃を躱し、起き上がる。影人の体に、無茶な動きをした代償として、激痛が走った。その激痛に呻きそうになるのを堪え、《万能道具》に変形をオーダーする。
「18(いちはち)」
そして、そのままふらつく足で《ガーゴイル》へ走って行く。
《ガーゴイル》は、影人という挑戦者を迎えるかのようにどっしりと構えている。
剣を持った挑戦者が、射程距離に石像質の番人を捉えた。
ガン。ガン。ガギン。
怪我人とは思えない動きで、影人は攻撃を重ねていく。しかし、やはり先程のようなキレはない。僅か数撃で態勢を崩されてしまう。
ドッ。
そんな音がした。
『なんと。双剣だったか………』
そして、左足を斬られた《ガーゴイル》が倒れる。
「ゴボッ」
そんな音を出して血を吐き、影人も倒れた。
影人の十八番、おはこは、双剣だ。今回は、だまし討ちという不本意な使い方をしたが、一番得意な武器である。だまし討ち、というのは、こういう事だ。
重ねると1本に見える双剣で上段切りをし、それを受け流させる。その瞬間、添えていただけの左手で片方の剣を使い、左足を斬った。それだけだ。簡単そうにやっているが、しかし、それにどれだけ高度な技術と読み合いがあったのかは、常人には想像もつかない。それを知るのは、影人と、それをくらった《ガーゴイル》のみだ。