コレクション12
いつもの事になってしまっていますが、おまたせしました。更新です。遅くてすいません。はぁ。(遅い自分へのため息)
純度100%の『なんかいけすかない』で始めた喧嘩は、氷竜の勝利で終わった。地団駄を踏んで悔しがる影人に、氷竜は見下すような目を向ける。
「残念でしたね(笑)」
「んぎいいいいいい!!」
別に、氷竜と影人はお互いを憎んでいる訳ではない。(どちらかと言えば嫌いだが)ただなんとなく、『コイツに負けるのは恥』で、『見ているとなんか腹が立つ』だけなのだ。きっと、同族嫌悪に似た何かなのであろう。しかし、はたから見れば、水と油のような関係だ。
「ホント、バカ」
負けた悔しさでのたうち回る影人の脇に、美琴がドスっと手刀を刺し込む。影人の動きが止まった。
「死んだ……………」
「いや死んだらダメでしょ!?」
解かりにくい翼のボケに、探がすかさずツッコみ、そして影人の心臓に手を当て……………。
「し、死んでる!!」
「だ、だれがしぬかぁ……………」
今度はぷるぷると震えた声で影人がツッコんだ。相当に痛かったのだろう。これには氷竜達も優しい目を向ける。
「う~ん、しるふぅ〜」
と、影人がこの場にいない人物の名前を呼んだ。魔術師達の頭に【?】が浮かぶが、その疑問は一瞬で消える。
「はーい、こんにちは!!みんなの解説役、シルフちゃんです!!おや、知らない方もいるみたいですね。では、改めて自己紹介させて頂きましょう!!」
小さな妖精の少女が現れたからだ。コホンと咳ばらいをして、少女は続ける。
「私は、精霊種妖精属、ついでに不老のシルフです。気軽にシルフちゃんって呼んでネ!!影納コレクションの解説役兼回収役です!!」
情報が洪水を起こして玉突き事故を起こした。
「おいお前、もぉ少し説明あってもいぃんじゃねぇか?」
風斗がペシペシと影人の頭を叩く。それを見た雷命も、面白半分でペシペシに混ざる。
「そうよぉ、ねぇ、影人クン、もっと私達に詳しく教えてくれないかなぁ?」
「教えてくれないとくすぐっちゃうよ」
さらに森中も混ざった事により、影人は身の危険を感じ、
「説明するから辞めて!?」
飛び起きた。が、痛いものは痛い。ふぎぃ、と、蛙の潰れたような声を出して座り込んだ。
「大丈夫?」
美琴がそう尋ねるが、影人は首を振る。
「訊くぐらいだったらやるなよぉ………」
「ごめーんねw」
文末に付いた【w】を無視して、影人はシルフにハンドサインを送った。1から詳しく説明しろ、と。コクリと頷いて、(しゃがんでいる2人を除いた)8人の間を縫うように、妖精が飛び回る。そんな珍しく、美しい光景に、全員が目を奪われる。そして、
「そこの御主人サマは物理性脇腹痛に襲われて使い物にならないんで「誰が使い物にいだだだだだ」、なってないじゃないですか。私が代わりに質問に答えますよー!!」
自分の主人を白い目で睨む、というかなりの無礼をはたらき、妖精の少女はハイテンションに言った。
「じゃあ、はーい!!」
森中が手を上げる。
「はい、そこの女の子」
「精霊種って言ってたけれど、精霊って不老じゃいないと思いまーす!!」
IQが下がったような森中の声に、魔術師達は苦笑する。ちょっとおバカな生徒のロールプレイのような何かをしているのだろう。彼女はノリがいいのだ。
「創一様と一緒に潜った遺跡で呪いを受けましたー!!だから解説役やってまーす。次の質問どうぞー」
「はい、シルフ先生!!」
「おお~、礼儀正しい子は嫌いじゃないよー。はい、そこの男の子!!」
探を指差し、シルフはパタパタと羽を振るわせる。普通にかわいい。
「影人君が御主人ってどういう事?」
「それはですねー…………」
シルフは影人にアイコンタクトを送る。影人が頷く。
「元春サマ、前御主人サマが亡くなったからですね……………。年齢的に、影人サマが御主人サマとなったのです!!」
一瞬だけ、少し悲しそうな表情を見せ、シルフは言う。不老故の、そして死ぬことを許されない身だからこその、永遠に続く悲しみ。その端切れを感じ、探は沈黙する。親しい人を亡くす苦しみは、あの時の影人を見るだけで容易に想像出来る。(気を許した人間の前を除き)感情のコントロールが上手い影人があそこまで我を失ったのだ。戻ってこれたのが、奇跡のような出来事だった。
「はーい、回収役って?」
そんな重苦しい空気を切るように、美琴が手を挙げ、気の抜けた声を出した。空気が緩んだのを見て、美琴は口角を少し上げる。重い空気が好きな人間なんていない、重いよりは軽く楽しい空気がいい。そんなことを思いながら、美琴はシルフに意識を集中する。
「遺跡内で亡くなった方、というか、脱落した方からコレクションを1つ頂いて、遺跡の前に戻しています」
「ん?コンテニュー?」
「はい。極論、コレクション1つ没収されるだけで死にはしません。でも、その遺跡はもう認識出来なくなります」
並の疑問に答え、シルフはキラッ、と指先を光らせる。その後も質問は続き、ゆっくりと日は落ちていった。
影人君は感情のコントロールが上手いっていうより、大体どんなテンションでも冷静な思考が出来るっていうだけ。だから友人の前では本音で叫ぶ。
でも流石に父親が殺されたのは感情が爆発した。




