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コレクション11

はい。申し訳ありませんでした。くっそ時間が空きました。間違って私の作品を待っていた方に、最大限の謝罪をさせて頂きます。

さて、私は他にも作品を投稿しているわけですが、ちょっと多くなってしまい、こちらの作品の投稿頻度をこれまで以上に下げようと考えております。もし、間違ってそれでも待つよ、なんて奇特な方がいらっしゃったら、大変申し訳無いです。

本当に申し訳ありませんでした。

 誰かも解らない人間が家に入り込み、食事を用意している。そんな恐怖を味わった事があるだろうか?氷竜達は、そんな味わいたくない恐怖を、しっかりと、くっきりと、はっきりと、味わってしまった。


「ちょっ、ちょっと待たない!?」


 そんな恐怖体験を前に、氷竜達は、とりあえず武器を構えることにした。これには、流石の不審者(かげと)も両手を上げる。降参の構えだ。


「両手を上げたまま膝をついて」


 大人しく従う。というか、従わないと死ぬ。


「何をしにここへ?」


「ちょっと雇ってもらいに――すいません冗談です本当は貴方達と話したくてきました」


 こんな状況でもユーモアを忘れない阿呆は、突きつけられる武器に、謝った。冗談は言っていい場所と悪い場所がある。


「それを信じられるとでも?」


「残念なことに、真実です。私の命を賭ろと言われようが、真実です」


 真面目な表情で阿呆なことをいう影人(バカ)に、氷竜は呆れる。


「は、はぁ。その話したかった、とは?」


「うーん、なんでしょうね。なんとなく、話しを聞いて思ったんです。能力者の街を、魔術師が良くするために行動するか、って。つまり、知りたいなって知的好奇心です」


「ねえぇ、コイツ、絞めてもぉ?」


「ちょっと待ちません?」


 バチバチと放電して、戦闘モードに入る雷命に、影人はよそ行きスマイルで、まぁまぁとゼスチャーする。流石に死にたくは無い。


「殺したら死体処理とかが面倒だから、ダメでしょう、流石に」


「そぉだなぁ。面倒い」


 雷命の言葉を否定する、風斗と流水の言葉に、影人はほっと胸を撫で下ろす。しかし、


「記憶消して帰そうぜ?」


 流石に、影人もこれは無視出来ない。逃げ出すため、体に力を―――


「オラァ、バ影人!!なぁに人様に迷惑かけてんのよ!!さっさと帰りなさい!!」


 扉が開いて美琴が入ってきた。探、翼、並も一緒だ。


「なんでここに!?」


 体に貯めた力を逃せず、思いっきりコケて頭を打った影人は、皆に白い目で見られながらも純粋な疑問を叫ぶ。


「影人君、学校サボって県外で泥棒なんて、全くもって見損なったよ」


「違うよ!?話したくて来たんだよ!?」


「信じられないです」


「本当だって!!信じてくれよ並ぃ~!!」


 コミカルな会話を繰り広げる影人達を見た氷竜は、


「あっはははっ。あ、貴方達、こんな状況で、そ、そんな、ふふっ、そんな会話あっははは」


 笑った。腹を抱えて笑う氷竜につられて、魔術師達も笑ってしまう。そして、笑いの発作が治まった氷竜は涙を拭いながら言った。


「解りました。話しぐらいは聞いてあげますよ」


 その言葉に、影人は顔を輝かせる。


「ありがとうございます!!」


 飛び上がりそうな勢いで、影人は魔術師達に近づく。


「で、では、まままずはどうして―――」


「落ち着け」


 ポンッと置かれた翼の手に、影人の動きが止まる。別に、翼の力が強いとかそういうわけではない。美琴のビリビリがトラウマになっているから、反射で電撃ビリビリに備え、体が硬直してしまうのだ。


「すまん翼。落ち着いた」


 ほっと一息ついて、影人は話を続ける。


「訊きたいのは1つです。何故、市長を無理矢理働かせるなんて、得にならない(・・・・・・)事をやっているんですか?」


 影人がその言葉を放つと、魔術師達は解りやすく目を大きくした。


「何故、ここを支配するため、などという思考にならなかったのですか?」


「あ、そういう見方もあるか。気付かなかったわ。最初から、皆に慕われるっぽいって考えてましたし」


 ポンッと手を打って影人は言う。その言葉に驚いたのは、影人以外の全員だ。しばしの沈黙の後、氷竜が口を開く。


「まさか。我々と能力者は、犬猿の仲ですよ?」


「すごく生活がよくなった、だそうです」


 様々なことが、国から県、県から市に委託されて、市長の仕事は爆発的に増えた。そのせいで、生活が悪くなる市が多いのが現状だ。それを立て直した英雄。だからこそ――、


「慕われてますね」


 はあああああああああ、と、氷竜は大きなため息をついて仲間達に質問する。


「言ってもいいかな?」



 全員が頷いたのを確認し、氷竜は続ける。


「市長を働かせたら、お金が住処―――ここを提供してくれるという契約羊皮紙が送られてきました。差出人は、知りません」


 影人は、契約羊皮紙とは、きっと魔術的な効果があるものなのだろうと理解し、差出人についてを少し思考する。しかし、そこまで契約羊皮紙を使え、住処を用意するような人間は多くいないという事しか解らないと悟り、根本的な疑問についてを質問した。


「なんで、【第零試験特区】に行かなかったんです?あそこは、入学時にいい成績であれば、三食保証されるだとかなんとかって聞きましたけど………」


「はい?」


 その言葉を聞いて、魔術師達は思わず変な声を出した。それもそうだろう。こんな仕事をしなくても、住処を保証されるのだから。

 間接的に、【第零試験特区】へと行かないか?という質問をした影人は、じっと氷竜を見つめる。その視線の意図を察した氷竜は、重い唇を持ち上げた。


「……………少なくとも、私はこの生活で満足しています。ですが―――」


 氷竜はチラリと後ろを見て、続けた。


「これ以上の生活を望めるなら―――、我々のため、場所を教えて頂けないでしょうか?」


「ここです」


 影人は地図を差し出す。今どき珍しい紙媒体だ。


「ありがとうございます。ところで、1つ質問していいですか?」


「はい?」


 にっこりと、爽やかな笑顔で、氷竜は言った。


掌の上で踊ら(あなた)されてるみたいで癪(がきらい)なんで、1発殴らせて下さい」


「よし喧嘩だな買ったぁ!!最初見た時からてめぇは嫌いだったわ、あ゛あ゛ん゛!?」


 喧嘩が始まった。

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