コレクション10
1か月…………。申し訳ありませんでした。
電車から降りると、影人はまず人を探した。魔術師の居場所を聞き込みで調べるためだ。パソコン室を(無断で)借りて、魔術師の居場所を調べてもみたのだが、やはり見つからなかったのだ。
「あ、すいませ~ん、ちょっと知りたい事があるんですが~」
とりあえず目についた人に声を掛けていく影人は、もはや不審者だ。この辺りでは見ない制服を着た少年が、自分達の生活を向上させた人達を探しまわっている。明らかに怪しい。そんな第一印象で、質問に答えてくれる者が居るわけないのだが、影人は気づかない。阿呆なのだ。
『急いでるんで』『なんで答えないといけないんですか?』『答えるとでも?』
敵意しか感じられない回答だけが返ってくる。そんな言葉で影人は、
「むうう、子供に訊けばいいか?」
めげなかった。傷付きすらしていない。むしろ、燃えている。阿呆だ。ドMだ。
解決策を考えて、影人はそれを実行に移す。と言っても、何も考えていないに等しい適当な考えだが。
「ねぇキミ。今、魔術師がこの街で頑張ってるって聞いたんだけど、合ってる?」
「はい。そうですが、どうかしましたか?」
うわぁ賢そうな子供だ、と思いながらも、影人は続けた。
「実は、その魔術師さんに合いたいんだ。何処に居るか、知ってる?」
「なぜ、それを知りたいんですか?」
その言葉に、少年が怪訝そうな顔をする。影人は、完全に地雷踏んだなぁと遠い目になりながらも続ける。可能性があるなら、逃げてはいけないのだ。
「実は、なんでその人達が市長の脅迫なんてやってるのか、教えて欲しくて。ちょっと気になったから来たんだ」
「嘘みたいなのに、嘘じゃないんですね」
「へ?」
影人は変な声を漏らした。
「僕、嘘が解る能力を持っているんです」
「あ、ああ………そゆことね」
気を取り直して、影人は少年に尋ねる。
「魔術師さん達の居場所は何処か、知ってる?」
その言葉に、少年はコクリと頷いた。影人の顔が明るくなる。少年に魔術師が泊まっている場所を教えて貰い、影人はそこへ向かった。
O県 魔術師の住むアパート
少年に教えて貰った部屋の場所へ行き、影人は扉を開こうとした。
金属音。
影人は懲りずにドアノブを引っ張る。
金属音。
当たり前だが、開かない。
「困ったな」
影人は頭をかく。そして言った。
「ピッキングするしかないか」
そうして、堂々と犯罪行為を行い、影人は魔術師の家に入った。
O県 某所
市長が働くように見張る。それが彼らが受けた依頼だ。そのために、衣食住を保証して貰える。最高な条件である。
「ノルマは終わりましたね?」
ピシッとした印象を受ける、手袋を着けた少年――火嵐氷流――が市長に尋ねる。
「お、終わった!!終わったから、早く寝させてくれ!!」
絶叫する市長に、色素の薄い、年齢に似合わぬワガママボディの少女が言う。
「よーし。じゃぁ〜、この調子で全部終わらせるんだゾ♡」
可愛く、しかし、有無を言わさぬ迫力で、彼女――鳴神雷命――は言う。
「雷命ぇ、その喋りかた、キメェから辞めろよなぁ?」
彼女に、刺々しい雰囲気の少年――五十嵐風斗――が心底嫌そうな顔で言った。
「まぁまぁ。風斗君、雷命さんも巫山戯てるだけだから」
そう言って場を収めるのは、儚げな雰囲気の、青い瞳を持った美少年だ。
「でも、3日間も徹夜させてるんだし、寝かさないと死んじゃうよ?いや、3時間は寝てるか」
3日間で3時間しか寝ていない、暗にそう言ったのは、清楚なイメージの女性――木隠森中――(実際は19歳の未成年)だ。
「うーん、確かに、それもそうか。だったら、そういう術式の結界を張るのがいいかな?どう思う、みんな」
結局、仕事を終えないと出られない結界を張った部屋に市長を放置し、氷竜達は家に帰ることにした。ちゃんと、【市長を働かせる】という仕事は果たしている。まぁ、働かなかった方が悪いから、全て市長の自業自得だ。
O県 某所 氷竜の住むアパートの前
氷竜達は家に帰って、入口のドアを開こうとする。その時、風斗が言った。
「――誰かが、先に入ってるなぁ」
その言葉には、強い怒りが込められていた。当たり前だ。自分達の、大切な住処が荒らされたのだ。全員が臨戦態勢で扉を開けると、
「あ、すいません、お邪魔して。代わりと言ってはなんですが、魔術に関わらなそうなものは掃除して、夕食も作っておきました。冷凍可能ですよ?」
主夫のような誰かがいた。




