誘い【3】
人類のために獣を狩ってたり仕事疲れで即寝したりで手が着いてなかった……
そんな話があってから数日が経った土曜日、家で一人で夜食を食べてると少し早めに兄さんが帰ってきた。
「ただいまー。園歌ーいるかー?」
「…兄さんおかえり、今ご飯食べてたところだけど……その手に持ってる袋って…。」
「あぁこれな。ほれ、例のVRゲーム機器と【ファンタジア・ネクサス】のソフトコード。」
──昨今のゲームは機器にソフトをダウンロードするのが主流になっている。昔はソフトはソフトで形があったのだが紛失したりそれだけが盗まれたりと色々あったみたいだ。今はそもそもVR機器初起動時に行われる身体データの承認で持ち主確認が行われる他、家とネットワークを繋げておくと持ち主が解除した時以外は距離が離れた瞬間警察へと通報されるようになっているため安全だ。──
「…別に言われたら自分がそっちに取りに行ったのに…」
「いや、これ渡されたの俺が会社出る頃だからな?そこから電話で連絡してお前が来るよりもこうやって渡した方が早いだろ?」
「それなら仕方ないか。そうそう、晩御飯は親子丼にしたから。」
そんな事を話してたら一人の女性が玄関を思いっきり開けて飛び込んでくる。
「親子丼やったーーーーーーー!!!!!!!園歌ちゃんありがとーーーーー!!!!!!」
「……姉さん、ご飯中なんだから静かにして、あと抱きつこうとしないで。」
──この女性は天波紗枝、兄の経営してる会社で事務を担当している私の姉なのだが、何かを理由に私に対して世話を焼いたり抱きついてこようとする上に、スタイルがとても良く割と強く抱かれて抜け出しづらかったりするせいで最近は前もって避けている。あと歳の割に言動が少し子供っぽいのはどうかと思う。
「むぅー、いいじゃん別にー。じゃあ荷物置いてくるから私の分盛っといてー。」
「自分でしろよ……。はぁ、ったくしゃあねぇなぁ。」
そう言いつつ兄さんは荷物を自席の横に置いた後、まず姉さんの分の丼を盛って席に置き、次に自分の分を盛って席について食べ始めていた。
「…で、兄さん。私はいつそのゲームすればいいのかって聞いてる?」
「あぁそれなんだがな、好きな時に好きなだけしてくれ、って言われた。ストーリークエストも園歌のアカウント専用で発生できる設定を追加したみたいだし、その辺はちゃんとしてくれたらしい。」
「そうなんだ、ならこの後の片付け終わったらやるかな。やるなら早い方がいいだろうし。」
「それから伝言でな、アプデ前にしてくれても大丈夫だけどその場合一般ユーザー側からしたらマップ未開放状態だから周りに人はいないから動きに慣れてね、だとさ。」
そっか、他の人たちからしたら私のいる場所は本来行けないんだからそうなるよね。最初は人目気にせずにいたかったからそれはありがたい。
「分かった、ありがと。」
そう言って自分も再び晩御飯を食べ始める。ゲームのことをある程度考えながら……。
1話の長さがどのくらいがいいのかが分からず、短いと思いますが次からもう少し長くしようと思います。