誘い【1】
初投稿になりますが、マイペースにやっていくのでよろしくお願いします。
1人で帰っている学校の帰り道、マナーモードを切っていたスマホに電話が入った。
「……なんですか兄さん…。今仕事してるんじゃないんですか?」
「いやまぁそうなんだが、仕事の話でな。園歌、この前テストしてくれって渡してプレイして貰ったVRMMOのゲーム覚えてるか?」
──私の名前は天波園歌、今年高校に通い始めたばかりの女子高生だ。
電話の相手は天波蒼弥、亡き父親が創業したゲーム会社の社長であり、私の兄でもある。──
「…そりゃ覚えてるよ、あれがどうしたの。」
「あれが他会社との共同作ってのは言ったよな、その相手会社の人が今来てるんだけど……またちょっと協力してくれないかって言われてな…あはは……」
「…なんでそんな面倒くさそうなことに私巻き込もうとしてるんですか。兄さんも姉さんも基本家にいないから家事全般学生の私がしてるのに課題の時間まで取られたらこっちが困るんですけど。」
『ファンタジア・ネクサス』。それが今協力を頼まれているゲーム。
一昔前に流行ったVRMMOゲーム物のアニメを皮切りにそっち方向の技術開発が進んでいき、今やゲームとなれば基本VRになるほどのヒットジャンルとなっている。
今は沢山のVRゲームが出たことにより話題性は落ち着いてはいるがそれでも新作が出るとなると予約注文ですら秒単位の争いになる程と言われている。そんな物を私は「協力する」と答えるだけで貰えるのだ、例え家事で忙しいとはいえ学校でも周りが散々ハマっているジャンル、気にならないわけが無い。
なら何が困るのか、それは私が「家事全般任されている高校生」という所だ。そう、単純にゲームに割く時間が取れないのだ。
「…とりあえずその相手会社の人と代わってもらえる?兄さん挟んで話すよりそっちの方が早いでしょ。」
「あぁそうだな、ちょっと待ってろ…」
そう言ってスマホから声が遠くなり、相手の人と何か話してるのが微かに聞こえる状態が少しだけ続いた後、「良いみたいだから代わるぞ」と言われて返事をして待っていると、
「すみません、電話代わりました、河内と申します。本日はすいませんこんな時間に。」
…女性の人だった。こういう事って男の人がしてる印象強かったんだけど。
「こちらこそ我儘で代わってもらってすみません、そこにいる社長の妹の園歌です。」
「はい、たまに話してますよ、こんな大切な時期に忙しくさせて悪く思ってる、と。」
兄さんが「ちょっと河内さん!?」と戸惑っているのがスマホから聞こえるがそう思ってるならせめて何か一つくらい家事をしてくれ、と私は思う。
「……で、話を戻しますけど、協力の条件とか何をしたらいいか、とかの詳しい内容を教えてもらえますか?」
「あぁすみません、協力してほしいことは『次の大型アプデで実装予定の仕様の担当』をしてほしい、と思ってまして…」
「………はい?」