ほのぼのしたいのです。うしさん編
第二回です。
要望があったので、今回はうしさんについて語ってみます。
アレルギーがあると申告した私。
鼻も良い……と、いいますか、自分にとって危険なかほりには、敏感だと自負しています。
苦手なかほりの中には、香水などの人工的なかほりや、鶏糞牛糞などの出し物的なかほりもあります。
ドナドナされていくにわとりさん、ぶたさん、うしさんを乗せた車とすれ違うと、キツい臭いにうぐっ……。となります。
さてさて、こちらはにおいについてのエッセイではないのです。
ではなぜ、においについて少しばかり語ったのかといいますと……。
私、昔に牛舎の敷地で仕事をしたことがありまして。
牛舎といったら当然、うしさんがたくさんいます。
動物をたくさん飼っているところは、自己主張の強いかほりがするものです。
にわとりさんが一番キツいと私は思うのですが。
うしさんも、普段から世話してくれている飼育員の方と、見知らぬ何者かを見分けることはできるようです。
人間が近づくと、うしさんも寄ってくるのですが……。
見知らぬ何者かの私が牛舎に近づくと、じっと、見つめてくるのですよね。
次第に、たくさんのうしさんが、牛舎の柵まで詰めかけて、みんなで私のことを見るのです。
じっと見つめてくるうしさん。
1頭2頭と牛舎の柵まで寄ってくる他のうしさんたち。
ここで私、勘違いをします。
うしさんは、私に興味津々なんだな。
こんなにうしさんに見られているなら、私は人気者なのだろうか?
これならきっと、触れるだろう。と。
浅はかですね。
私、知っていたんです。ちゃんと。
不安や緊張は、赤ちゃんと動物にはしっかりと伝わるということを。
けれど、この時は、頭になかったのですね。
うしさんといえば、体は大きいですよね。
そのうしさんを前にすると、普通にびびるのです。
闘牛の、血走ったぎょろりとした目を見たことはありますか?
乳牛なうしさんは、そんな恐ろしげな目をしていたわけではないですが、大きいと、普通にびびるのです。
でも、刺激しないようにそっと触れば大丈夫だろうと、妙な確信がありました。
なぜなら私は人気者。ほら、今も注目の的だから!
……浅はかですね。
では、そんな寒い確信と共に、ドキドキしながら手を伸ばした結果は?
……うしさん、頭を引っ込めました。
な、なら、別のうしさんは……?
…………別のうしさん、柵から離れて、牛舎の奥へ戻っていきました……。
……おうふ。
その時の話は、ここでおしまいです。
でも、しばらく後に、別の牛舎の敷地で仕事をする機会がありました。
今度の牛舎は一棟だけなのに、前回よりもたくさんのうしさんの注目の的。
今度はきっと撫でることができる!
妙な確信がありました。
………………浅はかですね。
そもそもうしさんは、部外者に触られる趣味などなかったようです。
でも、(きっと)お情けで、鼻の頭をちょいちょいと触らせてはくれました。
けれど、次の瞬間。
まるで、やっぱり無ー理ーっ! とでもいいたげに、頭を振り上げて柵から離れ、牛舎の奥へと去っていきました。
しばし、呆然…………。
やはり私は、『動物から嫌われる』体質なのでしょう…………。くすん。
今になって思うと、うしさんは見知らぬ私に興味津々だったのではなく、飼い主や飼育員な人とは違う何者かを、敵かどうか、危険かどうかを、汚れなき眼で見定めるために、勢揃いしていたのでしょう。
……たんに、暇だからこっち見てみただけというかもですが。
……野次馬ならぬ、野次牛かっ!
…………泣いてもいいですか?
たぬきさんやきつねさんのことも書けるかもしれないのです。
カモシカさんやヘビさんはどうでしょう? 書けるかな?