第84節 暗い世界で一人 支えを求め揺蕩う者
わたしは、こんなにも嫌っていた暗闇の中でも、彷徨い続けることをやめていなかった。
やめたくてもやめ方が分からない。
わたしが何を考え、どう思おうと、わたしは彷徨うことをやめようとしない。
――どうか、生きてくださいましね――
土牢の中で聞いたあの言葉。
知らず知らずのうちにわたしの心を支えてくれていたあの声。
はじめはくーちゃんの声だと思っていた。
くーちゃんがわたしを励ましてくれた。
くーちゃんが傍にいてくれる。
くーちゃんの声だと思えばこそ、わたしの支えになっていた。
だけど違った。
今なら分かる。
あれはおひい様の声。
おひい様が牢に繋がれたわたしを憐れんでかけてくれた声。
優しい女。
強い女。
わたしが想い描いた理想のおひい様そのものだった。
あの女のことは好きだ。
あの女のことは尊敬している。
たとえあれが彼女の声だったとしても、わたしを支えてくれたことに変わりはない。
(でも……。)
でも、そのおひい様もわたしの味方にはなってくれなかった。
あの時、トラひげの暴威が自分に向くのを怖れたのか、あの女は目を合わせてはくれなかった。
手を差し伸べてはくれなかった。
それが分かってしまった時、わたしの支えは失われた。
独りで立つ力を得ることも叶わないまま、支えだけが取り払われた。
わたしはもう立つこともできない。




