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【完結済/手直しするの止めました】神殺しの皇女  作者: 埼山一
第九章 クニを盗ル(二)
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第82節 暗い世界で一人 ヒカリを求め揺蕩う者

 どこからかわたしを呼ぶ声がした。


(……気のせいかな。)


 振り向こうとしてもそんなわたしの思いと裏腹に、わたしはどこへ向かうともなくゆらゆらと彷徨っていた。


(あれ?ここ、どこ……。)


 ここがどこか分からない。

 辺りには見える物のない一面の暗闇が広がっている。

 何故わたしはこんなところにいるのだろう。


(確か、わたしはさっきまで――なんだろう……。)


 何をしていたのかも分からない。

 何もかも思い出せることがないまま、夜とも暗がりとも違う日も月も星明かりの一つさえ見えない得体の知れぬ真暗闇の中、わたしは何かを求めているかのようにふらふらと進み続けていた。


(ああ、暗い……。)


 小さいころから暗いのが苦手だった。

 ずっと我慢してきて、いつのころからか慣れてしまった。

 いや、違う。


(慣れたふりをするのが上手くなっていったんだ。)


 暗いのは怖い。

 怖いのは嫌い。

 そう。

 怖くなくなったのではなく、怖くないふりをしていただけ。

 暗くて怖い闇の世界。

 怖さにも二通りの怖さがあった。

 それは冷たい暗さと温い暗さ。

 冷たい暗さに覆われると、体が引き裂かれるような恐怖に襲われる。

 温い暗さに吞み込まれると、そのまま溶けてなくなってしまう気がした。


(あの時だって……。)


 そう、くーちゃんと初めて会ったあの日。

 わずかな月明かりしか頼るもののない暗くて湿った気味の悪い森。

 冷たくて温い闇の森。

 気丈に振る舞ってみても本当は泣き出したかった。

 迫りくる絶望感に任せて、その場で歩みを止めて何もかも放り出して泣きわめきたかった。


(暗い……。怖い……。)


 それでも泣き出さずにいられたのは、あの娘が傍にいてくれたから。

 あの娘が、くーちゃんがいてくれたからわたしは頑張れた。

 当てもなく森の中を彷徨い歩いて、二人とも疲れ切って握り合う手も冷たくなっていたけど、それでもあの娘と一緒だと思えば、心の内にある温かいものを失くさずに済んだ。

 くーちゃんは、いつだったかわたしのことをヒカリであるかのように言ってくれたことがあるけど、本当は彼女こそがヒカリだった。

 くーちゃんはヒカリ。

 初めて逢ったその時からわたしを照らしてくれたヒカリ。

 絶対に失いたくないヒカリ。

 くーちゃんがいればわたしは頑張れたし、くーちゃんのためならどんな苦労も厭わない。


(でも……。)


 でも、失くしてしまった。

 もう手の届かない所へ行ってしまった。

 もう会うことはできない。

 どれだけ願っても、どれだけ望んでも、その想いが叶うことはもうなくなってしまった。


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