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【完結済/手直しするの止めました】神殺しの皇女  作者: 埼山一
第八章 クニを盗ル(一)
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第66節 ひいちゃんの悩み事

 酒の詰め替え容器を探すわたしの目に止まったのは、まずまずの大きさの甕だった。


「うーん……。」


 手元に引き寄せたその甕を眺めて、わたしは渋い顔をする。

 見た感じにも真っ新なその甕は、中を覗いてみるとわずかな水が張ってあるだけだ。


(手ごろには違いないけれど、これを使うのはさすがにダメと言うか……。)


 そうは思っても、ここにはこれ以外の器はないのだから迷うこともないのだが、新品同様と分かっているそれに見入っては、どうにも気後れするものを感じずにはいられない。


(取り替えてもらったばかりだし……。)


 使ってもいないから大丈夫だとは思うのだけれど、いくらなんでもこれを使うのは……。


(やっぱりダメだよね。)


 そう考えながらも、気持ちは少しずつこれを使う方へと傾いてゆくその一方で、不安やら申し訳なさやら嫌悪感、羞恥心、可笑しみやらといった雑念が、これを使うのはよせとわたしに翻意を迫る。


(大事なのは役目をきちんと果たすことなんだけど……。)


 だから、竹筒よりも甕に入っている酒の方が自然で怪しまれずに済む。

 それは間違いのないことだと思われた。


(でも、これはさすがになあ……。)


 こうして悩むほどに時間は失われてゆく。

 いまさらそんな悠長に構えている暇はない。万一タケハヤの合図を見逃せばすべてが水の泡になってしまう。


(ああもう。とりあえず移し替えてから考えよう。)


 どうにも決心がつかないことに自棄を起こしたわたしは、もうどうとでもなれとばかりに、竹筒の栓をキキュッと抜き、移し替える前に何となしに鼻を近づけてみた。


「うわ……。」


 鼻を強烈に突き抜ける酒精の香りにわたしは顔をたまらずに歪めると、慌てて竹筒を自分から離して栓をし直した。

 すこしばかり嗅いだだけでも頭がくらくらとして目が回る。

 わたしは体に入った酒精の香りを少しでも外に出したくて、けほけほと口から息を吐き出した。

 こんなものをそのまま飲ませたらひっくり返るどころではない。死んでしまうのではないか。


(あのバカ……。)


 わたしは、いよいよわたしの中でその評価が地に落ちたタケハヤに遠慮なく毒づいて考えた。

 こんなものを()のままで人様に振る舞えるわけがない。何かで埋めなくては。


 それにしても、はっきり分からない合図から始まって、器に酒にと――何でこう、差し迫った時になって解消すべき問題が頻出するのか。

 わたしはケガで身動きが取れないのだから、そのぐらいのことは気を使って、前もって解決しておいてほしい。

 わたしはタケハヤへの不満を胸に抱え込みながら、仕方なく動き出した。


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