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【完結済/手直しするの止めました】神殺しの皇女  作者: 埼山一
第七章 終焉の到来
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第58節 下手な休題

「こんなところかの。」


 打ち合わせを終えたタケハヤが視線を外してそう言って一息ついた。


「最後に一つだけ聞かせて。」


 彼が無言ながらもこちらに向き直ったのを肯定と捉えてわたしは続けた。


「あんた何者なの。」


 ここまで協力するからには隠し事はなしにして欲しい。そう思い切って真正面から切り込んでみる。

 豪華に過ぎる贈り物の件や、その贈り物を運ぶのに使ったウマの件、つい先日見せた好戦的な態度と、そして何よりこのクニを平らげるなどという野心と、わたしの父さま、ヨシノ大王が遣わした者ではないのは、まず間違いなさそうだった。

 しかし、騙り者と決めつけるには、いつかのわたしと境遇の重なる娘と家族の話や、言葉の端々に滲むこちらの事情を知っている様な素振り。

 結局どちらとも結論を出しきれないまま、ここまで来てしまった。


「……。」


 ふうと一つ鼻で息を吐いて、どう答えたものか思案している様子のタケハヤに、はぐらかすのではなく、何かしらの回答をくれる気はあるらしいことが窺い知れたわたしは、根気強く彼の答えを待つ。


「確かに言うべきかもしれんが……。」


 独り言ちる彼の態度はどこか落ち着きがない様子で、しかも彼は一向にわたしの方を見ようとしない。


「……。」


 時折、彼は意を決したようにわたしに目線を合わせようとするが、耐えきれないのかすぐに視線を余所へと向けることを何度か繰り返し、そして目も口もきつく閉じて熟考する様子を見せたかと思うと、ついにわたしと目を合わせないままに言った。


「ああ、ところでな。……そなた、寒くはないのか。」


 どういうわけか、彼は突然の気遣いを見せると、またすぐに視線を外してしまう。

 答えにくい事なのかも知れないが、話題の逸らし方としてはあまりに下手すぎる。


(別に寒くはないわ。)


 ここに至っても真摯な態度を見せないタケハヤにいささか機嫌を損ねながらも、言われたことについて思いを巡らせてみる。

 たしかに、このところ夜の冷え込みが厳しくなっているが、別に寒くはない。

 傷がうずいて、自分がまっすぐ座れているかすら分からないほどに熱いぐらいなのだ。


「お気遣いなく。」


 私は不機嫌さを露骨にした視線をタケハヤに向ける。すると、彼はチラとわたしの体に視線を向けたかと思うと、またすぐにそっぽを向いてしまう。

 彼の行動を不審に思った彼が一瞬だけ見せた視線の先に何かあるのかと視線を落とす。


「ひぁっ!」


 視界に入ったものに驚いて思わず言葉が詰まる。

 そこには一糸まとわぬ自分の上体があった。

 肩もへそも乳房も露になったあられもない姿の自分が目に入って、裂けるような痛みが背中に走るのも構わずに慌てて両の腕で隠す。


(な……ど、どうして?)


 記憶をさかのぼって自分の身に何が起こったのかを思い返してみる。


(そう言えば……。)


 傷の手当てを受けた後、脱がされていた衣と毛皮をタエさんに被せてもらったが、被せただけで袖を通すようなことはなかった……。

 そのことを忘れたまま体を起こしたせいで両方ともずり落ちてしまったのだ。


(ああああああ……。)


 今更ながらにそのことを思い出して、両方の耳の縁がくまなく熱を帯びてゆくのを感じる。

 頭の中が真っ白に……、というか真っ赤にと言うか……とにかく顔が上げられない。


「……見ないで。」

「すまぬ。」


 素直に謝罪されるも耳は熱くなる一方だ。これは明らかに傷のせいではないと思うのだけれど。


「早く言って……。」

「……すまぬ。」


 痛みのせいで大きく隠すこともできないまま、消え入りそうな声でどうにか抗議するのが精いっぱいだった。


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