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【完結済/手直しするの止めました】神殺しの皇女  作者: 埼山一
第七章 終焉の到来
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第53節 空の心

 既に陽が落ちていた。

 あれだけ、もう無理、耐えられないと思っていたのに、結局死ぬこともなく耐えきってしまった。

 また一昼夜ほど気を失っていたらしいわたしは、目を覚ますと侍女仲間の献身的な手当てを受けた後、一人ポツンと賓客用の部屋に残されていた。

 一つだけ開け放った窓から覗く月の見える空はすっきりと晴れ渡っていたが、わたしの心の内はどんよりと暗い。しかし、その闇を払うかのように部屋の中は月明かり以上に明るかった。

 部屋が暗いと何か得体の知れない黒々とした恐ろしいモノに飲み込まれる気がして怖かった。

 少しでも明るい場所にいたい。

 退出際に灯りを消そうとするタエさんにやめてと頼んだらそのままにしてくれた。

 おかげで少しはわたしの心の中にも灯りが入る。気のせいだと分かっていても、そう思い込むことに努める。

 それでもポツンと部屋の真ん中に取り残された孤独感と、先程まで人がいたことを感じさせない乾いた空気。

 最初の日こそ、刑苦に耐えて豪華な賓客用の部屋を使えることを秘かに喜ぶような一面もあったが、一日が経つ頃にはもう下女部屋に帰りたくて仕方がなくなっていた。

 人が恋しい。誰でもいいから傍にいて欲しかった。

 体が弱ると心も弱ると聞いたことがあったが、本当なんだなとしみじみ思う。

 正直にそう言えば、誰か一緒に泊ってくれたかもしれない。

 でも言えなかった。そんな幼子のようなわがままを通す勇気が湧いてこなかった。

 外からは、一体いつ休んでいるのかと思いたくなるような何者かの咆哮が時折聞こえてくる。


(また、あるんだろうな……。)


 誰も何も言わないが、まだこれで終わりではないことは想像がついた。

 たぶんトラひげはわたしが死ぬまでこの刑を続けるつもりだろう。

 しかし、そう思ったからと言って絶望することもなかった。

 もう絶望するほどの気力も残されていない。

 死ぬのは怖いが、かと言って逃げることもできないのだから諦めるしかない。

 いっそ死んでしまった方が楽になれた。なぜわたしは生き残ってしまったのか。

 ここのところ、一年を待たずしてつらいことばかりが降りかかってくる。

 つらくても、もう涙は出なくなっていた。


(人はつらい目に遭い続けていると、どんなにつらくても慣れてしまうものなのかな。)


 本当は、部屋に明かりが灯っていなくても、月明かりがなくてもわたしは平気なのかもしれない。

 慣れるとはそういうことでしょう。そう思っても正体の見えない恐怖がわたしの心の隅から退去することはなかった。


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