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【完結済/手直しするの止めました】神殺しの皇女  作者: 埼山一
第七章 終焉の到来
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第48節 刑罰(前編)

 突然冷や水を浴びせられたような感覚にわたしは目を覚ました。

 何が起きたのか分からない。

 周囲を確認しようと何かに寄りかかった格好で横になっていた体を起こす。

 しかし、体は起こすことができなかった。寄りかかっていた何かがわたしの腕を引っ張ってうまく体が起こせなかったのだ。

 その時、わたしは自分の身に降りかかっている異変に気付く。

 両手が縛られていた。さらにその両手は地面にしっかりと突き立てられた杭に括り付けられている。寄りかかっていた何かとはこの杭だった。

 それに、身に纏っていたはずの衣は剥かれ、体の上半分がさらけ出されている。どんな時も肌身離さず身に着けていた尾羽の首飾りも見当たらない。


「え……?あ、きゃ……。」


 自分の姿に羞恥を感じて身をよじるものの、杭にきつく括られた腕では露になった乳房を隠すこともままならなず、くねくねとするばかりでどうしても隠せない。

 いつの間にか置かれていた自分の境遇とあられもない姿に狼狽していると、追い打ちをかけるようにこの時期にふさわしからぬ冷風が吹いてわたしの裸の体を苛んだ。

 わたしはその風のあまりの鋭さに身を竦めると、額に張り付いた髪の毛や、鼻、顎からぽたぽたと垂れる雫、それに地面がぬかるんで泥濘になっていることに気付いた。

 そして、それらのことから先程の感覚は本当に水をかけられていたのだと悟る。

 辺りには宮殿と御殿、客殿、それに影に目立たぬように下女部屋といくつかの倉。いつの間にか見慣れた風景。ここは宮殿前の広場のようだった。

 いつもの場所にはいつものようにトラひげの姿。奴の右手にはおひい様が珍しくうつむいて床几に腰掛けている姿が見える。あとはよく知らないこのクニの偉いらしい面々。

 皆一様に神妙な面持ちでわたしの方を向いている。


「やれ。」


 状況の整理に努めているとトラひげが手をかざして号令をかけた。


(やるって、いったい何を?)


 事態が把握できずに困惑していると突然に背中を襲ったバチッとした衝撃と破裂の音にわたしはたまらずに体を反らして、


「ぎゃっ!」


 と悲鳴を上げる。

 背中がジンジンビリビリと痺れている。何が起きたのか。


「ひとーつ!」


 一呼吸遅れて脇から張り上げられる男の声。


(これは何の数?)


 と目を白黒させて混乱するわたしの気持ちを余所に再び同様に衝撃と音が襲う。


「あっ!」

「ふたーつ!」


 涙が出てくる。

 痛い。背中が痛い。突然のことにそれと分からずにいたが、この衝撃は何かに打たれて痛いという感覚だ。


「うっ!」

「みーっつ!」


 もう一つ分かった。この数も打撃の回数を数えている。

 そこまでは分かっても、肝心の背中を襲う打撃の理由が分からない。


「ああっ!」


 続けざまに襲ってく打撃のあまりの痛さに、わたしは括り付けられている杭に寄りかかることもできずに崩れ落ちる。

 地面にたまった泥水が無防備な脇腹に触れるべちゃっとした冷感と不快感。


「よーっつ!」


 しかし、裸に剥かれた上に冷水を浴びているわたしの体は、それらの冷たさも感じないほどに、打ち据えられた背中を中心にジワジワと熱を帯び始めている。

 それでも偶然とはいえ、こうして泥水に浸かっていればいくらか痛みが引いた気がする。

 わたしは崩れ落ちた形のまま身じろぎせずに体を横たえて、ふぅふぅと小刻みに息を吐きながら背中の痛みに耐えていると、今度は頭部に痛みが走る。


「あぁ……。」


 と声が漏れる。

 脇にいた男がわたしの髪の毛を引っ張って頭を持ち上げていた。

 男は無理矢理わたしを起こして杭にもたれかけさせると、その背中に向かって棒を構える。

 その姿を見て、わたしはようやく理解した。

 わたしは棒叩きにあっていた。

 打たれるたびにグラッと揺れ動く視界の隅に入ってくるおひい様がわたしから目を背けていたのはそういうことだったのか。


「うぁ!」

「いつーつ!」


 再開される棒打。

 しかしそれが分かったからといって何かが好転するわけではない。

 激痛に身を縮めようとすると背中が丸まって突っ張り、かえって痛みが増した。


「ぐぁ!」

「むっつー!」


 この苦悶はあと何回続くの?わたしはあと何回耐えられるの?

 わたしはこの苦痛に抗う術も持たず、ただ打たれるためにその背をさらし続けるしかなかった。


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