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【完結済/手直しするの止めました】神殺しの皇女  作者: 埼山一
第六章 使者の再来
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第39節 一夜の出来事(前編)

「ひいちゃん、御使者様があなたをお召しですよ。」


 夜、一仕事終えた皆と共に部屋でくつろいでいるわたしの背後から声がかかって、振り向けばタエさんが入り口の前に立っていた。


「何の用でしょうか?」

「……行けば分かると思いますよ。」


 いつもは知っていることは教えてくれるタエさんが今日は歯切れが悪い。他の下女仲間は何か知っているかもと思いそれぞれに目で聞いてみる。


「……。」


 こちらの意図を汲んでいるのかいないのか、チユさんは特に感情を表すこともなく何も言わない。

 サヨは知らないとかぶりを振っている。

 呼び出されるようなことは思い当たらないのだが、賓客の呼び出しを断るわけにもいかないし、なにより今夜も皆が寝静まったころにこっそり訪ねるつもりだったので手間が省けてよいか。

 そう思い部屋を出ると、すれ違い様にタエさんがぽつりと耳打ちしてきた。


「しっかりね。」


 そう聞こえた気がしたが、何のことだかわからなかったわたしは、「聞き間違いかな?」ぐらいにしかとっていなかった。




 タケハヤの部屋を訪れるなり、彼は次のように切り出した。


「やあ、女子(おなご)の身でありながら男子(おのこ)の寝所に自らやってくるとはなんと積極的な。さ、恥ずかしがることはない、こちらへ。」

「あなたが呼んだのでしょう。」


 以前も聞いたような口上と共に肩を抱き寄せるタケハヤの手を払って、わたしはその軽薄な態度に辟易しながらも、なるべく何の感情も抱いていない風にそう返した。


「ふむ、だめか……。これでもわしはクニに帰れば女子の手合いには困らぬほどなのだが……。」


 首をかしげはするものの、別段がっかりした風でもなくこぼすタケハヤを脇目に適当な場所に座る。


「それで、どんな御用でしょうか?」

「君よ……そう邪険にすることはなかろう。」


 彼が座るのも待たずに早く要件をと急かすわたしに対して、本題を切り出したがらないタケハヤ。

 君とはまた大層な呼び方だと思ったが、要件済ませてとっとと帰りたいわたしは気にしないことにしておいた。


「わしはこれでも気を遣っておるのだぞ。」


 ドカリと座って頬杖など突きながら恨みがましく言う。

 こいつに気を遣われている?

 何かそんなようなことをされただろうか、とわたしは訝しんだ。


「こうしてわしの方からそなたを呼びつければ、傍から見ればわしがそなたに懸想しているように見えよう。そなたの方からわしのもとに通うのもやりやすくなるではないか。」


 ああ、そんなことを考えてくれていたのか。次からは夜更けにコソコソ訪ねる必要はないということか。


「……お気遣い、感謝します。」


 そんなわたしの心ばかりの謝辞を聞いたタケハヤは、「まあよい。」と言って一つ息を吐きだすと本題に入った。


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