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【完結済/手直しするの止めました】神殺しの皇女  作者: 埼山一
第六章 使者の再来
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第38.2節(挿入話) 宴席での提案

【おしえて!チユ(三人官女の中の人)先生 ~この節はなんで小数点なの?~】

「……何で私なの?……嫌、めんどくさいもの。」


※挿入話だからです。詳しくは第35.1節の前書きで。


「終わった?……そう、じゃ。

 ……で、どうやって帰ればいいの?

 ……え?知らない?……そう、困った。けど、まあいいか……。」


 わずか二度目の来訪にも拘らず、わしは主賓として上座に通されると大王(おおきみ)の号令の下、宴は始まった。

 今回は我らヨシノの一行の来訪があらかじめ分かっていたとあって、前回よりもはるかに豪勢に設えられたなその宴は、飲み食いだけではなく、賑やかな囃子と共に巫女が舞い踊る姿を堪能することができ、舌だけでなく目も楽しませることができた。

 そんな中でも決して己がクニと己が偉大さを忘れない大王の精兵自慢やら武勇伝やらに、わしは「なんと。」、「それはすごい。」、「わたしなどには想像も出来ないことです。」などと愛想よく受けてはやり過ごしていた。

 そして、しばらく経った時のこと。――


「――わしはそなたのことが気に入ったぞ、タケハヤ殿。」


 彼の尽きることない自慢話にいささか辟易しながらも、それを微塵もおくびには出さなかったことが功を奏したのか、赤ら顔になった大王は猛烈な勢いで酒をあおりながら上機嫌に言った。


「それは勿体ないお言葉です。」


 謙遜して会釈するわしに大王は満足そうに続けた。


「そこでわしからそなたに一つ、贈り物をしようと思う。」


 ニンマリとした彼のあまりの笑顔に、悪い話でなければよいのだが、と不吉な予感がよぎり、料理をつつく手が止まる。

 大王の方を見れば、彼は先ほどから舞を終えたばかりの巫女を呼び寄せては酌をさせて、なおかつ触りたい放題に尻などを撫でまわしている。

 巫女は耐えているのか慣れているのか愛想を崩すことなく酌をしていた。


「そなた。わしの名、タギリビコを名乗らんか。」

「わたしが大王の名を?」


 わしは彼の想定外の提案に、余所行きに作った声色も忘れて素っ頓狂な声を上げてしまい、あまりの驚きに手にしていた箸も落としてしまった。


「どうじゃ、気に入らんか。」

「い、いえ、それは是非もない光栄なことです。」


 相手の狼狽もどこ吹く風とばかりに確認してくる大王に、わしは代わりを持って寄ってきた下女が箸を拾うのも待たずに自分で拾うと、不吉を通り越して吉兆であったかと密やかに安堵する。


「受けてくれるか。」

「ええ、それはもう……。」


 わしは下女と箸の受け渡しをしながら、答えを濁して考える間を作って思案した。


(これは、大丈夫か。)


 この話、受けた方が当然大王の覚えも愛でたくなる。

 そうなれば今後の交渉もやりやすくなるというもので、そう考えれば受けない手はない。


(しかし……。)


 肯定的な意見ばかりではなく否定的な意見も勘案してみる。

 タギリビコ。

 受けても良いのだが、どうしても彼の名前はわしに馴染まない気がする。

 その名を聞くと、どう頑張っても目の前のごつごつした体格の男が想像されてしまう。


(わしのような美丈夫には似合うまい。)


 それに、あまり軽々に受けてしまってはクニ元に帰った時に我が君の不興、不審を買うかもしれず、それだけは絶対に避けなければならない。

 ならばここは……。


「――ですが、この名は我がクニの然る止ん事なき方から賜りしもの。ですからこの話、一度クニに持ち帰り、そのお方に話を通してよりお受けしようと思います。」


 さも申し訳なさそうに言って、当たり障りのない理由で受諾を先延ばしにする。


「ほう、律儀なことよ。」

「申し訳ございません。」

「よいよい。それでこそわしの見こんだ男というもの。」


 大王は殊勝なわしの態度に感じ入ったようにそう言うと、空の杯を差し出して言った。


「それでは未来のヨシノタギリビコ殿、我らの友誼と繁栄に乾杯とゆこうではないか。」


 そのぐらいであれば是非もないこと。わしは杯を受けると、注がれた酒を一息に飲み干して返杯した。


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