第37節 清掃中に
タケハヤ達使者の一行は近いうちの再来を約束して帰路に着いた。
「今度来るときは馬を差し上げましょう。」
このクニにもウマはいないことを見抜いたらしいタケハヤは、そう嘯いてトラひげを喜ばせたようだが、彼が本当にヨシノの使者ならばそんなことを言うだろうか。
結局、何も掴めないまま彼は去って行った。
「はあ……。」
「どうしたの?」
手を止めてため息を漏らすわたしを見てサヨが話しかけてくる。
タケハヤ達使者が使用していた部屋の清掃中のこと、この子遊びたい盛りだろうに文句も言わずに手を動かし続けている。
「あ、分かった。使者のお兄ちゃんのことでしょう?」
考えていたことを指摘されてぴくっと反応する。それを見たサヨは我が意を得たりとばかりに後に続ける。
「分かるよ、その気持ち。ちょっとカッコよかったもんね。」
「それはない。」
分かってない。何も分かってないよ、サヨよ。
この子の見当違いの指摘に昨日の出来事に思いを馳せる。
あのタケハヤという男、サヨの言う通りにまあ優男だと言っていいだろう。初めて見た時の印象もそうだった。
尋問の際の口上を聞いた限りでは胆力もあるようで、そこは好印象だった。
だけど、あの人を食ったような態度がどうにも気に入らない。言えないこと以外にも何かを隠しているようにも感じる。はっきり言ってしまえば信用できないのだ。
「サヨ。いい人を見つけなさい。」
変な男に騙されちゃだめよ。と心の中で付け加えたわたしの方を見たサヨは怪訝な顔をするばかりだった。




