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【完結済/手直しするの止めました】神殺しの皇女  作者: 埼山一
第四章 囚われの地で
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第29節 三人官女

 下女仲間となる者たちを紹介された。

 三人いて、見事に大中小と並んでいて分かりやすい。齢もそのまま表れているように見える。

 大の方は先ほど食事やら着替えやらを運んできた中年の女で、下女のまとめ役ということだった。

 中の方はわたしと同じぐらいだろうか。紹介されるとただ頭を下げただけで一言のあいさつもない。と言っても悪意、害意を感じることはなく、随分と控えめな印象を受けた。

 そして、小の方は幼さが抜けていない印象を受けるが実際に幼いのだろう。体の方はピシッとして立ってはいるが、心のほうがまっすぐ立てていない。ソワソワと落ち着かない雰囲気が辺りに漏れ出ている。

 実は先ほどから部屋の様子を窺う人影がちらちらと見えていたのだが、その正体がこの子のようだった。


(わたしがこの中に入るとしたら中と小の間かな……。)


 わたしも別に小さくはないのだが、大の方ははっきりと大柄だし、中の方もその控えめな雰囲気から誤解されそうだが、よく見るとなかなか背が高いようだった。

 小の方は言わずもがな。

 それぞれ「タエ」、「チユ」、「サヨ」と紹介された。

 向こうの紹介が済んだので、こちらからも自己紹介を済ます。

 そして最後に、


「よろしくお願いいたします――」


 と締め括ったら、三者三様におかしなものを見たような目を向けられる。


(何かしくじっただろうか。)


 と思ったが、思い当たる節はない。どうしてよいか分からず、何やら居たたまれなくなってくると、


「わたしたちに『さま』を付けるなんておかしくない?」


 と、小の方が邪気なく教えてくれた。

 つい癖で「様」付けで呼んでしまったが、確かに下女が下女に対して使う言葉ではない。

 あわてて、半ばごまかす様にして「さん」に訂正したが、小の方はともかく、大と中の方からは何か不審なものを見るような目を向けられることになった。




 お互いの紹介が済むと下働きの具体的な説明を受けた。

 始め、説明役を担っていたのは大の方だったが小の方が、

「わたしがやる。」

 と言ってきかないので途中で交代してあらためて説明を受けた。

 小の方の説明はその外見に反し、分かりやすかった。




 下女の仕事は大方の想像通りにおひい様の身の回りの世話だった。

 ただ、おひい様は自分のことは何でも自分でやってしまう人なのでそれほどやることはなく、最も頻繁に行う世話と言えば料理の手伝いだと言う。


「おひい様、お料理が上手なんだよ。」


 という小の方の言葉におひい様と呼ばれている人がそんなことをするのかと軽い驚嘆を覚え、そういえば母さまも得意だったなと、かつて手料理を振る舞われたことを思い出す。

 だが母さまは元は下戸(げこ)。つまり平民の出であり、見初められて父さまに嫁ぐ前は当然、煮炊きも自分でこなす必要があった。生粋の大人(たいじん)であるおひい様と同列には語れない。

 おひい様の料理を手伝うと美味しいものが食べられると小の方は嬉々として教えてくれた。




 他の仕事に彼女の役目の補佐と言うのがあった。では彼女の役目とは何か?


「せったい、きょうおう役。」


 と小の方は言った。


 --接待、饗応役--


 つまり客人をもてなす役目。

 確かにおひい様は、

「このクニを訪れた方の世話などしております。」

 と教えてくれたが、そう畏まった呼び方をされるとなかなか身が引き締まる思いがする。

 わたしたち下女に行き届かないところがあれば、このクニの面子に泥を塗ることになりはしないだろうか。

 いや、このクニの面子などに興味はないが、差し当たっての恩義のあるおひい様の顔に泥を塗るわけにはいかない。

 だから失敗は許されないのではないか。具体的にわたしたちは何をするのかと問うと彼女は言った。


「お料理出したり、お部屋そうじしたりするの。」


 その言葉に、引き締まった身がどうにも緩んでゆくのを感じたわたしは、何とかなるなと思った。


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