第23節 牢の中
くーちゃんが泣いている。座り込んで顔を覆って、しくしくとむせび泣いている。
わたしは何とか慰めようと声をかけるが、わたしの声が聞こえていないのかどうしても顔を上げてくれない。
「どうして……どうして助けてくれなかったの……?どうしてわたしを見捨てたの……?」
――違う、違うの、くーちゃん。見捨ててない。見捨ててないよ。――
「……嘘つき!……助けてくれるって言ったじゃない!」
――助けようとしたの。あとちょっとだったの。――
「お前なんか……お前なんか……」
――ああ、だめ。お願い、その先は言わないで。――
「お前なんか、友達じゃない!」
親友の強い拒絶の言葉に絶望し、わたしはっと目が覚めた。
(夢……。)
夢の中でくーちゃんに言われたことが頭に残り続ける。
――嘘つき……お前なんか……――
「……ごめんね、くーちゃん。わたし、できなかったよ。ごめんね……。」
あれからどれだけ経ったのか分からない。だが、期限であった二回目の満月は過ぎ、その姿を再び隠そうとしていることは確かだった。
悲嘆にくれ、許しを請い、絶望し、疲れてわずかばかり眠る。それを繰り返すうちに涙も流れなくなっていた。
どれだけ騒ごうが人がやってくることはなかった。そのうちに喚く力も尽き果て、冷たい牢の地べたに横たわるばかりになった。
残されたものは何もない。精も根も尽き果てた。
出された食事にも手を付けず、ただそこに横たわる姿は生きた骸と呼ぶにふさわしいものだろう。
(くーちゃん、わたしも、いっしょに……。だから、さみしく、ないよ……。ごめんね……。)
呟いたはずの唇も動くことはない。
ふとした拍子に目を開く。いや、開いたつもりになっているだけかもしれない。
今いるところは夢の中なのか空虚な現なのか、それもわからない。
光が射しこんでいる。影が見える。でもわからない。
――まあ、なんてひどいことを――
なにか耳に入ってくる。人の声……。
――もし、ご無事ですか――
手に何か温かなものが触れる感じがする。
これは夢……?人影の背後から光が射している。人ではない何か……。でも、どこか心地よい感じのする声……。
――あと少し辛抱してくださいまし。すぐに出して差し上げますから――
呼吸が楽になる。頭の下に柔らかいものを感じる。
この声は……くーちゃん?
――お水、飲めますか――
カサカサになった唇にわずかな湿り気が触れるのを感じる。
……くーちゃん。……くーちゃんだあ。……よかった、生きてたんだあ。
――ああ、こんなに体が冷えきって……。すぐ温めますから――
だれか、火を――そんな音も耳に入っては消えてゆく。
……あのね、わたし頑張ったんだよ。つらいこともいっぱいあって……もうだめだって何回も思って、それでも……
――どうか、生きてくださいましね――
額に当てられた柔らかなぬくもりが安心感を与えてくれる。
……わたしね、くーちゃんがいてくれたら頑張れるから。だから……ずっと……そばに……。
お話ししたいことが山のようにあった。しかし、その先を続けることなくわたしの意識は途切れた。




