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【完結済/手直しするの止めました】神殺しの皇女  作者: 埼山一
第四章 囚われの地で
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第23節 牢の中

 くーちゃんが泣いている。座り込んで顔を覆って、しくしくとむせび泣いている。

 わたしは何とか慰めようと声をかけるが、わたしの声が聞こえていないのかどうしても顔を上げてくれない。


「どうして……どうして助けてくれなかったの……?どうしてわたしを見捨てたの……?」


 ――違う、違うの、くーちゃん。見捨ててない。見捨ててないよ。――


「……嘘つき!……助けてくれるって言ったじゃない!」


 ――助けようとしたの。あとちょっとだったの。――


「お前なんか……お前なんか……」


 ――ああ、だめ。お願い、その先は言わないで。――


「お前なんか、友達じゃない!」




 親友の強い拒絶の言葉に絶望し、わたしはっと目が覚めた。


(夢……。)


 夢の中でくーちゃんに言われたことが頭に残り続ける。


 ――嘘つき……お前なんか……――


「……ごめんね、くーちゃん。わたし、できなかったよ。ごめんね……。」


 あれからどれだけ経ったのか分からない。だが、期限であった二回目の満月は過ぎ、その姿を再び隠そうとしていることは確かだった。

 悲嘆にくれ、許しを請い、絶望し、疲れてわずかばかり眠る。それを繰り返すうちに涙も流れなくなっていた。




 どれだけ騒ごうが人がやってくることはなかった。そのうちに喚く力も尽き果て、冷たい牢の地べたに横たわるばかりになった。

 残されたものは何もない。精も根も尽き果てた。

 出された食事にも手を付けず、ただそこに横たわる姿は生きた骸と呼ぶにふさわしいものだろう。

(くーちゃん、わたしも、いっしょに……。だから、さみしく、ないよ……。ごめんね……。)

 呟いたはずの唇も動くことはない。

 ふとした拍子に目を開く。いや、開いたつもりになっているだけかもしれない。

 今いるところは夢の中なのか空虚な(うつつ)なのか、それもわからない。

 光が射しこんでいる。影が見える。でもわからない。


 ――まあ、なんてひどいことを――


 なにか耳に入ってくる。人の声……。


 ――もし、ご無事ですか――


 手に何か温かなものが触れる感じがする。

 これは夢……?人影の背後から光が射している。人ではない何か……。でも、どこか心地よい感じのする声……。


 ――あと少し辛抱してくださいまし。すぐに出して差し上げますから――


 呼吸が楽になる。頭の下に柔らかいものを感じる。

 この声は……くーちゃん?


 ――お水、飲めますか――


 カサカサになった唇にわずかな湿り気が触れるのを感じる。

 ……くーちゃん。……くーちゃんだあ。……よかった、生きてたんだあ。


 ――ああ、こんなに体が冷えきって……。すぐ温めますから――


 だれか、火を――そんな音も耳に入っては消えてゆく。

 ……あのね、わたし頑張ったんだよ。つらいこともいっぱいあって……もうだめだって何回も思って、それでも……


 ――どうか、生きてくださいましね――


 額に当てられた柔らかなぬくもりが安心感を与えてくれる。

 ……わたしね、くーちゃんがいてくれたら頑張れるから。だから……ずっと……そばに……。

 お話ししたいことが山のようにあった。しかし、その先を続けることなくわたしの意識は途切れた。


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