第14節 森の秘密
まだ空は明るいながらも、ムジナは火を起こしてくれた。
わたしは手ごろな朽木に腰を下ろすと、荷物の中から干し肉取り出して火に近づける。
これからしばらく口にできるのはこれと水だけになるだろう。
程よく焙った干し肉を食べやすい大きさに裂いているとムジナがオオトリ狩猟の仕方について話をしてくれた。
――今回の獲物、オオトリは光を放つ鳥である。ならば、明るいうちから探すより、暗くなるのを待って探した方がよい。
しかし、夜の森を動き回るのは危険だ。こうして明るいうちに移動して、夜はその場に留まり見張る。それを繰り返す。
火は暗くなる前に消す。本来の野営であれば火を焚いてケモノ除けにするが、オオトリまで除けてしまっては意味がないし、オオトリの放つ光が見えなくなってしまうかもしれない。――
「オオカミは?」
その場に留まるとはいえ、暗い夜の森の捜索――
彼の話に少しだけたじろいだわたしは、いくつかある不安に思ったことの内、危険なケモノとの遭遇について口にした。
この季節、クマはまだ早だろうが、そうなるとオオカミが怖い存在だと思われた。他にも、ないとは思うがシカやイノシシだって襲われたら恐ろしい存在だ。
「いない。」
「え?」
「いない。この森にオオカミはいない。」
これほどの大きさの森にオオカミがいないとは考えにくい。そう思うわたしにムジナは続ける。
「ほかにもクマ、シカ、イノシシ……ケモノはいない。」
「なんで、そんな……。」
「わからない。昔はそんなことなかったらしい。森の木が葉をつけなくなってから消えたと聞いた。」
彼の口ぶりからムジナ自身もケモノがいた頃の森を知らないことが窺がえた。
見渡してみれば、確かにこの森の木々はあまり葉をつけていないようだ。だが、それは冬だから葉を落としているだけだと思っていたが、違うということか。
「だから誰もが恐れてこの森には近寄らない。」
彼の話はそこで終わった。
何か不思議なことが起きている森。であればこそオオトリに遭遇できたのかもしれない。
そう考えながらわたしは手ごろな大きさになった干し肉をかじった。




