第12節 ムラの陰鬱な空気と絶対の決意
ほどなくしてムラに着くと、わたしは思わず胸をなでおろした。
あの後、なんとかムジナと会話を試みたのだが、続かない。
お互い昔から知った顔なのだが、あいさつぐらいしか言葉を交わしたことがなかったのだと思い知らさるばかりだった。
いつもと変わらぬムラの風景。
だが、来るたびに感じていた高揚感、幸福感など湧いてくるはずもない。葉を落とした森の木々もどこか陰鬱に映る。
くーちゃんの家に行くとご両親が門前で出迎えてくれた。
作れていない二人の笑顔に気が重くなる。
わたしたちの事情を知ってか知らずか、くーちゃんちで飼われている犬だけが帰ってきたムジナとすっかり馴染みになったわたしに尻尾を振って歓迎してくれた。
二人とあいさつを交わすわたしを尻目に「すぐに出る。」と告げると家に入ってゆくムジナ。
追うように家に入るとムジナがグッグッと弓の弾き具合を確認している。いくつかある弓の中で納得のいくものを選んだようだ。
続いて矢、短刀、縄……と確認しては身に着けてしてゆく。見ていて気持ちいいほどのテキパキと手際のよい準備。
何か手伝うことがあればと思ったが、できることはないようだった。
「行ってくる。」
両親にそう告げ息つく暇もなく出立する彼にわたしは慌ててついて行く。
「案内を頼む。」
わたわたと後を着いてくるわたしにぽつりと言ったムジナの一言、この言葉に自分の身があらためて引き締まる思いがする。
そう、ここからが重要だ。
わたしが彼をオオトリの元へと導かねばならない。
そして、必ず仕留めて帰るのだ。
わたしは決意を新たにすると、彼をオオトリの元へと先導するべく意気揚々とムジナの前に出た。




