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【完結済/手直しするの止めました】神殺しの皇女  作者: 埼山一
第一章 二人の絆
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第5.0節 夜、思ひに耽る くーちゃんとの出会い(一)

※エピソードを分割挿入したため節数が小数点になっていますが、気にしないでください。

(――あ~、あれは怒るよねえ。ん~……今思い出しても腹立ってくるし……。)


 夜の暗さに目が慣れて、天井の青黒っぽい部分と真っ黒い部分が見分けられるようになったわたしは、昔のことを思い出してしみじみとそう思っていた。

 昔っからそうだったんだけど、兄さまはああいうふうに他人を容赦なく責めるところがある人だった。

 勿論、兄さまにだって優しいところはあるし、年中そんなきつい性格をしているわけじゃないのだけれど、何かこう……ちょっと油断するとああいうことを言い方になっちゃうのが兄さまと言う人だった。

 兄さまももういい加減子どもがいてもいい齢なのに、子どもどころかいつまで経ってもお嫁さんが来てくれないのは、ああいう性格だからっていうのもきっと無関係じゃないんだろう。


(ま、いっか。兄さまがずっと独り身だったからって、別にわたしには関係ないし……。)


 わたしは兄さまのことを頭から追い出すと、もぞもぞと姿勢を変えた。

 寝付けないなと思ってから、もう結構な時間が経っている。さすがに頭も体も眠たくなってきて、ふわふわした感覚がわたしを包み始めていた。


(ううん……せっかくだし、もうちょっとだけ……くーちゃんと……会うところまでは……。)


 そんなことを思いながら目を閉じたわたし。すると、心地よい睡魔が襲ってきてそのまま寝てしまいそうになる。それでもわたしはうつらうつらとした頭の中で思い出していた。あの日、海のクニに行こうとして、思いがけずくーちゃんと出会うことになったあの日の続きを……。




 ――特にこれと言った物もない丘を下りて切り株だらけの林を抜けると、わたしたちはとある集落に差し掛かっていた。


「――()()。よく頑張ったな。これがさっき言ってたムラだぞ。」


 そう言った父さまが指差した方に見えたのは、家とか倉庫とかの建物がそこそこまとまって立っている風景だった。


「これがムラ……?」


 わたしは父さまの言った「ムラ」という言葉と目の前の風景を照らし合わせて、何となくそう呟いていた。

 実は、わたしが兄さまのあまりの態度に腹を立てて、気持ちが離れていたのも過去のこと。

 なんやかんやの末に父さまのとりなしで兄さまと仲直りしていたわたしは、さっきの丘で父さまが話してくれていた「ムラ」を実際に見せられて、また一つ賢くなっているところだった。


「良かったな。お前、ウチ以外の集落なんて見たことないだろう?」


 そこに声をかけてきたのは、さっき仲直りしたばかりの兄さまで、わたしはまたしても出てきた知らない言葉に、首をかしげながらその意味を聞き返していた。


「しゅうらく?」

「こうやって人がまとまって生活してる場所のことだ。」

「???」


 分かりやすく説明してくれた兄さま。でもわたしは、兄さまの説明に頭の中が疑問符でいっぱいになっていた。

 たった今憶えたばかりの「ムラ」と何が違うの?父さまは「ムラ」って言って、兄さまは「集落」だって言う。

 わけが分からなくて、もう首をかしげるしかなくなったわたしは兄さまに聞いていた。


「……あれ、ムラじゃなくて、しゅうらくなんですか?」

「いや。ムラだ。あれはムラでもあるし、集落でもあるんだ。……そうだな……。集落の中でも小さいのをムラって呼ぶ。そんな感じだな。」

「ふうん。そっか……。」


 この短い間に「ムラ」と「集落」。いっぺんに二つも言葉を覚えてとても賢くなったわたし。

 この調子でいけば、近いうちに兄さまよりも賢くなれるかもしれない。――そんなことを考えながらそのままムラに踏み入ると、わたしは初めて見るムラの景色をキョロキョロと見渡していた。


(ムラ……しゅうらく……。)


 わたしが最初に不思議に思ったのは、この「ムラ」には周囲を巡る柵もなければ(ほり)もないということだった。

 わたしが知っている唯一の集落――つまりわたしの住んでいる集落には、周りを巡る柵と濠があって、それらで隙間なくぐるりと囲まれている。だからそれがないということが、ここの集落の特異性と言うか、ウチとの違いを際立たせていた。

 他に気になったのは、ここには背の高い建物が見当たらなかったこと。

 このムラで一番大きい建物はどれだろうと思って見まわしてみても、倉庫が見えるのがいいところで、神殿とか宮殿とか櫓とかそういう分かりやすく「大きい」建物は見当たらない。


(ふうん……これがムラかあ……。)


 とりあえず目に留まったのはそれぐらいだった。

 あとはもうウチでも見られるものが当たり前にあるだけで……例えばそれは、あるのが当たり前の民家だったりするし、ここからちょっと離れたところに見えるのも、やっぱりあって当たり前の田圃(たんぼ)とか畑とかで……。

 さすがに田圃の方は時期じゃなかったから放ったらかしてあるだけだったけど、畑にはたくさんの人が入って、今も仕事に精を出しているのが見えた。

 結局、ここにある物のすべてがウチの柵でも見られる、ごくありふれたものだった。


(うん、わかった。なんか……小さい?)


 それが、わたしが初めて見る「ムラ」の感想をだった。

 でもそれは、わたしがムラという集落を見たことがないから出てきた感想であって、だからこういうのをムラって呼ぶんだっていうことを知ってしまえば、ここは何のことはないごく当たり前のムラだった。


天井      ……この時代の住居と言えば、竪穴住居。ですが、実はこの屋根、焚火の煙を抜くために横側に穴が空いてます。まあ、そうじゃなくても茅葺なので基本スカスカですが。

お嫁さん    ……兄さまは一国の皇子なので、それらしい嫁を大王が宛がおうとするのですが、本人が固辞するせいでまとまる話もまとまらないのです。

なんやかんや仲裁……ちゃんと作ってあったけど不採用。なんやかんやで済むんです。

ムラ      ……めんどくさいのでもう説明しません。村です村。

(ほり)と柵     ……環濠集落ってぐらいですから濠は必須ですよ。柵は知らぬ。

田圃(たんぼ)      ……古代の田圃は一辺が2mほどの小区画水田と呼ばれるものでした。へ~。

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