07 プレゼントとデートの行方
「フラン! ちょっとこれ可愛くない!?」
「むむむ……確かに可愛いな、さすがは女性か、審美眼でこの俺が負けるとはな」
「審美眼とはちょっと違うでしょ? ……じゃ、次は貴方が私のプレゼントを選んできて!」
「面白い、俺のセンスを見せつけてやろう」
酒場でパーティに誘われた翌日。俺たちは街へ遊びに来ていた。さすがは王都と言うべきか、娯楽には事欠かない。今いるのはアクセサリーショップだ。錬金術や付与術による特殊効果のない、純粋な飾りとしてのアクセサリーがたくさん置いてある。
こういう店は嫌いではない。錬金術師としてアクセサリーを作ることもよくあるので、参考になることも多く1人でもたまに来るくらいだ。
俺にプレゼントを強制したサラは、ニヤニヤとこちらを眺めている。透き通る白色の髪に暗めの群青色をした瞳。勝ち気に見えるのは、家族の話を聞く限りほぼその影響だろう。パーティに誘う時の緊張した様子からも、勝ち気なのは見せかけで内心は弱いと見た。
「それなら……」
お守り……いや、あからさまにやり過ぎると的外れだった時恥ずかしいな。外見が良くて実際はお守りの意味もあると後から知るのがベストだが、さすがに無理だから……
「店員さん、これくださいな!」
「はーい、贈り物用の包装にしますか?」
「んーそうだな……それもいいか。うん、お願いするよ」
「はいはーい」
選んだ物をわざわざ見えないようにしているというのに、サラは後ろから覗き込んでくる。
「貴方、もしかして意外と女性の扱いに慣れてる?」
「まさか。人間に慣れてる錬金術師なんて迷信だろう?」
「ふふ、そうかもね」
彼女が笑った通り冗談半分だが、錬金術師が人間に慣れていないのは事実である。俺は例外の部類。完全に、実家の手伝いをしていた影響だ。
基礎を学び終わった錬金術師は大抵、研究や生活を自分1人で完結させることが多いのだ。食事は除くが。その影響で、弟子を取る者もほとんどいない。弟子と上手く喋れないからだ。
冒険者として活動している錬金術師はまだマシだ。研究も当然行うが、実践に重きを置き、自分で仮説を試す武闘派もそれなりにいる。しかしそれも、自己完結の一環であることが多い。ソロで活動している者のおよそ6割が錬金術師だと言われているのもそのためである。
店から出てプレゼントの入った袋を渡すと、サラはこちらを睨んでくる。
「前言撤回。こういうのは、それなりのムードってもんが必要なのよ? 買った店の目の前で渡すなんて!」
「はは、許してくれ。これからの予定を考えると今渡して置いた方がいいと思ってさ」
「? 予定って……?」
「ダンジョンに行くんだよ!」
サラの呆けた顔は、何度見ても笑えてしまうな。
∞
「なんでこうなるの……」
「そりゃあ、ダンジョンでの相性が分からなきゃパーティなんて組めないだろ?理にかなってると思うけど」
「錬金術師ってみんなこうなの? やっぱり、誘う人間違えちゃったかも……」
「ま、本当は事前に言っておいた方が良いとは思ったんだけどな。装備ゼロでどのくらいの動きなのか見ときたかったから。都合が悪ければ日を改めても良いけど……どうする?」
サラは少し考えた後に答えた。
「守りが何も無いのはさすがに辛いわね……ここに潜るんでしょ?」
目の前に入口が開かれている、王都の抱える3つのダンジョンのうちの1つ。最上級ダンジョン〈天魔の導き〉は、王都の中で最も人が集まるダンジョンである。なにせ、ここは未攻略。いまだに財宝や不思議な道具が眠っており、豊富な素材も多く取れる。
ちなみに、ダンジョンの名前はその土地の所有者に決定権がある。つまり、王都にある3つのダンジョンは、王様が命名権を持ってるわけだ。といっても、大臣とかと会議して決めたんだろうけどな。
「ああ、守りのことは考えてあるよ……」
そう言ってサラの顔に手を伸ばすと、サラはキャッと声を上げ後ろに飛び退く。
「突然何するの!?」
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