01 夜の酒場と世間話
「はぁ〜……」
夜の酒場で、何度目か分からないため息をつく。酒場には、今日の仕事が上手くいったものも、失敗したものも集まってくる。特に場を盛り下げるということもないだろう。
そこに、声をかけてくる男がいた。
「よぉフラン。辛気くせぇ顔してどうした?」
「……レーヴァか。ダンジョン帰り?」
「おう。こっちはかなりいい素材も取れて依頼も達成して最高な気分だってのに、酒場に来てみりゃ1番にお前のしみったれた面が入ってきたんだ。声もかけたくなるだろ?」
「らしいな。冒険者なクセして孤児院を経営してるだけあるよ。世話焼きなところが本当にらしい」
「おいおい、マジにどうしちまったんだよ。ぶつくさ言うのはパーティメンバーとクラウの奴で十分だぜ?」
この男が言うように、今の自分が普段より愚痴っぽくなっていることは自覚している。酒のせいもあるだろうが、なによりも、最近巷で持ち切りになっているあの話題が1番の原因だ。
「レーヴァ、お前はなにも思わないのか?少し前までは錬金術師サマだの神の御業だのなんだのと持ち上げていた連中が、今度は魔法使いサマ〜と尻尾を振ってやがる」
「ああ、そのことか……ウチのパーティは理解あるやつばかりだから良いが、下のランクじゃ錬金術師が追いやられ始めてるらしいな……」
「魔法使いも錬金術師も、剣士すらも。魔力を使うのは変わんねぇってのに。今まで一子相伝だった術理が普遍のモノになったからって……」
「ま、俺も錬金術師として思うところはあるし、魔法を使えるようになって突然威張り散らすようになったヤツらは鼻につく。だがまあ、技術の発展だって考えりゃあ良いことには違いねぇなとも思うよ」
「お前……脳筋のくせに割と鋭いこと言うじゃん」
「はっ、脳筋は余計だ!」
レーヴァは、手を振りながらパーティメンバーの元へ向かった。愚痴を聞いてくれた感謝を背中に投げた。
魔法という技術は前から存在していた。魔力を用いて事象を操るその技術は一子相伝で、そもそも適性がある者が少なかったということもあり、稀有な存在とまで言えた。
だが、つい先月、とある事実が発覚した。魔法を使える適性は確かに存在するが、それは火、水、土、風という4つの属性ごとに存在し、既に適性無しと判断された者も魔法を扱える可能性がある、というものだ。情報がどこから上がったか知らないが、国王から大々的に発表されたことを考えると、裏付けもしっかりしているのだろう。
その影響で、優先的に適性を調べられた貴族から魔法使いが多く出現。皇太子様も適性があったことから、新たな祭日と定められもした。
変革。大いなる時代のうねり。変遷。言い方はいくつもあるだろう。今この国は、「魔法」という力を取り込み、その力を主体としたものに変わろうとしているのだ。
国民たちはどんな考えを持っているんだろう。錬金術師の行先はどうなるのだろう。そんな、不安から出てくる疑問が頭を占める。
一般論としては、やはり魔法の方が好かれているように思う。錬金術と魔法の違いを細々と説明してもつまらないから端的にあげると、知られているか、知られていないかだ。知らないから本当はなんとも言えないが、錬金術でも魔法と同じようなことはほとんどできるだろうな。
魔法ってやつは、神秘的なのだ。それが存在することも、炎や水を操ることを広く知られているのに、その情報の大元は大抵、大昔の魔法使いのものだ。現在の魔法使いの多くは、その術理を秘匿している。いや、秘匿していた、と言うべきか。対して錬金術師は、剣士や弓使い、鍛冶師や衛兵なんかと変わらない職業の1つ。やってることは他より分かりやすくすごいし、建国にも尽力したらしい。それだけ。
いや、やっぱり炎や水を操るっていう派手さがウケているのだろうか?いやいや、実際に見たこともないのに派手さも何もないだろう。
「はぁ……」
ため息は、俺の耳にも届かずに酒場の喧騒に消えた。
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