エピローグ
ドキドキが鳴り止まない。
静かな部屋も、お布団の温もりも、私を寝かせてくれない。
「……今、何時?」
目を擦りながら身体を起こしてスマホを摑む。
ホーム画面に表示された時間は深夜の一時。ちょうどアニメが放送されている時間帯だった。
「……観るか。眠れないし」
のっそり布団から這い出る混沌シュガ・ラブ・ホテプ。
リアタイ視聴は、いつぶりだろうか。確か先週……うん、割と頻繁に見てますね。流石私です。
「今日なんだっけ?」
子供の頃は全アニメの放送時間と先週までの内容をバッチリ覚えていた。
だけど年齢を重ねる程ふんわりして、今では放送時間なんて覚えていないし、先週までの内容もオープニングを見るまでは出てこない。
「知らないアニメだ」
学生時代は全てのアニメをチェックしていた。
でも社会人になった今、同じことをするのは難しい。
「あー、日常系か」
映画館みたいに薄暗い部屋。
ミニテーブルの前に座って、ぼんやりとテレビを見る。
知らない作品で、しかも途中から。
それでも頭を空っぽにしてニヤニヤできるのが日常系の良いところである。
「……かわいいなあ」
前の会社に入社して一年も経たない頃。
メンタルがギリギリだった私は、こんな感じのアニメを観て、自分でも怖いくらいに涙を流した。
「……がんばってるなあ」
よく日常系アニメは中身が無いと言われる。それは大きな間違いで、日常アニメの登場人物達はいつも何かに一生懸命なのだ。だから可愛くて、微笑ましくて、癒される。自分も明日から頑張ろうという気持ちになれる。
一生懸命な姿はキラキラしている。
アニメだけの話じゃない。夢を追いかけている人は、物語の主人公みたいに輝いている。
「……すごかった」
この呟きはアニメの話ではない。
ほんの数時間前に終わったイベントの話である。
イベントに集まった人達は、目的を持っていた。
何か作りたい人。何か売りたい人。色々な人が集まって、子供のような目で語り合っていた。
「……あんな世界、あるんだ」
私の人生は良くも悪くも平凡である。
アニメやマンガで描かれる物語は、現実ではない夢物語だと思っていた。
もちろん現実にもキラキラした世界はあるのだと思う。
だけどそれは画面の向こう側にある話で、私とは無関係だと思っていた。
「……できるかな?」
オルラビシステム。
人生で一度だけ必死になったこと。
正直、誇らしかった。大切だった。
でもそれは、あっさりと私の手を離れてしまった。
あんな思いをするくらいなら何もしない方が良い。
そういう気持ちが心のどこかにある。だから、新社長から電話があった時は本当に怖かった。
だけど彼は……彼らは俯かなかった。
そしてキラキラと輝く時間を作り上げた。
私も、あんな風になりたい。
物語の主人公みたいに、何かを必死で追いかけてみたい。
「……私の夢って、何だろう?」
アニメを観ながら、ぼんやりと考える。
次第に眠気を感じ始めたけれど、まだ答えは出ない。
今の私には、これだと言える夢や目標が無い。
だけど未来のことは分からない。いつか、何か見つけられるかもしれない。
「……違う」
いつかなんて無い。
行動しなければ何も変わらない。
「……できるかな?」
未来のことは分からない。
もしかしたら、何もしなければ良かったと後悔する日が来るかもしれない。
正直、怖い。
それでも私は、キラキラと輝ける夢を探すことに決めたのだった。
■あとがき■
以上、完結です。
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