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淡い旋律の詩。  作者: konoha lemon
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Story4~Story5

Story4


「雨の降る町」




ここは"ドリーゼル町"


町と言う程発達はしていないが静かな静寂に満ちた場所である。


そこには夫婦が2人と帰る家の無い子供達多数が日々を施設で過ごしている。


今日も、この町には雨が静かに降っている。




「ねぇ、ロメリア?」


何かを両手でたくさん抱えて、少女がやってきた。少女とは"アオバ・カルディ"


彼女だけ、施設の仕事はほかの子達とは違う事をしている。主に、食事や掃除等 家事の方を全般任されている。


「何…?」


"ロメリア・フェラリルース" 彼女がこの施設に入ってから数年が経っていた。過去の彼女はまだあどけない顔が残っていたが、今ではそのあどけない顔も無い。


アオバに呼ばれてキョトンとしている。


「ナティさんがデュモ街で買ってきてほしい物があるんだって」


ナティとは、ロメリア達が住む施設の管理人である夫婦だ。


「でもなぁ…」


「行ってきてくれない?ほら、みんな何かしら作業に入っちゃってて…あんた今、暇そうだし」


少し悪戯っぽくアオバは笑った。


まったく聞き耳を持たない。


"デュモ街"と言うのは、ドリーゼル町の先にある少し大きい街である。


「私、デュモ街に行ったのってかなり前に一回きりだけだから…行けるか、分からない…」


最後の方の言葉は尻すぼみになってしまった。


かなり前、というのはロメリアがまだこの施設に来る前の話だ。


「あんた何年この町に住んでるの~!?私、今手が離せないからさ… バッグとメモ一応入れておくから!! そいじゃ!よろしくぅ!!」


そう言うと再び慌ただしく何か独り言を言いながら去っていった。


・・・。




視線は何故か手元の強引に渡されたバッグから目が離せなかった。


「ん~、行ってみるしかないかぁ」


ロメリアはバッグを肩に掛け、玄関へと向かっていった。


「結構降ってるな」


傘を手に取り、街へと出発した。


ドリーゼル町はいつもこんな感じだ。晴れている日の方が珍しい。


でも人々は雨を嫌っている訳ではない。むしろ、静寂に包まれているこの町が好きなのだ。




"ドリーゼル"それは「雨の降る町」―――――。




Story5


「買い物」




多少は迷ったが何とか目的地であるデュモ街へと着いた。


雨は小雨になっている。しかし、雨が降っているとは思えない程の店の活気と店主達の元気な声量が聞こえる。客もぼちぼちで、各々お洒落な傘をさしている。


是非、自分の店で自慢の品を見て行ってほしい買ってほしいと言わんばかりにあちらこちらで勧めてくる声が聞こえてくる。デュモ街はドリーゼル町と比べても何倍も広いし品揃えも豊富である。


「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん、何かをお探しですかな…?」


急に横からヌッと、明らかに自分に問いかけてくるおじさんがいる。


広い街だ、いっそドコに行けば目当てのものが売っているのか聞いてみよう。


「あの…このメモに書かれている物って何処に行けば売ってますか?」


おじさんは小さなメモ用紙を何故か演技がかった表情で覗き見る。そして、更に演技がかった顔で困った表情を見せる。


「いやー、困ったねぇ。お嬢ちゃん!これはウチの店にあるけど、まだ入荷してないんだ。あと数時間入荷にするのにかかってしまうんだがね…。どうする?一回家に帰るかい?」


頭に手を当てて「しまった」というような表情をしている。


別に今、商品が無いことに関してはこの店主おじさんは悪くないのだけれど…。


…。


「あ、あの。 待ってます。必ず、買って帰らなくちゃいけないので」


そうして、ぐしゃぐしゃにしてしまったメモをバッグにしまった。




―――




「ロメリア、遅いなぁ」


作業をしていたアオバの手が止まる。


「本当にあの子に任せて大丈夫なの?何かいまいち頼りないのよねぇ…」


声のする方へアオバが視線を移すと、ナティが居た。腕を組んで窓の方へ顔を背けた。


「間違いでしたか…?」


何だか自分の友達をそんな風に言われて少しむっとした。


アオバは、この施設の中では"可愛がられている方"だが本人はそんな贔屓に関しては特にどうとも思っていない。


「ま、私はあの子はどうなっても知らないから良いんだけど」


「…。 そうですか」






数時間後。


「お嬢ちゃん、頑張るねー!!そんなに大切な買い物なのかい?」


もうロメリアは顔を伏せていた。前髪で目が見えない状態だが、店主おじさんはロメリアにそう問いかけた。


「はい。」


(何も買って帰らなかったらナティさん怖いし、アオバにも申し訳ないしな)


少し雨が強くなってきた所で「遅くなってすいやせん!」とペコペコ頭を下げながら荷物を持った人が現れ、店主おじさんにその荷物と書類を慣れた手付きで手渡し何だかロメリアまでつられて軽く会釈をしてしまった。


そんなこんなでやっと目当ての品物が入ったらしい。店主おじさんが待ちかねていた様な顔をして


「さぁさ!お嬢ちゃん、これでやっと売れるよ。あ、そうだ。タダにしてあげようか!どうするどうする??」


急にタダにしてあげようか、だなんて今度はロメリアが困った。せっかくその分の代金をもらってきているのに。


「いえ、ちゃんと払います」


ロメリアがバッグを開けようとすると、店主おじさんが手で引き留める。


えっ、という表情でロメリアは店主おじさんを見やった。やけに引き留め方が紳士的なのが気になったようなそうでもないような。


「素直だなぁ!そういう子には本当にタダで売っちゃおう!」


そうしようそうしようと言わんばかりに、目当ての品物を包み始めた。


「あ、あの、でも…!」


引っ込み思案で内向的なロメリアは精一杯の抵抗をした。それでも、手を自分の顔の前でひらひらするのみだったが。


「がっはっは、大丈夫大丈夫!!ここは喜ぶべきところだよ、お嬢ちゃん。雨も強まってきたし、早く帰ったほうが良い。品物はこんな感じに包んでおいたからな!」


ニカッと眩しい笑顔で笑って見せる店主おじさん。


「あ、ああ ありがとうございます!」


少し、声が上ずってしまった。


深くお礼を言って包まれた品をバッグへとしまった。


「おうよ!また来た時には是非、我が店へと寄ってくれよな」


「はい!」


そう言って、ロメリアは駆け出した。早くドリーゼル街に帰ってコレを渡そう!

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