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…窓際には、君が  作者: たかさば


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キモい

「あ!カナキュン、こっちこっち!!」

「なんかめっちゃ遅かったね!!」

「もうじきお昼休み終わっちゃうけど…続き見る?」


 3限目の社会学の授業が始まる5分前。

 急ぎ足で教室に入った僕に声をかけてきたのは、一番後ろの席でマッタリと寛いでいる川村さんと、秋元さんと、笠寺さん。大崎さんは…何やらスマホに夢中になっている。


「うん、見る。反省会が盛り上がっちゃってね、時間がかかっちゃって…今日中にチェックしきれるかな」


 手渡されたタブレットを受け取り、画像を見ながらチェックアイコンを手早くタッチしていく。


 僕が今見ているのは、川村さんと大崎さんが撮ってくれた学園祭の写真だ。土曜・日曜と、頑張ってたくさん撮ってくれて、出店の様子や盛り上がっている学生さんたち、イベントの出し物などなど、大盛況の様子がよくわかる写真が満載で、本当にありがたいのなんのって。

 学園祭の魅力を余すところなく収めたこれらの写真は、在学中の学生限定で公開する予定だ。学生会のホームページにアルバムを作製し、自由にダウンロードできるようにすることになっているんだけど、一部公開する必要のないものなんかも混じっているので…チェック作業が必要なんだよね。朝からずっと見させてもらっていたんだけど…枚数が多すぎて全然チェックが追い付いていないのだ。


 思いがけず由香のカワイイ写真が紛れていたりするから気が抜けなくて、ついつい時間がかかっちゃうんだよね…。100%残してはいけないような恥ずかしい写真がシレッと紛れ込んでいたりするので、絶対に適当に流し見してはいけないタイプのやつもあるしさ?!

 ……この次兄との恥ずかしいなんちゃってポーズはカットだな。うっ…河合先生と手をつないでいるシーンは全部却下、却下!ああ、この由香の猫耳カワイイな、これはダウンロードしてプリントしよう……。


「うちらはもう見終わったんだ!いい写真いっぱいあったよ~!今年は豊作だね!!」

「てゆっか、もうチェックしなくてもいいじゃない?全部公開しちゃえば?別に問題ありそうな画像なかったし!カナキュンのドジっ子フォト、かなりレアだと思うよ!!!」

「はは…、それは断固拒否します」


 一応、僕のチェックが完了次第、タブレットのデータを東浦先輩に飛ばしてHPを更新してもらい、アルバムの公開という手はずになっているのだけれども。

 どうやら、早く見たいと公開を迫る要望がSNSグループ?にたんまり届いているらしく…ああそうか、だから大崎さんが対応に忙しいんだな。待たせて悪いなあとも思うけど、こちらにも都合があるので…我慢してもらうしかない。


 ……本当はもっと早めに学生会の反省会を切り上げてくる予定だったんだけど、思いのほか白熱しちゃったのがいけなかったんだよ。

 そもそも、今日の反省会はいろいろと問題が…予想外のハプニングが多すぎた。


 相川先輩は泣きながら学生会室に来るし、テストを終えた佐藤さんは走ってきたせいで息が切れて貧血おこしちゃうし、東浦先輩はとっておきのカヌレを結城先生に食べられて大暴れするし、どさくさに紛れて河合先生の仮歯が吹っ飛んで、それを小田原さんが踏んづけて破壊して…しっちゃかめっちゃかになっちゃってさ!!!


 とてもじゃないけど、まとまるものもまとまらなくて、あのへらへらしている森川さんですら閉口しちゃって、黙って書記の役目に徹していたという。

 無理やり『じゃあ来年もまたがんばりましょう、では解散』で締めてきたんだけど、疲労感がものすごいのなんのって。まだ若干心が疲れているというか、いまいちテンションが上がってこないというか。…あ、この由香とのツーショットなかなかうまく撮れているぞ。なんだい、このおかしな山は…って結城先生のおなかじゃないか。


「今日中に全部見るのは…難しいかもしれない。あと15分くらいあればイケそうなんだけど…みんなはこのあと、4限目ないんでしょう?続きは明日にしたほうがいいかも?」


 通常、授業が終われば学生は皆すみやかに帰路に就く。スクールバスもわりと授業後すぐの発車だし、電車も一本逃すと30分後になってしまうので、のんびりしている人はあまり見かけない。

 月曜の4限目は東洋美術史特講があるのだけど、このメンバーの中で取っているのは僕だけだから、みんなすぐに帰っちゃうんだよ。急げば一本前の電車やバスに乗れるからね。


「今日はバイトないし急いで帰らなくてもいいから、カナキュンの4限目始まるまでは残るよ!」

「うち、ちょっと書かないといけないレポートあるんだ~、一緒に残っていこっかな。図書館も行きたいし」

「私も…ちょっと……残るよ」

「私だけ先にバスで帰っちゃうけど、ごめんね?!」


 どうやら笠寺さん以外は、授業後も少し付き合ってくれるらしい。

 社会学の小林先生はご年配ということもあって早めに授業を切り上げることが多いので、いつも通りの流れであればたぶん…写真を確認する時間は取れるはずだ。


「いいの?、じゃあ…お言葉に甘えて最後までチェックさせてもらおうかな。…笠寺さん、気にしないでね?今日はコンビニバイトの日でしょう?」


 あと、323枚…、急いでチェックすれば、なんとかなりそうだ。とりあえずダメなやつだけ抜くことの集中して、気になるやつは公開されたあとでじっくり見させてもらおう。

 このあたりは…1日目の会場の写真が多いな。地味に時系列がごちゃごちゃになっているので、見ていて飽きないものの、気が抜けない。…あ、こんなところにジュースを買ってる由香と森川さんの姿が。


 ……、うん?

 この…やや風変わりなファッションに身を包んで、手をつないで微笑みあっている、二人は。

 思いがけず、サクサクと動かしていた手が…止まった。


「この人たち、ちょー目立ってたよね~!ファッションもイケてたし、すっごくかわいくて、めっちゃいい雰囲気で歩いてて!」


 僕の手が止まったのを目敏く見つけた川村さんが、タブレットをのぞき込んでつぶやいた。


「みんな見てたよねぇ。すごく自分たちの世界に浸ってたっていうか…、ちょっとびっくりした!」


 その言葉を聞いた秋元さんも、声を上げた。


 学園祭の時に現れた、学生会の…先輩の、姿。

 清水先輩と、堀井先輩の、ただならぬ雰囲気あふれる、ワンシーン。


 ……あの二人は、あの混みあう学園祭の…公共の場で、堂々と手をつないで移動をしていたんだよ。

 気軽に抱きついては、顔を寄せて…周りをドギマギとさせていたりして。


 僕が由香に対して色々と仕掛けるのとは、全く違うタイプではあったけれども。

 確実に、全くまわりを気にせず……、イチャイチャしていたのだ。


 それを見て、僕は……、仲がいいなあと、あたたかい目で見ていたわけだけれども。

 あんな風に、息の合った過不足のない関係を、うらやましいとさえ…思っていたのだけれども。


 だから…、僕は、反省会で、OBとの交流を進言してみようとしたんだ。


 ―――貴重な先輩の意見も聞けて、よかったと思います。それで…

 ―――騒いでただけだろ?!あいつらは!!

 ―――いやいやwww学生会の歴史を語ってくれた功労者だってwww

 ―――先輩たちが集客してくれたパターンもあると思うよ~

 ―――OB呼んで学生会を盛り上げるのもありかもですね

 ―――その場合謝礼などは?

 ―――…ご飯、焼き損ねた干物…おなかいっぱい…喜んでました……

 ―――モグモグ、食べた分だけ働いたごくん!!

 ―――来年ヨボウ!Let's send a letter♡

 ―――女子大向きのキャラだよね!ノリもいいし来てくれるんじゃな…ちょっと河合先生、それあたしのせんべい!!

 ―――うーん、でもあの先輩たち気持ち悪かったっすよ!距離感近すぎてなんてゆーんすかね、マジもんのレズってキモいんだなっって思ったっす!

 ―――あのなあ!!お前、そういう事は口にする時覚悟しろよ!!ホントデリカシーのかけらもない……


 僕は、すぐに……声が出せなかった。


 ぎゃあぎゃあと言い争いをしている小田原さんと河合先生の事を、どこか、部外者のような…気持ちで。


 ……他人事として、スルーしようと。


 ―――石橋先輩のはカラッとしてるし()()()()って感じがするんすけど、あれはガチレズって感じでねっちょりしててムリゲっていうか!!女子大ってホントにこういうのがいるんだってビビったんすよ?!


 思いがけず、自分の名前が出て、ギョッとしたというか……。

 おふざけと言われて、ビクッとしてしまったというか……。

 差別的な言い方に、ドン引きしてしまったというか……。


 僕は、無神経な発言を真正面から聞いてしまって……


「…カナキュン?なに、どうしたの?」

「……ああ、ごめん。ちょっと思い出しちゃって。この二人、学生会の先輩なんだよ。色々と…昔の事とか、教えてくれてさ。見た目はちょっと派手だけど、しっかりしたところもあって…」


 堀井先輩はかなり頼りがいがあったけど、清水先輩には若干、いやかなり…不穏な空気があった事はまあ、伏せておこう。


「え!!そうなの?!意外……」

「じゃあ…名前、知ってる?!」


「堀井茉奈先輩と、清水かお

「やっぱり!!!あのね、カナキュン、この人……」」


「はい、皆さんこんにちは。社会学の授業を始めますよ」


 大崎さんが何かを言いかけた時、小林先生が登壇したのだった。

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