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…窓際には、君が  作者: たかさば


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お疲れ会&学生会役員卒業パーティー

「はーい、それでは学園祭の大成功を祝しましてアーンド春奈ちゃんと麻衣ちゃんの学生会お疲れ会に、カンパーイ!!!」


「「「「「「「カンパーイ!!!」」」」」」」


 柳ヶ橋の人気の居酒屋の一番奥の座敷に、相川先輩のやや微妙な掛け声とジョッキのぶつかる音が響く。


 二日間続いた文化祭もいろいろとハプニングがあったものの何とか無事終了し、学生会メンバーと先生二人、由香、そしてついでに長兄・次兄・志田さんの仲間・次兄の会社の皆さんおよび学生部の人も乗り込んできて…打ち上げをしている。なんでも一緒に米を握っているうちに友情が芽生えたとか、何とか…?名刺交換なんかもしていたので、意外な縁がつながってこれ幸いと親睦を深めているようにも思える。来年の運営についての会議も兼ねていると言っていたけど…そんな人たちがゲラゲラと笑いながら手を叩いたりするの…?


 いい大人が女子大生に混じってキャピキャピするのもバツが悪いとかで、社会人の皆さんはふすまを半分開けた状態で隣の部屋にて盛り上がっているのだけど、時折長兄がこっちに来たそうな表情で様子を伺っているのがなんともいえない。隙を見つけてこちらの空いた場所に身体をねじ込もうとしているようだけど、残念ながら学生会メンバーも数がかなり増えたので…、ガタイのいいマッチョの入るスペースは見当たらない。


 そもそもこの座敷はゆとりがある方だけれども、もともとは12人用なんだよ。疲れが出ちゃった佐藤さんとバイトの都合で参加できない大下さんがいなくても総勢14人、しかもそのうち三人が重量級で…いくら小柄な女子が4人含まれていると言っても、密度がわりと高めになってしまっているのだ。仕方ないので長机の両端のお誕生席におっさんを配置して、なんとか全員収容されているような感じでさ。…まあ、僕としては、隣の由香とずいぶん距離が近くてちょっとしたご褒美感?があるけれども。


「彼方、なんでウーロン茶飲んでるの?去年『美少年』飲むって言ってたじゃない!ここ、美味しそうなカクテルたくさんあるのに、お酒…飲まなくていいの?」


 僕は…夏に、お酒にあまり耐性がないという事がわかったのでね。

 みっともない姿を晒すのは…もうごりごりというか。


 スマートな立ち居振る舞いができるよう、公の場ではアルコール類に属するものはセーブすると…夏のホテルの朝食バイキング会場で自主的に誓っていたりするのだ。

 そもそも、酔うとたちの悪いタイプが何人かいるので、シラフの人間は多い方が良いはずなんだよ。…まあ、酔ってしまって、酔っ払ってかわいいことになっている女子を見逃したくない気持ちもあっての事なんだけれども。


「はは、今日は…お酒に酔って足もとが覚束おぼつかなくなった由香を…優しく抱きとめないといけないからね、僕はジュースにしておくと決めているんだよ。安心して我を失っていいからね」


 大きな氷の入ったピンク色のグラスを持った由香に、右目だけ閉じてメッセージを送る。両手をそっと添えているのは…ピーチツリーフィズだったかな。まだほとんど減っていないのに、ずいぶんほっぺたと目元のあたりの血色が良い…おや、どんどんばっちりアイメイクの施されたカラコン入りの目が見開いていくぞ。


「~ッ!!!あたし、この一杯しか飲まないからね?!足元はピンシャンしてるからお気になさらず!!!」


 なんで由香はプンプンしてるんだい。


「ちょwwwまただよwww」

「酔ってないのにこの物言い…桜子ちゃん、何で石橋君ていつもこんな感じ?!」

「石橋君のタラシもこれで見納めか…今日はよく目に焼き付けておこう」


 僕の前に座っている三上先輩も、早瀬先輩も…ずいぶん血色の良い表情でニコニコとしている。一杯目のドリンクがもう空になっているあたり、さすがの酒豪っぷりを感じ…、何だ、森川さんもビールの入ったグラスがほぼ空になっているぞ。これはお酌して差し上げるべきか…?


 去年は帰れなくなるとヤバいと思って自制してソフトドリンクで我慢していたそうで、今年はガッツリ飲みたいと言ってたんだよね。長兄が安全に確実に送り届けるから好きなだけ飲めと息巻いていたから、今日はリミッターを解除して挑むらしくてさ。ドリンクの注文表を見ながらやけにいい顔をしているじゃないか…下手に注ぎ足さない方がよさそうだ。飲み過ぎて取り返しのつかない事故でも発生したら大問題だし。


「はるるん、次どれいくかいwwあたしアイスワインのもwww」

「あ、じゃあグラスじゃなくって一本頼んではんぶんこしようよ」


 ちびっ子コンビの仲の良い感じも…今日で最後かと思うとぐっと来るな。僕もこののどかでちんまりとした平和な光景をよく目に焼き付けておこう。…うん、せっかくだし画像で残すかな。僕はスマホをこっそり取出して、写真を何枚か…よし、良い感じのシーンが撮れたぞ。満足して横を向くと、隣の由香もパシャパシャやっている…こちらは主に食事の写真を撮りたいらしい。


 今日は四年生である三上先輩と早瀬先輩と楠先輩の学生会卒業パーティーも兼ねているので、昨年度よりもゴージャスなメニューが並んでいる。今回は飲み食べ放題コースにしたんだよね。最初に人気メニューがずらっと並んで、随時好きなメニューが追加注文できるタイプのコースでさ。わりと圧巻だし、確かに写真におさめておきたい気もする。このあと大きなケーキなんかも出てくる予定なので、そぞかし良い絵が撮れるに違いないぞ。あとでまとめて送ってもらおう。


「すんませーん、カルピスのピッチャーおかわり―!あとジャンボおにぎりね!!」

「こっちはスタミナ串十本とクリームソーダ!!!」

「ちょっとあたしのジャンボエビフライ食べたの誰?!」

「しっぽと頭食ったのはあっしッス!!!」

「ももちゃんあたしの山盛りポテトフライあげるから!!!」

「桃花さん、私の肉巻きおにぎり半分食べてくれません?食べ切れなくて!」

「なんか今日のここっちめっちゃ声大きい!!What happened?」

「モモちゃんせんぱ~い!ウーロン茶のおかわりきたよ~♡」

「あ、楠先輩そのクレープパフェ私のです!!チョコパフェははらおっちの!」

「ひょわっ!!!ご、ごめ、プスーンが落っこちてっ!!!」


 この騒がしい感じも…動画に残しておくかな。テーブルの上にずらりと並んだ料理を撮りつつ、メンバーの表情も収めておく。もうこのメンバーで集まる事もないからね。なんとなく、物寂しくなってしまうのは、僕が素面だからだろうか…。やっぱりちょっとだけ飲もうかな…。


「おねーさん、カルアミルク追加で―!!」

「ええとねwwwあたしは冷凍ミカンサワーとヨーグルトサワーでwww」

「ピーチウーロンお願いしまーす」

「スクリュードライバーとお水下さい」

「刺身盛りとイカゲソ唐揚げ、あと牛乳ピッチャーでちょうだい!!」

「焼き鳥盛り合わせ、付け合わせのキャベツはなしでいいや!!!」

「野菜食べないとまた太りますよ…」

「あ、ごめん!けい君からLINE来た♡ちょっと電話してくる♡」

「ちょっと誰?!あたしのポテトサラダからトマトだけ抜いて食ったのは!!!」

「すまんッス!!お姉さん冷やしトマト下さいッス!!!」

「ねえねえこの揚げ出し美味しいよ、桃花さんの分はーいドゾー!!」

「チェリーパイはありませんかー!」

「パイン&チェリー・ソーダならあるよ!」

「ティアパイセン杏仁豆腐食べる〜?」

「ひゃわ、この冷やし中華はうま、うみゃいでちゅ!えと、マヨニーズくだちい!」


 ちなみに今回の打ち上げ会の費用は、屋台の売り上げから福利厚生費として落とされる。だから実質タダ、食べた方が、飲んだ方がお得だと言う気持ちがあるからか…はっきり言ってみんなの注文するスピードがヤバい。特にお誕生席の人々と、真ん中でウーロン茶を一気飲みしている女子!!!


 食べるスピードが速すぎて注文が間に合わず、テーブルの上にはすっからかんになったお皿やグラスがどんどん増えている。まだ始まって30分もたってないのにこんな調子とか…、リザーブしている三時間でどれほどの消費が生まれてしまうのか。というかこれ、お店の売り上げ大丈夫なの?まさかとは思うけど今日の飲み会がきっかけでつぶれたりしないよね…。若干ひやひやしながら、枝豆に手を伸ばす…。


「あーもー!!空のグラス多すぎっすよ!!あ、片付けるっすよ、空いた皿もらいマース!!」


 ガツガツむしゃむしゃグビグビいっているメンバーが多い中、いつになく小田原さんががんばってくれていて…一番空気を読まずに飲み食いをすると思っていた事もあり、若干驚きのようなものを感じている僕がここに。空になったグラスが…雑に座敷出入り口のところにずらりと並んでいる。…手伝うか。


「小田原さん、そのグラスは重ねたらダメだよ。千葉先生にめちゃめちゃ怒られてしまうからね、来年テーブルマナーの授業取るんだったら、気をつけて」

「そうなんスね!!ありがとうございますッス!!」


 ややガチャガチャと音をたてて信じられないまとめ方をしているものの、空いたお皿やグラスを率先して片付けていて…好感度は上昇中だ。


「先輩たちそんなに飲んでおもらしとかしないで下さいッすよ?!ハイハイ、食べ散らかした皿ももらいます!!きったねー食い方してんのは誰ッすか?!お里が知れるっすよ?!もー、置く場所ねーッすけど?!もーいーや、畳の上に置いてくっす!」


 相変わらずのデリカシーのない感じの発言はさておき、気が利いていることは間違いない…。


「小田原さん、畳に直接置いちゃうと水滴がしみこんじゃうから・・僕お盆もらってくるよ、それまで待ってて・・・」

「まてねーッス!!つかそもそも地面に置くから邪魔になるんじゃねーっすかね…あ、そーだ!!この下んとこの戸棚、ここの奥にでも入れといちゃお・・・」


 …シャタッ!!!


「・・・うん?なんすか、これ!!」


「ッ…ちょ、小田原さんっ!!!」


 がさつで思い切りの良い、隠し事は絶対しないあけすけ上等の後輩が開けたのは・・・お別れ会の最後に渡そうと思ってた…花束の入った押し入れ!!!


「うわ!!!きれいな花束!!あと・・・クマ?!」


 先輩たちを驚かせようと思って、宴会用の座布団が入ってる場所の片隅にサプライズ用のアイテムを仕込ませてくださいとわざわざお店に頼み込んだのに!!誰だ、ちゃんと打合せしておかなかったのは?!せっかくのサプライズが、目の前で台無しにっ!!!せっかく森川さんが作った花束!!僕も綿を詰めたテディベアッ!!!


「は、ハイ~、じゃあね、先に花束&記念品贈呈しちゃおうかな?!酔っ払っちゃうとわけわかんなくなっちゃうからね!!ハイ、春奈ちゃん、麻衣ちゃん、瑞希ちゃん、こちらにどーぞ!!!」


 なにげに気の利く相川先輩がフォローしているけれどもっ!!!


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