ギャルは何を思う?
ごくごく普通のアパートに山本アジサイは帰宅した。
金に余裕はあるが、一人暮らしゆえ、あまり広い家は必要ないと今のところ思っているがゆえのアパート暮らしのようである。
彼女は風呂に入って汚れや汗を流した後、パジャマに着替えて居間へとやってくる。
牛乳パックからコップにミルクを注いで、それを飲む。
無造作にリモコンを取り、テレビをつけてみた。
放送しているのは2004年に放送していたドラマである。
「このドラマ、あーしが元にいた2004年に放送していたドラマの続きなんだよねぇ」
あっそういえばとハッとなるアジサイ。
「そういや、テレビ買う時、このテレビ以外ダメって言われたっけ。それって、自分のいた時代の娯楽しか触れちゃあダメってこと? 今まではこの世界もあーしがいた世界と同じ時間の流れなのかと思っていたけど、2018年の未来から来たハシル君の登場でワケ分かんなくなってきたんですけど……」
再びミルクをゴクリと口にする。
「明日ハシル君に訊いてみようっか。ホテルにも多分テレビあると思うからどの時代のテレビを見たのかをね」
コップをちゃぶ台に置き、アジサイはバタンとカーペットの敷かれた床に横たわる。
「考えたり気づいたらどんどん謎が増えていく……。何このわけわかめ世界さん。でも……」
ふとガラケーを開き、保存してある写真ファイルを閲覧するアジサイ。
そこには女友達と一緒に写った写真の数々が保存されてあった。
彼女には確かにいた。友人が数名。
しかし、その女友達は彼氏を作り、彼氏との時間を優先するようになっていった。
アジサイには彼氏がいなかったし、特に好意を持つような相手もいなかった。
なので、女友達との共通性が減ってしまっていったのだ。
「あーしはどうも気が乗らなかったんだよねぇ。友達と友達でい続ける為に好きな人いないのに彼氏を作るってことにさぁ~」
なんでもかんでも友達に・他人に合わせるべきなのか? 迎合すべきなのか?
その疑問が女友達との乖離をきっかけにアジサイの脳裏で深く考えるようになる。
その結果、アジサイは孤立を選ぶことになる。
かつての女友達からは自分らの世界についてこられなくなった”脱落者”として認定された。
こんな落ちこぼれと一緒にされたくないとその子たちに思われ、無視されるようになったのだ。
そして退屈になった。呆然と事務的に高校との行き来をする生活の中、楽しい事でもなにかないだろうかと思っていた。
矢先に転機が訪れる。そう、偶然にも異世界へとつながるゲートを発見してしまったのだ。
回想から戻り、現在。
今のアジサイには煩わしい人間関係などなくなった。
「この世界、不気味っちゃあ不気味だけど、ギスギス人間関係ゲームやらなくて済むだけマシかぁ~」
かつて居た世界よりも心地よいことに変わりはないとアジサイは改めて思うのであった。