謎が謎を呼んでいるようなそうでもないような
レース終了後、報酬が天より降ってきた。
勝者のハシルに10万円。
敗者のアジサイには5万円。
お金が手に入ったのは嬉しいハズなのだが、今はそれどころではなかった。
二人が両方とも気になっている話をファミレスの晩飯を交え、話をする。
「あの子供が人間じゃあないっての、ぜーんぜん知らなかったわぁ」
「お前も初めて見たのか……。ってことはもしかしたら別世界からやってきた俺たち以外、人間じゃねぇのかもな」
「えー嘘~」
「それどころか、俺たちも人間じゃあなくなって……はないか? 現に今飯普通に食えているからな」
「だよねー。tっていうか、今更なんだけどうちら以外食事していないね」
ファミレス内を見渡すも雑談している人間はいても食事をしている人間は確かにいない。
「そーだ。それにそれにあーしもこの前生理来たしー」
苦々しい顔になり、ハシルは「食事中に下ネタやめろよ……」と独り言ちる。
アジサイはてへ~とおどける。軽い奴だ。
「やれやれ。お前から情報を知るどころか、謎が増えちまったとはなぁ」
「本当それー。ヤバイね~(苦笑)」
水をぐぃっと一杯飲んでアジサイは一呼吸置く。少し表情が真面目になった気がした。
「ま、あーしもこの世界について全部は知らないワケ。でも、知っている限りのことは話すね」
「おう」
「まず、あーしが最初にこの世界に来た場所はあのオフロードコース。君と同じ」
「あの辺に出入り口が発生しやすいってことかもな」
「多分ねー。そんでもってこの世界は何故か言葉もお金もあーしらの世界と共通。その理由は分かんない」
「そうか」
「あーそれとね。この世界について知ろうと思って図書館行ってみたんだけど、これが無いんだって」
「何が?」
「この世界の歴史の本……」
「歴史が……ない?」
歴史がないとは一体どういうことなのか?
楽しく生きていける仕組みはあるものの、不気味さが付きまとう世界だとハシルたちは思わずにはいられないのであった。