初陣! ウインディファルコンVSローゼンエターニア
夕陽が照らすコース広場。
子供らの姿はすでになく、どうやら暗くならないうちに帰宅したようだ。
購入したマシンを組み立て終えたハシルはテスト走行をしていた。
「よし、ドリフトだ!」
コーナーに差し掛かり、白&青のマシンは主の命令を受けて、車体を傾かせてドリフト走行をした。華麗にコーナーを曲がり終え、今度は「今度は直進だウインディファルコン!」という言霊を受けて、ハシルの愛機、ウィンディファルコンは真っ直ぐ直線を疾駆した。
「魔導四駆にはクリスタルユニットよ呼ばれる鉱物パーツが存在する。こいつは触れた者の命令をマシンに伝達する中枢パーツみたいな役割を果たす。こいつのお陰でマシンがレーサーの思い通りに走ってくれるってワケだぁ」
うれしさのあまり、ハシルはにやける。
「かーっ、スッゲェなこれ。ミニ四レーサーには夢の一品だろ。ミニ四駆の場合、見守るだけだもんなぁ」
ハシルはジャンプし、ウインディファルコンの前へと立ち、手のひらで前を遮ってマシンをキャッチ。この時、そういえばとハッとなる。
「あ! 止まるよう命令すれば止まるんじゃねぇか。ミニ四駆の時の癖がつい出ちまったな(苦笑)」
ハシルはマシンのシャーシ裏にあるスイッチをオフにしてモーターボックスを交換し始める。
「ノーマルモーターでのテスト走行はここまでだ。そろそろ本番用のモーターをちょいと慣らし運転させておくかぁ」
着々と魔導四駆について理解を深め、チューンナップさせていくハシルであった。
10分後。練習走行はひとまず終了。ハシルは最終メンテナンスに勤しんでいた。
そこへ鼻歌交じりで軽快な足取りの少女が。あのギャル、アジサイである。
「おー? やってる、やってるぅ~」
「そうか。もうそんな時間になっていたか」
「最終調整、完了って感じ?」
「さぁな。走りで語ってやるよ。レーサーだからな」
アジサイは口笛を軽く吹いて、
「フュ~ッ。カッコイイ~♪ さっすが未来人~」
「年齢は同じなんだけどな(笑)」
ハシルは立ち上がり、アジサイへ愛機、ウイニングファルコンを示す。
「おーし! 待ちに待った勝負だ!」
スタートライン前にハシルとアジサイが並び、駆動中のマシンを構え待機する。
「じゃま、スタートコール行きますかぁ。レディー?」
アジサイが始めるスタートコールを受け、ハシルは真剣な面持ちになる。
「ゴーッ!」
その掛け声とともにマシンは持ち主の手から離れ、コース上へと自由に駆けていった。
このレースの勝敗は如何に……?