まさかのギャル遭遇!?
早速、模型店内のある魔導四駆コーナーを訪れ、置かれた商品を吟味していく。
ふむふむ。なるほどなと呟きながら。
「ノーマルモーターは同梱しているけど、こいつは所詮慣らし運転用。実践じゃあ出力弱くて使えねぇ。ちゃんとした対戦用モーターも買わないとな。あと、オフロード用タイヤとこの世界の電池も買っていくか。工具や慣らし用の電池は持ってきた分で間に合うだろ」
店内にまいどありーと店長のおっちゃんの声が響いた。
模型店を後にし、ハシルは今まで来た道へ戻る。
「とりあえず、子供らがレースしていたあの広場でも行くか。流石に手持ちでホテル代払うのは厳しい。今日は野宿しよう。途中、コンビニっぽいのあったな。そこで晩飯買うとするか」
ひとまずの計画を立てて、歩いている途中、ハシルへと接近してくる人影……。
「もしかして君がアギたちに模型店の場所教えてもらった人?」
「ん? 誰だ?」
ハシルは顔を上げてみるとそこには高校生=自分と同じぐらいの少女がいた。
ハデにウェーブ掛かった長髪に露出度高く着崩した学生服。いわゆるギャルだった。
谷間もくっきり見えるようにしており、健康的な快活セクシーギャルといったところか。
「俺に何か用か?」
「用がなきゃ来ないっつーの。まず、こっちから質問。君さ、別の世界。つか、現代日本から来たっしょ?」
「なんでそう思うんだ?」
このギャルの真意がよくわからないので、こちらも探りを入れるような返しをしよう。
ハシルはそう判断した。
「住人なら質問しないような質問したからじゃん? 魔導四駆をイマドキ知らない上に今更欲しがる人なんて別世界の人しか居ないっしょ」
「で、別世界の人間だったらどうだと言うんだ?」
カマを掛けるようにハシルは問う。
「いやぁ~。実はあーしもこの世界の人間じゃあないんだぁ」
けろっとフランクに。ギャル特有の明るい口調でそう告白した。
「あーしの名前はアジサイ。2004年の埼玉から来たJKだし」
「に、2004年? 俺は工藤ハシル。2018年の東京から謎のゲートをくぐってここへ来た」
「2018!? うっそぉ~。未来人じゃ~ん」
「まぁでも年齢は同じだろ。俺は高校2年。そっちは?」
「高2!? 偶然~。あーしも高2だしー。でも、同級生って感じしない(笑)。ウケル」
「(汗)ウケてどうするんだよ……。まぁいいや。アジサイはここにきてどのぐらい経つ?」
「そんな長くないよー。3か月ぐらいかなー。ほかに聞きたいことある? 同郷ならギャル人情的にちょいと助けてやろうっかなーっと思って来たんだけど」
しばし逡巡するハシル。
「そうだ。アジサイはこいつ、魔導四駆を持っているか?」
「とーぜん。この世界に生きていくなら持ってなきゃダメっしょ!」
そう言って彼女は薄紫のボディに赤い花柄模様を持つ四駆ホビーマシンをハシルへと翳した。
「ローゼンエターニア。これがあーしのマシン? イケてるっしょ!」
「これ以上の情報はレースで勝ってからにするよ。そっちの方がおもしれぇからな。どうよ?」
ニヤリとやんちゃに笑んだハシル。
「いいねぇ。その勝負、ノった。負けても勝っても金が降ってくる以上、やらない理由なんかないよねー」
さすがはギャル。実に物分かりが良く、ノリも良い。
「ま、金が欲しいってのもあるんだけどな。だがあいにく俺はまだマシンを組み立てていない。それまで待ってくれるか?」
「いいよー。おけおけー。んでぇ、場所は何処でやんの?」
「子供らが遊んでいた広場のコース。慰安はそこぐらいしか知らねぇからそこで勝負だ」
「おけー。んじゃ、1時間後に行くわー。それまでスイーツ食って来るし」
「分かった。一時間後な」
ハシルとアジサイは勝負の約束を終え、ひとまず別離したのだった。
時代が違うとはいえ、日本からこの異世界へと来た人間が他にも居たとは。
謎は深まるばかりだが、謎を知る楽しみとレースをする楽しみを胸にハシルは広場へと戻り、大きな岩の上でマシンを組み立てていくのであった。
ひたすら黙々と。真剣に。