〜プロローグ〜 ハジメテノデスカイ⑧
「…」
「…」
「…え?」
「血塗ラレタ」
「サバイバル」
「修学旅行?」
その場にいた全員が唖然としていた。
それは、私も変わらなかった。
「こんなことだろうと思ったぜ」
橋田さんはこんな時でも冷静だった。
まるで、このことがあらかじめわかってたかのような反応。
そんなはずはないとは思うけど…
「え…?やだよ…!家に帰らせてよ…」
花ちゃんは殺戮ちゃんに必死に訴えかける。
「帰らせてって言って本当に帰らせると思う?♡バーカ、バーカ♡」
「…」
花ちゃんの顔は一瞬にして青ざめた。
でも、こんなのは何かの冗談。
私はそう思っていた。
「いいねいいね♡その最高に困った顔♡私好きだわ。はぁはぁ、ゾクゾクしてきちゃった♡」
殺戮ちゃんの顔はおかしかった。
青ざめている花ちゃんとは対照的に殺戮ちゃんの顔は真っ赤になっていた。
「ふざけないで、私は帰るから」
上村さんは不機嫌そうに言った。
みんな同じ気持ちだ。
私だって帰りたい。
こんなわけわからないことを言う子に付き合ってる場合じゃない。
すると、上村さんの口が動いた。
「だって私には――」
「帰り方知ってるの?♡、ゲロやば♡でもさっきそこのぶりっ子が言ってた通り、出口は閉まってるわよ♡」
殺戮ちゃんは花ちゃんを指差して言った。
「ぶりっ…子…」
「おい、待て。おかしくないか?なぜその場にいなかったお前がその話を知っている?」
元山さんも口を開く。
確かに元山さんの言う通りだ。
あの時いたのは私達11人で、あの子はいなかったはず…
「その疑問も含めちゃって今から事前指導を行いまーす♡あ、今までのは入学式ってことにしといてー♡というわけでー、いえーい♡いえーい♡パチパチパチパチー♡」
「…」
いつまでこの話は続くの?
みんなも何が起こってるのか理解できていないみたいだし…
突然、事前指導とか言い出した少女はガラケーを全員分配り始めた。
「はいこれ、ガラケーだよ♡昔流行ったよねー♡でも、私達の世代だとスマホかな♡」
「ですね〜」
殺戮ちゃん「それ、しおりでもあるから無くしたら殺戮しちゃうから気をつけてね♡」
どういうつもり?ガラケーって古くない?
スマホじゃなくて?
いや、そんなことは今はどうでもいいか。
「これで全員っと♡じゃあ、電源つけてみて♡」
全員に配り終わったところで説明をし始めた。
本当なら聞きたくないところだけど、やらなくちゃなにか言われそうだし…
「一様、ガラケー触ったことのない人のために説明するけど、開いて真ん中の右あたりにあるのが電源ボタンね♡そこの長押ししてみて♡」
私はガラケーはあまり触ったことがないから説明通りに電源をつけてみた。
他の人たちもガラケーを触り出す。
橋田さんや上村さんたちでさえも渋々(しぶしぶ)触りだした。
「私の名前が表示された!?」
画面に最初に映ったのは、それぞれの持ち主の名前のようだ。
「みんな押せた?♡じゃあ、そこのメニューからしおりってところを押してみて♡流石に十字キーとか決定キーの説明はいらないよね♡分かってなかったら殺戮しちゃうから♡」
この子、殺戮殺戮ばっかいってるけど、口癖なのかな?
まあ、名前に殺戮ってつくだけのことはあるな。
って、そんなことはどうでもいいか。
「そこの束縛ってところを押してみて♡」
「なに!?人を束縛など、あってはならん!俺が許さんぞー!そもそもだな誘拐や監禁は犯罪なんだぞっ!だがな、今ならまだ間に合うかもしれない。さあ、先生も付いていってあげるから自首を…」
畑山さんは起こっていた。
ここには畑山さんの生徒たちもいる。
守らなくてはいけないと思ったのだろう。
「うっさいなぁー♡今、なにもわかっていない君たちのためにこの殺戮界で一番可愛い殺戮ちゃんがありがたーく教えてあげてるんだから、口挟まれちゃ出発出来ないじゃん♡」
「出発だと?なんのことだ?」
元山さんが聞き返す。
でも、彼女がしたのは恐ろしいことだった。
「だから、そこの熱血脳内お花畑バカは少し黙ってて♡」
そう言うと、殺戮ちゃんは呪文のような言葉を唱えた。
何か嫌な予感がする…
なんだろう、この胸騒ぎは…
「殺戮魔法、ロッド♡」
「なにしてるの?あれ?」
周りの視線は殺戮ちゃんに向かう。
しばらくすると、杖が出てきてそれを畑山さんに向けた。
「いっせーのーで…」
「あ?お前なに言って...」
「どーん!♡」
畑山さんの首は、一瞬にして爆発した。
さっきまで息をしていた畑山さんが首だけがなくなり、胴体はその場で倒れた。
「くっ」
「!?」
「はぁ…」
「きゃーーー!!」
さっきまで唖然としていた人たちが一気に表情が固まる。
「あー♡殺すのって本当に快感ね♡」
あたりに血の匂いが充満した。
狂ってる。
この子はもう異常だ。
私たちはどうすればいいの…?