〜プロローグ〜 ハジメテノデスカイ⑦
「この空気、絶対やばいっての分からんのか?」
ガラの悪い男性はニヤつきながら言った。
何が面白いのかが理解できない。
「それは、誘拐や監禁だってされてるわけですけど…」
「それだけじゃねえ。これから何らかのゲームが始まると俺はみた」
どうしてそんな発想ができるのかも理解できなかった。
この人は何か知ってるの?
「貴方は…?」
非現実的な考えをしている男性にそんなことを言ってしまった。
「俺は、橋田敬三。芸能事務所を営業している」
橋田さんは怖い口調で自己紹介をした。
「芸能事務所?」
私も芸能事務所に入っているけど、どこの事務所だろう?
私の知ってるところかな?
「とにかく、ここに集まれってこと自体が罠かもしれない。もう9時は過ぎたぞ。何も起きないなら俺も帰るぞ」
橋田さんは私たちに背を向けて扉へ向かう。
「だから、閉まってるっていってんじゃん」
「じゃあ、お元気で」
橋田さんも司令室から出て行こうとしたその時――
「何か…来る…」
ドドドンと地響きの音。
そして、この足音。
扉の奥から聞こえる。
「おらおらおらおらおら♡おらー♡」
外からは若い少女の声が聞こえてくる。
そして、その音はだんだんと大きくなっていく。
「いやー!離せ離せ離せよっ!」
上村さんの声も聞こえる。
一体、外で何が起きているの?
直後、扉の方から凄い爆風が吹き、煙で部屋が覆われた。
しばらくすると煙が消え始めた。
「けほっ、けほっ…何…?」
私だけでなくみんなも咳き込んでいた。
「なに?なんなの!」
「血のあるところに殺戮ちゃん参上!!♡人呼んで、殺戮ちゃん、参上!!♡あ、二回言っちゃった♡てへっ♡」
突然、殺戮ちゃんと名乗るドレスを着た金髪の少女が大型モニターの前まで立ってそう言った。
「まったくもー、上村ちゃん、逃げちゃダメでしょ?♡走るの大変だったんだからー♡」
殺戮ちゃんはなぜか呆れていた。
突然出てきたと思ったらなんなの…!?
「あ、廊下は走っちゃダメって子供の頃教えて貰ったんだんだったー♡ま、そいつうざかったから、殺したけどね♡」
「なんなの、こいつ…!」
殺戮ちゃんはずっと掴んでいた上村さんの襟を離した。
状況から察するに、殺戮ちゃんっていう子が私達を呼んで、帰ろうとした上村さんを捕まえてここまで扉も壊れるくらいに派手に登場したと…
あれ、橋田さんは?
「痛ってえなぁ!何かぶつかったと思ったら…」
そこには、爆風によって吹き飛ばされた橋田さんが壁にもたれかかっていた。
「ごめんごめーん♡ついでに、殺しときゃよかった?♡あ、それじゃあつまんないか、だって君達は今から血塗られたサバイバル修学旅行に行ってもらうんだから♡」