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第1章 〜キミヲマモリボクハシヌ〜 ➖探索編1➖④

「次は誰が言う?」


 元山さんが声をかけ、辺りを見渡す。

 辺りも困惑している中、最初に反応したのは――


「はーい!花たちでーす!」


 そう言うと、花ちゃんと彩里ちゃんが席から立ち上がった。あの2人も同じ場所を探索したのかな。


「あのね〜、花たちはね〜、マートに行ってきたの!」


 どうだと言わんばかりの顔でみんなの方を見る。

 いや、そんな顔で見られても……


「マートッテイウト、スーパーマーケットミタイナトコロデスカー?」


「はい、マートには色々ありました。日常的なものから、普段使わないものまで」


 ここにはそんなところもあるのか。品揃えが充実しているなら、生活には困らなそうではあるけど……


「普段使わないもの?」


「うん、スパナとか電子回路とか……」


 本当に普段使わないものだな。そんなもの、誰が使うんだか――


「まあ、俺が使うようなやつが多いな。使う予定はないが」


 と思ったけど、ここに1人いた。元山さんはシステムエンジニアだからこういうのを使うんだろうな。


「きゃはっ!じゃあ、困ったらマートに行けばいいんだね!」


「あんたたちって本当、頭の回らないお猿さんだこと」


 上村さんが挑発的な発言をする。

 やばい、そんなこと言ったらまた畑山さんが――


 って、川山さんが畑山さんに話してくれてるお陰で聞こえてなかったみたいで良かった。


「そこのあんた?何ぼーっとしてるのよ!まさか、あんたまで分からないなんて言わないでしょうね?」


 上村さんは私に向かって話しかけていた。クレーマー対応をしている人たちの気持ちがよくわかる。


「え?なんのことですか?」


「あー、もういい。イライラするな。いい?私が教えてあげるからよく聞いときなさい」


 イライラしだした上村さんに、みんなは呆れて何も言わなかった。上村さんといい、橋田さんといい、なんでみんな空気を悪くするかな。


「マートって、私たちがいるところでは、さっきも誰かが言った通り、スーパーみたいなものでしょ?じゃあ、お金がいるんじゃないの?」


 お金か。たしかに、当たり前だけど、普通の買い物だとお金がいる。そのことを上村さんは言いたいのだろう。


「そのとおーり!♡」


「マタデターーー!」


 またもや、どこからともなく殺戮ちゃんが机の上に現れた。何の用できたのやら。


「なによ?♡美少女をお化けみたいに言わないでくれる?♡こらー、だからそこスカートの中見なーい♡」


 殺戮ちゃんは、またしても私を指差してそう言った。黒色の布が自然と見えてしまう。


「あなたね?勝手に机の上に乗って何言ってるの?」


「まあまあ、落ち着きたまえよ♡」


 殺戮ちゃんは手で私を落ち着かせようとする。

 まあ、落ち着いているんだけど。


「おい、何しにきた?さっさと失せろ、殺人鬼め」


「なによ♡さっき、おい、待て!…とか言ってたくせに〜♡あ、もしかして、私のことが好きとか!?♡」


 元山さんに向かってよくわからないことを言い出す。何を行っているんだか。


「黙れ。聞こえてたくせに待たなかったってことは、俺の質問に答える気がないんだろ?」


「分かってんじゃん♡」


 答える気がないからあの場を去ったのか。言いたいことだけ言って消えるなんて、自分勝手な子だな。


「で?あんた、何しにきたの?」


「あ、そうそう♡言い忘れてたことがあってね、上村ちゃんの言う通りだよー♡」


「は?」


 上村さんが言ったことといえば、お金のことだけど、もしかして――


「マートには、お金が入りまーす♡」


「え?勝手に持ってっていんじゃないの!?」


 花ちゃんはやっぱり、勝手に持ってっていいものだと思ってたんだ。まあ、そんなわけないか。


「ほら。このバカ、分かってなかった」


「当たり前じゃーん♡お金払わず、持ってくなんて泥棒と一緒じゃなーい♡」


 こんな状況で泥棒も何もないでしょ。でも、お金なんて持ってないけど……


「もし、勝手に持ってったらどうなるですか〜」


「殺戮しちゃう♡」


「そんなあっさりと!」


 物を盗んだだけで殺されちゃうなんて、普段じゃ考えられないけど……

 盗む気はないから別に関係ないか。


「というわけで、盗んだら殺戮しちゃうから束縛に追加しとくね〜♡」


 ピコンと音がポケットの中から鳴る。私は、ケータイを取り出して、中を確認する。


 (16.マートにある商品をお金を払わずに、勝手に持ち出してはいけません。)


 束縛に追加されたということか。下手なことができないな。


「ちなみに、お金の単価はなんだ?」


 元山さんの機嫌は治り、殺戮ちゃんに妙な質問をする。何を考えているのだろうか。


「え?♡そんなこと聞いてどうすんのよ?♡」


「為替だよ。俺の趣味は為替でね、ここを出たらその単価を日本円にして儲けれるだろ?もちろん、日本円でもいいぞ」


 なんか、モトヤマさん、今までに見たことがないくらいに目が輝いてる……大丈夫なのかな?


「ん?♡SPよ♡殺戮ポイントの略ね♡」


 何かにつけて殺戮とつける殺戮ちゃんも、今更ながら、改めて異常と感じる。


「ふざけるな。そんな単価聞いたことがないぞ」


「当たり前じゃーん♡ここ限定の単価だからね♡でも、安心しなさーい♡ここを出たらちゃんと私が替えてあげるから♡」


 替える?それはもしかして、元山さんが言うような為替というやつなのかな?私は為替とかよくわからないけど、なんだか、嫌な予感がする……


「なに!?で、いくらだ!?」


 元山さんの目は、瞳孔がすごい開いているほどに、殺戮ちゃんに問いただす。


 それはまるで、狂気に満ちた目だった。


「お金の食いつきが半端じゃないですね〜」


「……」


 あれ?今一瞬、ミソナさんが動揺しているように見えたけど……


「為替って結局、ギャンブルみたいなものでしょ?あーいうのが人生失敗するのよ」


「まあ、1SPにつき、100円に替えられるから♡で、1日1回、ケータイを起動するだけで1000SP貰えるから♡」


 なんか……ゲームのログインボーナスみたいだな。って、そんなことを考えている場合ではない。元山さんがさっきからおかしい。


「1SPにつき、100円……1000SP毎日貰える……たった1日で、10万だと!」


 10万。そんな大金を……

 私には、あまりにも大きすぎる額だった。


「そーいうこと♡ポイントは、ケータイに入るから支払いもケータイでね♡それと、他のメンバーにSPを渡すことは出来ないから♡上限もありませーん♡」


「このデスゲーム、参加して正解だったかもしれないな」

 

 元山さんが突然、物騒なことを言い出す。もしかして元山さん、変なことを考えてるんじゃ……


「元山さん、そんなこと言っちゃダメですよ!これも、殺戮ちゃんの罠ですって!」


 私は元山さんに思いっきり怒鳴りつけた。

 こんなの、間違ってるよ!


「罠でもこんな美味しい話はないよ!」


 だけど、元山さんは聞く耳を持たなかった。お金のことで頭がいっぱいなのだろうか。

 私はどうすれば……


「ハニートラップってやつね」


「その通りだぜ。誰も殺す気は無かったが、殺すのも悪くねーな」


 橋田さんまでもが、おかしなことを言い出す。橋田さんもそういう人間だってことは予想はついていたけど……


「橋田さんまで!殺しはダメですってばっ!」


 これが、殺戮ちゃんの罠。人はこんなにも簡単に心が揺らいでしまうんだなと思ってしまった。


 まずい、このままじゃ……


「まあ、殺戮を行うにしても、あんま言わない方がいいよ♡警戒されるからね♡」


「そうは……させない……」


 その時、奥の席から一人の女性の声が聞こえた。声のした方を振り向くと、そこにいたのは――


「ん〜?♡」


「私が犠牲者なんて1人も出させない……」


 川山さんだった。彼女ならこの空気を、そして、この人たちをなんとかしてくれるのかもしれない。

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