第1章 〜キミヲマモリボクハシヌ〜 ➖探索編1➖③
「先手必勝!じゃあ、俺らからだー!」
先に言い出したのは畑山さんだった。
天井を見上げ、叫び出す。
「俺と大黒先生は、殺戮公園ってところに行ってきたぜ」
「ですね〜」
畑山さんと大黒さんは一緒に行動していたのか。
何があったんだろう?
「えーやだー、殺戮公園って物騒で花こわーい」
「…」
花ちゃんが自分を可愛く見せようとしているのか、両手で頬杖をついて言った。
「なんと、あそこは1周2.6キロもあって走りがいがありそうだったぜ!」
「ですね〜」
2.6キロって大きいな。
今度行ってみようかな。
「近いうちに誰か一緒に走ろうぜっ!」
「ですね〜」
畑山さんは嬉しそうに他の人を誘う。
みんなはそれを真顔で見つめる。
「お、大黒先生!走りますか!一緒に中年太りを解決しましょう!」
なぜか大黒さんが誘われた。
畑山さんは太ってるようには見えないけど。
「嫌ですね〜、適当に返事してたのが仇となりましたね〜」
「他にはいないか?一緒に走ってくれる奴は!大黒先生と俺だけじゃ、寂しいだろ…」
かと思いきや、急に肩を落とし始めた。
まあ、別にこんなところでじっとしてても身体が鈍るだけだし、走ってもいいかな。
「まだ、走るなんて言ってませんね〜…」
「景色もこんなところだが、最高だったぜ!満点の青空でよ!」
満点の青空?
あれ?
おかしい。
「畑山さん、満点の青空ってどういうことですか?」
「え?なんのことだ?」
「そういえば、うちのところもそうだった」
海ちゃんも同感する。
まだ、私は外に出ていないからわからないけど。
「え?え?」
畑山さんは理解が追いついていないようだ。
ここは私が。
「ここ宇宙ですから、空は星空しか見えないはずで…」
「キュートな殺戮ガール殺戮ちゃん参上!♡」
と思ったら、キラキラの光とともに、殺戮ちゃんが机の上に乗っていた。
甲高い声が部屋に響く。
「デ、デターーー!」
「なによ?♡美少女を化け物みたいに言わないでくれる?♡こらー、そこスカートの中見なーい♡」
どこからともなく現れた殺戮ちゃんは、私を指差してそう言った。
いや、机に乗っていわれても、この角度なら見えちゃうし…
あと、黒なんだ。
「さっきの疑問にお答えしよう♡ずばり、それはこの殺戮ちゃんの魔法のおかげでした〜♡」
殺戮ちゃんはウインクをして頬に指を当てながら言った。
また魔法か。
「は?」
それに対して、海ちゃんは真顔で苛立っていた。
この子もこの子で、いつも不機嫌だな。
「いや、だから青空にしたのは私のおかげだって言ってんの♡ほら、星空ばっかり見てても飽きるでしょ♡やーん、殺戮ちゃんってば、やっさしぃー♡」
たしかに青空ばかり見てても飽きる。
でも、宇宙なのに青空っていうの気持ちが悪いな。
「そう言われれば、確かにおかしい…なんで青空なんだー!」
え?
そこからですか?
心の中でツッコミを入れる。
「なんか畑山先生、ワンテンポ遅れてますよ?」
「まあ、それだけ♡それじゃあ♡」
「おい、待て!」
元山さんの声も届かず、キラキラの光りとともに、いなくなってしまった。
これだけを言いにわざわざ来たのか。
「殺戮ちゃんってほんと謎だよね?」
「あんなやつ、ほっとけばいいよ」
隅の方で彩里ちゃんと川山さんが殺戮ちゃんの愚痴を言う。
謎ではあるかな。
「なんで!?なんで、青空なんだー!?」
畑山さんは頭を抱えていた。
話を聞いていなかったのかな。
「こっちは、ある意味ほっとけない」
「え、まさか川山先生、畑山先生のことが…」
「そうじゃなくて、ほっといたらうるさいでしょ」
たしかに、意見交換の間、畑山さんがずっと騒いでたら耳障りではあるかな。
「確かにそうかもー」
「ここは、私が説明しておきますので続きを」
川山先生は、畑山先生のところに行って説明しにいった。
この人、本当に学校の先生なのかな。