第1章 〜キミヲマモリボクハシヌ〜 ➖探索編1➖①
第1章 〜キミヲマモリボクハシヌ〜 ➖探索編1➖
―1日目―
暗い…
とても暗い…
世界が沈んでいくように、私も沈んでいく…
光なんて見えない…
私は暗い中を歩き、彷徨い続ける…
あれ?
私は何してるの…
目をつむったまま、私は考える。
確か私は、何者かに誘拐されて、気がついたら私を含めた11人もの人が部屋に集められてて――
そうだ!
修学旅行!
それもただの修学旅行じゃない…
誰かを殺さないとずっと帰れない修学旅行誰かを殺さないとずっと帰れない修学旅行…
ゲームマスターである殺戮ちゃんによって仕組まれた命がけの修学旅行に参加させてられていたんだ。
そのあとのことはあまり覚えていない…
あれ?
人影が見える。
しばらく歩いていると人影が見えた…
「誰?そこに立っている人は誰なの?」
「先生だよー。先生。君がよく通ってた接骨院の医院長の松田先生だよー?」
大柄の男性はそう答えた。
「通ってた?私が?」
「そうだよー。先生のこと忘れちゃった?」
大柄の男性は笑顔で問いかける。
なんだろう…
ちょっと怖い…
「忘れたというより、私はあなたのことを知りません」
「やだなー。そんなこと言ったら先生悲しんじゃうよー」
男性は肩を落としてしまった。
この人のこと、本当に知らないのに…
「それより、なんで来てくれなくなったの?」
「え?」
「ねぇ、ナンデ?」
男性の顔に笑顔がなくなる。
男性はこちらに向かって歩き出した。
「なんでって言われましても…」
「ナンデ?ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ!?」
その大柄の男性は、目は黒く染まり、顔が血まみれになりだんだん近づいて来てくる。
動こうとしたが、身動きが取れなかった。
「いや、来ないで…来ないで下さい!!」
「ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナデ!?」
ついには、目の前にまで来た。
殺される…私はこの人に殺される…!!
「いや…いやーーーー!!」
ピンポーン!
ピンポーン!
ピンポーン!
「うわっ!」
なんだ、夢か…
怖い夢を見たな…
インターフォンに助けられた気がする…
「は、はーい!今出まーす!」
インターフォンのような音が聴こえて、訳も分からないまま、慌ててベッドから身を起こしてドアへと向かった。
って何これ?
どうやってあけるの?
この赤いセンサーって赤外線だよね?
だとすると、今持ってるので使えそうなのは――
まさかね〜。
ポケットにあったケータイをセンサーにかざした。
ピッと音がなり、扉が開いた。
「あ、開いた!」
「空いたって君の将来のパートナーが席がかい?」
聞き覚えのある声。
声を聞いただけで誰なのかわかった。
「え?」
顔を上げると、ドアの向こうに立っていたのは、元山さんだった。
「ごめんごめん、今のは冗談だよ。気にしないで」
「はい…」
この人、見た目は若くてかっこ良さそうに見えるけど、なんとなくだけど40代くらいの人だよね。
「それにしても、この扉の開け方少し変わってるよね」
「まあ確かにそうですね。だから、勘でケータイをかざしてみてみたら合ってたって感じですかね」
ちょっと自信ありげに言った。
まあ、ゲームの経験上そうかなって思ったからね。
「へー、結衣ちゃんって頭がいいんだね。でも机の上に紙とか置いてなかった?」
初対面で結衣ちゃんって…
まあ、いいか。
「紙?」
私は振り返って机の上を確認した。
(扉はケータイをかざすと開くよ♡愛しの殺戮ちゃんより♡)
そこには、1枚の紙が置いてあった。
ほんとだ!
っていうか、何が愛しのだよ。
「とりあえず、あとで食堂に来てくれる?」
「え?なんでですか?」
食堂?
というより、ここは食堂なんてあるんだ。
「実は、他のみんなはあれから探索してて、結衣ちゃん、疲れてずっと部屋で寝ちゃってたみたいだから呼びに来たんだよ。それでしばらくしたら食堂で探索結果の意見交換をすることになっててね」
なんか、私だけ寝ていたなんて申し訳ないな。
でも、意見交換ぐらいは出ておかないとな。
「そうだったんですか!?それに、探索って?」
「このロケット、外が解放されたんだ」
外!?
外に出られるってことは、助けが来るし、ここを出られるってこと!?
「じゃあ、私たちは帰ってきたんですか!」
「いやいや、むしろその逆だよ。今俺たちはどこかの惑星にいる」
元山さんは真剣な眼差しで言った。
宇宙の次は惑星って…
そういえば殺戮ちゃんがこんなこと言ってたような…
「ここのスローテッドロケットは、宇宙に向かって飛び立ちます♡」
帰れると思ったのに…
「まあ、そんなに気を落とさないで、諦めなければきっとみんなで帰れるからさ」
元山さんは笑顔になって言った。
「それもそうですね。皆さんで頑張りましょう!」
大丈夫。
元山さんの言う通り、諦めなければきっとみんなで帰れる。
今は、それを信じよう!
「じゃあ、俺は先に行ってるね」
元山さんは後ろを向こうとして部屋を出て行こうとする。
「あ、待ってください」
そんな元山さんを私は呼び止めた。
言わなくちゃ…!
「ん?」
「わざわざありがとうございます」
「いいよ、仲間だろ」
仲間か。
ここで生活していく以上、他の10人が仲間ってことか。
「そうですね」
元山さん――
いい人そうではあるけど、逆にそれが怖いっていうか…