〜プロローグ〜 ハジメテノデスカイ⑩
今、なんて言ったの?
殺す?
私たちに殺し合えって言いたいの?
「殺す?俺たちが?」
元山さんが不思議そうに殺戮ちゃんに聞く。
「撲殺したい?♡どうぞどうぞ♡絞殺したい?♡どうぞどうぞ♡刺殺したい?♡どうぞどうぞ♡」
どうしてこの子は死ぬだの殺すだの簡単に言えるの?
やっぱりよくないよ。
「殺戮っていうが、まず第一に素人の俺たちが出来ると思ってるのか?」
橋田さんは妙なことを殺戮ちゃんに聞いた。
この人もこの人でどうしてさっきから冷静なんだろう。
「そうね♡その為とは言わないけど殺戮マニュアルをケータイにも入れておいたから殺したい時は見ておくと参考になるよ♡」
そろそろ私も頭にきた。
この子は大人を舐めてる。
私が言ってあげないと!
「そんなの、誰も見ない!貴方の口車になんかのそせられない!」
「…」
私の言葉に全員が目をそらす。
なんで…
なんでなの…
「みんな…」
このままじゃ本当に殺し合いが起きちゃう。
どうすれば…
「でもでも、殺戮を行うにしてもそれなりのリスクは背負ってもらわないと♡」
リスク?
私がふと頭の中に浮かんだのはさっきの束縛のことだった。
「リスク…リスクッテナンノコトデスカー?リスクッテ、オ金トカデスカー?」
「それは、今ケータイに表示されている束・縛・ってところを見たとおり、殺したことがほかの生徒にばれたら殺戮されるってことだね♡」
「つまり、殺される…」
殺戮っていうのは殺すという意味だろう。
この子は本気だ。
私はそれを理解した。
「そういってんじゃーん♡」
「おい、お前は誰が殺したか分かるのか?」
橋田さんが興味本位か殺戮ちゃんに聞いた。
ゲームなんて言い方は良くないけど、ゲームでいうところのこの子はゲームマスター。
ゲームのジャッジは全てこの子自身が決めるはず。
「その通り♡ここの部屋にも監視カメラがついてるでしょ?♡それで、さっきの出口が閉まってるって会話も聞いてたのよ♡」
だから私たちの会話もわかっていたのか。
監視なんかされてたら変な真似できないな。
「で、でも、人を殺すなんて良くないよ…」
「全くですね〜」
花ちゃんや大黒さんの言う通りだ。
殺人なんて犯罪。
そんなことは誰だって分かること。
「そんなメンタルがいつまでもつかな♡詳しくは、実際に殺戮が起きた時に説明しまーす♡」
「そんなこともしないし、私達は絶対に帰る!そうだ!警察、警察が助けに来てくれる…!」
確信はない。
警察が来れば、こんなわけのわからないことはすぐに終わる。
だけど、私の声は震えていた。
「このロケット、スローテッドロケットって言うんだけど、特殊な素材で出来てるから壊すことも出来ないし、出口を開けることも私しかできませーん♡つまり、助けも来ないってこと♡」
「そんな…」
ロケット?
私たちが今いるところはロケットの中ってこと?
これも本当なんだろう。
外に出ることもできなければ、助けに来ることもない。
かすかに抱いていた希望が一瞬にして打ち砕かれた。